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【あやかし事件は喫茶店にて】~私たち前世の鬼録と呪い~  作者: 綺月蒼
彼と出会う少し前のお話
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【三】小さな物音と命

おばあさんのおかげで少し気持ちが楽になった。

人の温かさはとても癒される


でもその人の温かさに触れるとどうしても優しくて

大好きだった彼のことを思い出す。


もう…私の元には、帰って来てくれない、

また前みたいに他愛のない日々を過ごせない。

大袈裟だと思われるかもしれないが私にとっては人生で初めてお付き合いをして3年を共にした。


長い間築き上げてきた当たり前の彼との日常が一瞬にして崩れ落ちた。


どうして?なんで?そんなはてなばかりが頭をぐるぐる回る。

本当にいきなりすぎる、昨日も放課後一緒にいろんなお店を回ったり沢山写真も撮ったのに…どうして?

そんな疑問が悶々と頭の中を駆け巡る。


今までの思い出を振り返ると段々と()()()実感が湧いきて涙が出てきた。



誰かに見られては恥ずかしい。

段々と足取りは早くなっていった。



少し走った先には川沿いの土手への下に続く階段があり、その川の脇に砂利道がある。

階段があるのはここと川を挟んだ向かい側だけ。

日頃からこの川沿いは人があまり近づくことはなく、

いつの間にか私の憩いの場になっていた。



砂利道の橋には秋桜が咲いてその景色を独り占め出来るなんて贅沢なんだろう。

小さな階段を1歩1歩降りる。



上には橋がかかっているので雨宿りにも最適だった。



橋の下で体を小さくしゃがみ込んだ

誰もいない静かな空間。余計に涙が溢れて止まらない。



私ってこんなに泣き虫だったかな。

子供のように人目を気にせず泣きじゃくる私の頬に涙が何本もつたう。それを制服の袖で拭った


あぁ、寒い。


体育座りしている自分の膝を抱えて顔を伏せた。

何かを考えるわけでなくただただ下を向いたままそこにいた。

時雨の音だけがこだまする橋の下に、微かな音だったがダンボールに何度も何かがぶつかったり擦れたりする音がした。



私は顔を上げ音のする向かいの橋の下に目を

向けた。すると小さなダンボールが。



いや、流石に中になにかいるわけじゃない雨風でそんな音に聞こえるだけで空っぽだろうと思っていたが、半開きのダンボールから少し覗くように動物の耳のようなものが見えた。




「ま、まさか…」




嫌な考えが頭をよぎる。

こんなご時世に動物を段ボールに入れて置き去りなんてこと本当にあるのか?はたまたそう見えただけなのか。



でも仮に私がここに来る前からこの寒さの中ずっとここに居たとしたら…

あの子の命が危ないかもしれない…!




私は急いでダンボールの元へと向かおうと思ったが、

この川はデカい。どんなに走って早く向こうの橋に行けたとしても15分は必ずかかる。




向かい側に行くには、だいぶ川沿いを進まないと橋は無い。

私の真上にも橋がかかってある木製の立派なものだが、だいぶ古くからこの橋にかかっていて今は安全を配慮した上で使用は禁止された。



今は使うことは出来ず昔の面影だけがのこっている。

使用が禁止されてからは手入れもされなくなり、

いつ壊れてもおかしくない。使用禁止から少しした頃この橋で怪我人が出たことから町で議論になり結果立ち入り禁止の柵がしてある。なので結果土手を1周しなければならない。



だが最短でも15分かかる橋を正規ルートで渡っている時間は無い。

それなら少し危ないが川を渡る方が圧倒的に早い。



迷ってる時間はない。

そう思い右足を川に入れようとした瞬間

雨風で日頃より水位も上がり流れも早くなっており一瞬で足をすくわれた。




やばい。





『あぶないっ!!!!!』









誰かの叫び声が後ろから聞こえてきた。











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