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【十四】痛みと恐怖

あれからあっという間に日が経ち3日が過ぎた。

まだ舞梨ちゃんの目が覚めない。





喫茶店は父さんに任せて毎日学校終わりに秋桜の花束を持ってお見舞いに行っていた。

いつも目を閉じたままの舞梨ちゃんに照れくさいけれど今日あった出来事をただひたすらポツポツと話す。






当然返事はないけど、会う度に眠っている舞梨ちゃんの顔色が心做しか良くなっていて表情も和らいできたと思う。






毎日持ってきている秋桜が花瓶いっぱいになって夕日が指している。








夕日に照らされた舞梨ちゃんの横顔が儚げに見える。









「早く目を覚まして俺に笑顔で彼方って呼んでいっぱい話しかけてよ。

俺にとって素で話せるの舞梨ちゃんしか居ないんだからさ」









目を覚ましてないあいだに痩せて白く細くなった腕を持ち上げて手を取る。手のひらは暖かいいつもの舞梨ちゃんの体温に少し冷たい指先を温めるようにして握る。







早く目を覚まして欲しい。

その一心でより手を強く握る。










「彼方痛いよ」









「え?」







「なに?聞こえなかった?痛いって言ってるの」






そう言いながら小さく掠れた声で笑う舞梨にあまりにも突然すぎてパイプ椅子から立ち上がり近寄る彼方。





「目さめたのか?

よかった。本当に良かった。」








俺の思い込みが見せてる幻覚なのかと不安になり

舞梨ちゃんの顔を包むようにして触れる。





あぁちゃんと暖かくてちゃんと目が覚めてる。






そんな彼方の行動についていけずびっくりして目をぱちぱちさせて戸惑う舞梨と目が合う。











ズキ……ズキズキッ












「ちょっと彼方。せっかく目覚めたのにまた私を眠らすつもりなの?」








安堵したことにより彼方の顔はいつもより伏し目がちで目がうるうるとしてThe色気の塊のような瞳をしている。





「ん?なに寝ぼけたこと言ってんだ。

寝言は寝て言え。」





そんなことを言いながらもまだ愛おしいと言いたげな瞳で見つめる彼方。








ズキッ…








「寝ぼけてないわよ。相変わらず無自覚ね」





なんていつまでたっても顔を離してくれないので顔をふいっと手を振り払うようにして窓の方を見る。





「いい加減慣れろよ俺の顔に」



そういいまたパイプ椅子に腰かけて口元を隠し肩を上げていたずらっ子のように笑う彼方に




「自分で言った!分かっててやってたの!」




「さあ?」



なんてまた誤魔化しながら言う。








「舞梨ちゃん」






「ん?」






「ごめん。」






「なんで彼方が謝るの?」







「俺が舞梨ちゃんをひとりで帰らせて沢山怖い思いさせた。こんな酷い怪我までさせてすぐに助けてやれなくて。あの時仕事なんて放棄して見送ればよかった。大事な女の子一人守れない情けない男でごめん。」






「なんで彼方が悪いわけじゃない。

あの日私が彼方に仕事に行くように説得したのも日直で日誌書いてて帰りが遅くなったのも私が彼方に連絡しとけばこんな事にはならなかったと思うの。だから彼方が悪いわけじゃない。ただタイミングが合わなかっただけだよ。だから責めないで」





「それに彼方私が電話してすぐに駆けつけてくれたでしょ」





「なんでそれを?」





「やっぱり。夢かと思ってたけど、薄れてた意識の中ずっと彼方が私の名前呼んでぎゅって抱きしめてくれてたでしょ。彼方が来てくれたんだって彼方の体温感じた時に本当に安心したの。もう大丈夫だって思ったら完全に意識なくなっちゃって。」





「そうか。舞梨ちゃんが少しでも俺で安心してくれてたなら良かった。もうこんな思い二度とさせないからこれからも俺に守らせてくれるか?」





「むしろこれからも守ってくれるの?」





「当たり前だ。俺に守られてくれ。」





「頼もしいね彼方」





「あたりまえだ二度と怖い思いさせない」





なんて柄になく素直な事を彼方が言うもんだからだんだん私まで照れてくる。










ズキッ……ズキ……




何この痛み。目を覚ましてから定期的に体の芯から例えようのない感じたことの無いズキズキと痛むこの感じ。目が覚めてから何度か動いたから痛いだけかもしれない。





気にしないでおこう。







少し空いた窓の隙間からカーテンに揺られて秋の匂いがする。





よく見ると窓際に花瓶いっぱいに秋桜がいけてある。





「あれ?綺麗な秋桜。もしかして彼方が?」





「あぁ俺から。綺麗だろ。

舞梨ちゃんに似てると思って持ってきた」





「すごく綺麗彼方には私がああ見えてるのね。

ありがとう。

それに彼方もしかして毎日持ってきてくれてたの?」





「あぁそうだけど。なんで分かった?」




「元々花束にしてあったのをバラしてさしてくれたのかなって。秋桜の色がちょっとずつ違う色で素敵だなと思ったの。私秋桜好きだから嬉しい。」




「そりゃよかった。初めて会ったあの川でも秋桜見て泣いてたから好きなのかなと思って。」






「え?」







「よし。ちょっと先生呼んでくるから待ってて」





彼方はなにか言いたそうにして少し微笑みたがら私の頭の上に手を置きポンポンと叩いたあと部屋を後にした。





ズキズキッ……ズキ






まだだ。痛い。だんだんと痛みが強くなってきてる。

鷲掴みされてるところが燃えるような痛み。





先生が来たらこの痛みのことを聞こう。









先生たちが来る間改めて彼方の言っていたことを思い出した。初めてあったあの川でも土手一面に秋桜が沢山咲いていたことを。

そんなことまで覚えてたなんで以外。

彼方ってば何においても興味無さそうな感じがあるのに。





それにしても本当に距離感のバグってるわ。

今まで何人の女の子を虜にしてきたのか罪深い男なんて馬鹿げたことを思いながら先生を来るのを待った。





それにしてもあれから私は一体何日の間眠ってたんだろうか。

足元に飾ってあるカレンダーに目をやる。

私が襲われた日はまだ9月だったと言うのにいつの間にか10月になっている。

そんなに長く寝ていたのだろうか。






目が覚めてから彼方がいてくれてたから少し気が紛れて話せていたがあの日襲われたことを思い出さない様にしていたけど1人になると思い出す。記憶が蘇った瞬間から全身の力が抜けるような感覚と身の毛がよだつような感覚に襲われる。思い出しただけでも体の震えが止まらない。














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