第1話 まさかのおぱんt
あー。
今日も何もする気が起きない。
昨日も、その前の日も。なーんにもやりたくなかった。
今だってそうだ。
「はい!イジョーで、キョーのジュギョーおわり!」
無気力人間をビシッと牽制するような声に背筋を正される。
口癖は「ニッポンダイスキ!」
英語教師で、クラス担任でもあるスギヤマ=リック=ダイチだ。
年齢の割に老けすぎているスギヤマ先生は、俺以外の生徒からは大人気。
言葉の意味を気にしない女子からは「かわいい」と言われているところを見たことがある。
その見た目と名前のリックにちなんで、生徒たちからは「メタボ」と呼ばれている。
持っただけの鉛筆と開かれただけの真っ白いノートが、俺という人間を模写する50分が過ぎ去った。
「昼休憩ネー、お弁当タベテー!
タベタラ机に先週の課題オイトイテー!
ンデモッテ今週の課題モッテッテー!」
課題ね。
高校に入ってから1度もやったことないな。
中学の時もないな。
最後にやったのいつだったっけな。
課題って、出したら受け取った前提で話してくるのなんでなのかな。
とりあえず腹減ったからなにか口にしたい。
水道水でいっか。
教室の廊下側で一番後ろの席。掃除ロッカーに最も近く、教卓から最も遠い席を発って廊下へ向かう。
昼休憩とあって、誰かとご飯を食べるやつ。
誰かと喋るやつ。歩くやつ。色々目につく。
なんかやるやつの一員になって、男子トイレ横の蛇口に到達。捻る。
最初の5秒間に出る水は捨てた方がいいって、水捨てるやつが言ってた気がする。一員になる。
1秒、、、2秒、、、3、、
「ちょっと後藤くんっ!」
流れ出る水を見つめてるやつに、女が話しかけてきた。
「今日も課題出さないの?
そろそろ単位あぶないはずだから、出した方がいいと思うよ!」
4、、、5秒。
蛇口を上に向けて、弧を描く水に口をつける。
こいつも課題と同じだな。話題ってやつだ。
出したら受け取った前提。
水美味いな。
「・・・はぁ。なんかごめん。もういいや」
勝手に受け取ったと思い込むからそうなるんだろ。
その癖、俺のせいみたいな態度はなんなんだよ。
「とりあえず今週の課題渡しとくね」
そう言うと突然、ズボンのベルトをグイと持ち上げられた。
食い込む。痛い痛い痛い痛い。
どうやら背中と尻とベルトの交差点に課題の用紙を差し込むつもりらしい。
痛い痛い痛い痛い痛い!
「ここに入れとくから!来週はちゃんと、、、
ちゃんと・・・やって・・え?」
でっかい毛玉でもあったのだろうか、困惑の声を漏らす。
痛みへの憤りと、困惑の音色に水道を背にして相対する。
そこには、教室で物や意見を集めたり配ったりしている、クラス委員とか呼ばれてる女。
黒縁メガネで背の小さいツインテールと目があった。
「な、あっ、えっっっ、と。。。
なんで、、そのー。。パンティ履いてるの?」