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【あやかし事件は喫茶店にて】~私たち前世の鬼録と呪い~  作者: 綺月蒼
彼と出会う少し前のお話
2/27

【一】肌寒い風と雨


読み方〉明日見舞梨(アスミマリ)柚江高校(ゆえ)



私、明日見 舞梨。 柚江高校2年生。

中学から付き合っていた初恋の彼に振られた。



あれからどれくらいの時間が経っただろうか。

ショックのあまり思考が停止して突っ立っている私は

傍から見れば教室で黒板を眺めて立ち尽くしている変人だと思われているだろう。


そんな私の脳内では何度も繰り返される「別れよう」の一言。

彼からのその一言で私は何も言えずただここに立ちすくんでいる。


ダメだ。考えててもらちがあかない。

そろそろ帰ろう…。先程、ショックのあまり手から落とした通学バッグを拾い上げた。


そのバッグには高校の合格発表の日、デートでゲームセンターで彼がとってくれたお揃いのクマのストラップがついている。

もう2年もつけていたクマは色が落ち淡い水色になっていた。今の私の気持ちみたいな色だな。なんてくだらないことを考えている場合では無いな。帰ったら外さなきゃ。


教室から窓に視線をやると晴れていた空がグレーに変わり雨が降っていた。それにさすが9月下旬の校舎、寒さにブルっと身震いがする。


朝はあんなにカンカン照りだったのにな。


あ、そういえば傘ないや。

なんてついてないの…私。

私今日いいこと無さすぎないか?

何とは言わないが帰り道が怖くなってくる。


雨でいつもよりツルツルと滑る廊下を歩く。

階段をトントンと足音が校舎に響く。



湿気で少し湿った木の下駄箱を開け靴に履き替え、

1人眉間にシワを寄せて校庭をジーッと見つめている。



ザザ降りのなかどうやって帰るべきか。

雨をよけれる能力も一緒に相合傘をしてくれる彼も今となっては居ない。

止むのを待とうかなと呑気な事を思ったがより一層強くなるばかりで止む気配はない。


しょうがない!水も滴るいい女になってやる。


そう思った時、ふと思い出した


今朝慌てて家を出ようとしていた私に母が呼び止めてきた。それは雨の予報なんて無かったのに母は私に折り畳み傘を持たしてくれていた。



「私の感が雨が降るって言ってるの!文句言ってないで

持っていきなさい!遅れるわよ!」


と私に折り畳み傘を押し付けて追い出すように見送ってくれた母の姿を思い出す。


お母さん…あなたの感は見事に当たりました。

ありがとう…ありがとうと誰もいない下駄箱でひとり天を仰いだ。


淡い紫の小さな花がぐるっと沢山描かれた傘をさして門を出た。

いつもなら学校を出て右に曲がるはずの通学路に目をやるがなにせ振られたあとにザザぶりの雨帰る気にならない。

いつもなら全く通らない道からでも帰ろうかな。

自分の機嫌は自分で獲るべし!


朝笑顔で送り出してくれた母に暗い顔をして

家に帰るのも気が引ける、それに帰っても思い出して悲しくなる。


そう思ったからだ。






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