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【八】英語は苦手です

それから、他愛のない話をしているとHR前の予鈴のチャイムがなって慌てて各自の教室に入った。





担任の回りくどいHRをまだまだかとみんなが時間を過ぎるのを時計を眺めて待っていた。



今日の1時限目は英語か。

日本人なのだから英語なんて必要ないんじゃないかと在り来りなことを思う。


私は英語が苦手だ。何より急に当てられてみんなの前で読まされる英文が地獄で仕方がない。

考えるだけで胃がキリキリする…



そんなことを思っていたら長いHRがいつの間にか終わっていた。



あれから苦に思っていた英語が始まり、やっぱり英語は嫌いだ。はぁ早く終わって欲しい。

それに先生の少し癖のある英語は余計に難しく感じる。



窓から外のグラウンドを見ていると、そこには友達と楽しそうにサッカーをする彼方の姿が見えた。




1時間目から体育なんて元気ね。

私にはあんなに輝かしく体育なんて無理よ。



よく見ると彼方の周りには大勢の女の子達が黄色い歓声を上げながら飛び跳ねていた。


そう言えばさっきもだったけれど彼方の周りには女の子たちが沢山いた。

やっぱらモテ王子だったのね私の感は大当たり。


なんで今まで彼方の事を気づかなかったんだろう。

こんなにキャーキャー黄色い歓声が聞こえたら分かりそうなものなのに。



それに彼方は学校ではニコニコ笑顔でなんだか昨日とは別人みたい。んーなんていうのか簡単に言えば腹黒そうには見えない。優しいのは優しいけど私には口調も荒いしツンケンしたイメージがあったけど学校では本当によく笑う王子様って感じね。



なんて考えていたら女子力の高い一軍と言われる女の子達が彼方のために用意したタオルを持って近づいていった。けれど彼方は何も言葉を発さずただ首を横に振ってまた友達の方へと向かっていった。



あんな彼方初めて見た。

女の子に対して恥ずかしいのか、はたまた腹黒いからなのか素っ気ない態度だった。




板書をしようと黒板に目を向ける。

あれ目の前に居るのは英語の教師の山本先生ではないか。

やってしまった。




「お前は俺の授業を聞かずに?なにを外の奴らを見てるんだ。

居残りしたいのか?え?」





だんだんと顔が近づいてくる。

こ狐の子に会いに行こうと思っていたのに居残りさせられては厄介だ。何か話しをそらせないだろうか。


そういえば。


私はさっきから気になっていた事を先生に伝えた。



「先生?なにか不審者らしき人が校門に立っていて気になったのですが。」




ほらと指を指す先には、グラウンドの奥にある校門からカメラを構えた人が門から覗いていた。



「お!なんだ!不審者なのか!」


「これは緊急事態だ!」


と窓の外を見るなり一目散へと職員室へと走っていった。




上手く誤魔化せたけれど、本当に不審者なのだろうか。

もし不審者だとすれば今グラウンドにいる彼方が心配だ。


私と先生の話を聞いていた生徒は次々と騒ぎ立てて面白がって窓から覗いている。

生徒の視線を感じてか、不審者らしき人は逃げていった。



ここ最近で女子高生を襲う事件が起こっているから少し怖いと言うのが本音。




まぁ、けれど大丈夫でしょう。

なんて、呑気に机に突っ伏して先生の帰ってくるまでの少しの時間目を瞑っていた。




それからどれぐらいの時間が経っただろう、周りが賑やかだった。

1時限目の授業が終わり黒板には2時限目から各自習と大きく書いてあった。



なるほどそれで騒がしかったのか。

だれも自習している生徒など居なく先程の不審者で話は持ちっきりだ。



それから三、四限目と普通に授業は行われ、現在は昼休み。今までは彼氏とお昼は一緒に食べていたし、生きてるものと亡くなっているものの区別もつかなくて周りから怪しまれたくない一心で友人を作っては来なかった。そんな自分が嫌になるなんて思いながらひとり寂しくお弁当を机に広げた。



まだ周りはいつもよりも賑やかだった。


「さっき覗いてた人ここ最近先生達が言ってた不審者と特徴一緒らしいよ!」


「あの人なんか刃物みたいなのもってなかった?」


「えぇ!こわーい!」


なんて隣から聞こえてくる。

刃物なんてもってたか?私にはカメラだと思ったけど。




にしてもいつもよりいっそう騒がしい気がする。

すると肩をとんとんと叩かれ顔をあげるとそこには同じクラスの橘さんが立っていた。


「彼方くんが呼んでます」と教室のドアへと顔を向けた彼女と同じ方を見ると




そこには本当に彼方か?と疑いたくなるような笑顔でこちらにひらりと手を振っていた。




いつもの違う教室の雰囲気は彼のせいでもあったのか。




私は彼方の元へと向かおうとしたが、お弁当を食べるのに皆が各自机を引っ付けた通り道は迷路のようになっていて教室を出るだけなのになかなか苦戦した。




「どうしたの?」


やっと着き彼方に聞くと、




「これ外の中庭で一緒に食べないか?」




と手に持っていた茶色の洋風なバスケットを私の目の高さへと上げてそう言った。



風の抜ける廊下だったので風に乗ってバスケットからとてもいい匂いがした。

私は匂いにつられて自分のお弁当も持ち彼方の後ろをついていった。




一緒に中庭に行くとそこに全くと言っていいほど人が居なく、シーンとした空間に聞こえるのは校舎からザワザワとした喋り声が微かに聞こえるだけだった。



「こここんなに静かでいい場所だったんだ。」



「あぁ、中庭にしては日当たりが良すぎて日焼けするから女の子も近ずかないし、男もこんな花の咲いてる中庭でお昼なんて取らないだろ。」



そう言いふっと鼻でかすかに笑っていた。



「確かに日当たりがいいね。それに今日はいつもより天気もいいし風が気持ちいいね。」




いつも教室の端で彼氏と食べていたのでこんな場所があるなんて知らなかった。






「ここは俺の唯一の静かにくつろげる空間だ」

と話してくれた。





人気者は大変ね…そう改めて感じた瞬間だった。



「ねぇそれにしても何さっきの笑顔」



「ん?なにが」



「昨日の私への腹黒そうな態度と違うなと思って」



ちょっと意地悪な言い方をするとムッとした顔をしながらこちらを見ている。

言いすぎたか?




「別に腹黒い態度とってる訳じゃない。

それになんでも笑顔で話してた方が後々めんどくさい事にならなくて気が楽なんだ」




「へぇ~なんだか意外。

無口な方が気が楽だって言いそうなのに」




「昔は見えざるものが見えた時に変人だと周りから気味悪がられた。そんな態度を取られるくらいならと人と関わることを辞めてなんでも無口で貫いてきた。でも上手くはいかなくて反感をかい知らない間にある事ないこと勝手に噂されて苦労したから。

誰かに敵視される位なら笑顔で誰からも標的にされない方が楽だと思った」



そうだったんだ。

私も見えるが故に彼方の苦労がわかる。

何をしていても見えない人からすれば変人で気味悪れるのが日常茶飯事だった。

あの狐の子を抱きかかえていた時もそうだった。

人と関わらなかったから忘れていたあの感覚何度味わっても慣れない。

それなのに、




「すごいね彼方は。

そんなの事があったのに心を閉ざさずに周りのせいにする訳でもなく自分を嫌う訳でもない。自分自身を変えようって思えたなんて」




「私には無理だった。その挙句今はひとりぼっち。

私も彼方みたいに前向きに自分と向き合うべきだったな。」



今の生き方に後悔はしていない。

でもこれから長い人生このままでは苦労をして後悔をしていくだろう。



「今からだって遅くない。でも無理に自分を偽る必要もない。変わらないといけない時は変わろうとしなくても勝手に変わっていく。今は舞梨ちゃんは舞梨ちゃんらしくしとけばいい。」



なんだろう彼の言葉に凄く安心する自分がいた。

心が暖かくなるようなそんな言葉。今まで変わろうと無理にもがいてきたけど変われなかった人生を後悔していたけど無駄ではなかったのかと後悔しなくていいんだまだ変わる時じゃなかったんだなって思えた。



「なんだかこれからの人生彼方の言葉で生きやすくなった。過去の自分も救われた。ありがとう」




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