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【二十一】雪

あっという間に授業も終わり帰りのHRが行われている。窓の隙間から入ってくる風が冷たくて何気なく外をボーッと眺めている。


この間まで暖色の紅葉で埋め尽くされていた山も、いつの間にか葉が落ち今では寂しげに感じる白と灰色が広がる山に変わっていた。



季節が変わるのはあっという間で少し肌寒かった教室は、いつの間にか暖房がつきあたたかい温度で包まれている。




はぁ。この教室から出ないといけないと思うと体がぶるっと身震いをおこしてしまう。だめだ考えただけでもう寒い考えないでおこう。







帰りが近づくにつれて生徒達がガヤガヤとしだす教室。突然パンパンッと手を叩く音が鳴り響き窓の外へ逸らしていた視線を教卓へと戻すとそっぽを向いていた周りの生徒達も一斉に教卓に視線が向いていた。



「お前達!静かに!」



怒ったような困ったような顔をする担任の先生。




「実はだな、時期外れではあるが明後日うちの学校に転校生がやって来ることになった。」





その言葉を聞いた生徒たちは一気に盛り上がる。

教室中あちこちから、



「男の子ですかー!女の子ですかー!」


「キャー!転校生だって!イケメンだったらいいなぁ。」


「それな。でも一周まわって美少女でもあり!」


「可愛い女の子こーい!」


なんて、そんな欲望だらけの言葉が教室中あちこちから聞こえてくる。




転校生。この時期に転校だなんて確かに時期外れではあるけれどでも家庭の事情とか色々あるのねきっと。

まぁ友達のいない私には関係の無い話で段々と虚しくなって教卓に向けていた視線をまた窓に戻す。

転校生とも話すことも無く、あっという間に2年生が終わっていくのは目に見えてわかる。




あぁ。友達欲しかったな。





「はいはい。お前達静かに。」


「教頭先生から何もまだお前たちに言うなと言われているから男か女かも言えないがどちらの性別でも仲良くしてやるんだぞ」




キーンコーンカーンコーン…




「じゃあHR終了だ。気をつけて帰れよ〜。」




ファイルを持った手をヒラヒラと振りいいタイミングでなったチャイムと同時に教室から出ていくのが視界の端に移る。

いつも面倒くさそうな顔をしていてあまり生徒にも関心のなさそうな先生だなと、思っていたが案外人の心がありそう。






「何考えてんの?」




窓の外へ向けていた視線を声をかけてきた人物に向き直す。




「やっぱり綺麗な顔してるわね」




そこには私の前の席の椅子に座って足を組みながら私の机に頬ずえをしている彼方の姿があった。




「ほんとそればっか。何回も言ってるけど知ってるよ」





「あ、また認め…うっ……」




最後まで言い切らない間にじっと見つめていた彼方は頬ずえをしている手とは逆の手で私の顔をむにゅっと掴んできた。



「なによ……」




喋りにくい口をとんがらせて言う。




「ふふ。面白い顔」



「失礼ね彼方。同じ顔にしてやるわよ」



そう言いほっぺたを掴まれている手を左手で引き剥がそうとするその手を彼方は悲しそうに見つめて口を開いた。



「ねえ?」



「ん?なに彼方」



「早く帰ろうか。父さん近くで車止めて待ってくれてるから」



「ん。わかった。」





そう今日は彼方と放課後、彼方のお父さんに車を出してもらってとある方にこの左手の事を聞きに行く日だ。

私は急いでカバンに荷物を詰めて彼方と一緒に教室を後にした。






それから彼方のお父さんと合流し、今現在車を走らせて1時間が経とうとしていた---





「わ〜!雪綺麗!」




車から見える景色は山を登るにつれて段々と道が真っ白な雪で埋め尽くされていた。




「雪綺麗だよね〜。あんまりこっちじゃ雪も降らないしそうそう見ることできないね!」



「確かに雪こっちじゃ降らないからすごく新鮮で楽しいです!」




「そっかそっか〜!それは良かったよ」




彼方のお父さんはとても話しやすい、気さくな方で、本当に彼方と親子なのが不思議なくらい話し方が正反対な2人。

確かに心配性なところはそっくりで、

私が怪我をしたとなると慌てふためいてアワアワとしながら、これでもかという程頑丈に手当をしてくれる2人を見ると面白くていつも笑ってしまう。




「舞梨ちゃん車酔い大丈夫?」





助手席に座っていた彼方がひょこっと顔を出している。




「うん!大丈夫!」




「あまり外見すぎるなよ。酔うからな。」




「大丈夫よ。私そんなに弱くないわ」




「何言ってんだ。いつも電車の外ずっと見て、酔って気持ち悪いって言ってんのはどこの誰なんだ」




「はい。程々にします。」




やっぱり彼方は心配性でなんだか口うるさいお父さんみたい。



そう思っていると私たちの会話を聞いていた彼方のお父さんは、ハハッと声を出して笑ってた。不思議に思い後部座席から覗き込むとすごく笑顔でニコニコしているお父さんがいた。




「何笑ってんの父さん」




彼方も不思議に思ったようで私と顔を見合わせている。





「なんだか熟年夫婦みたいな会話だなと思ってね」




そう言いながら微笑ましそうに笑うお父さん。




「熟年夫婦ですか!?」




思わず聞き返してしまった。




「彼方こう見えて凄い心配性なのは舞梨ちゃんも知ってるだろうけどね、こんなに誰かの心配をしているのを見るのは初めてでね。彼方ってば人見知りだろ?それに気難しいしね!」




「はい、確かに彼方気難しいです!」




「おいそれ完全に悪口じゃないか?」




「僕はねそれだけ彼方が舞梨ちゃんには心許して大切にしてるんだなと思うと微笑ましくてね。2人がお互いのことをよく理解した上で話しているのがなんだか熟年夫婦の会話に聞こえたんだよ。本当に仲良いね2人とも」




「確かに私、人付き合いが苦手で本音を誰かに伝えるのも難しくて。でも彼方とはなんだか話しにくいなとも変に気を使ったりすることも無くて1番素の自分で居られてる気がします。」




「だって彼方。よかったね。」




「うるっさい。」




いつものように手で口を隠し窓の外を向いてしまった彼方。なにか怒らせちゃったかな。



私も窓に目線をやるとそこには真っ白な雪に反射した窓に写った顔が真っ赤になった彼方がいた。



今日雪が降っててよかった。真っ白な雪が積もっていなかったらこの彼方の表情が見られなかったんだもの。





雪様々ね。





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