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【十三】謎のオトコ~前編~

「わぁ!!!」







私は後ろへ強く引っ張られた。それと同時に、

バチンッ!と手に持っていたスマホが地面に落ちた。



これじゃ連絡出来ない。




強く引っ張られた私は何者かに後ろから抱き抱えられ

口と鼻を抑えられた。






「んんっ!!!んー!!」









息が苦しくどんなに大きな声を出そうとしてもキツく塞がれた口は声を出すことが出来ない。







息もだんだん出来なくなり、限界の力を振り絞って全身で藻掻くが全く離れない。私より遙かに高い背に男性の体格勝てるわけない。






意識が朦朧とする中なにか証拠でも。何かあった時に少しでも優位になる証拠を。

そう思い最後の力を振り絞って男の腕に爪をたてて思いっきり引っ掻く。





すると男がバッと口を塞いでいた腕を離した瞬間、微かに甘い香水の匂いが鼻をかすった。どこかでこの匂い。




一気に弱まった相手の力に私の体が支えられなくなり

酸欠で体が思うように動かない私は地面に叩きつけられた。





痛い。身体中に鈍い痛みが走る。




倒れ込んだ私は男の顔を下から覗いたが朦朧として視界がぼやけて逆行と暗闇に深くまで被った黒いキャップに顎につけてるマスクで顔ははっきりとは見えなかったが何処か見覚えのあるようなそんな顔だ。









私に顔を見られた事と引っ掻かれた事に腹が立ったのが

上から「ギギギッ」と歯を食いしばる音が聞こえたと同時に男は私のお腹に蹴りを入れた。








「お仕置だ!お仕置だ!なぜ僕の言うことが聞けない!!」






怒りに身を任せて何度も何度も蹴られる。





ハァハァと肩で息をしている彼は我に返ったのか急に黙り込んだ。




「僕は君の騎士だ。

僕という者がいながら僕の敵の元へ行くなんて

ホントに昔から君は悪い子だ。

お仕置を僕にして欲しいのか?

邪魔をするものはこの手で消し去るよ」











そう怪しく微笑んだ男はしゃがみこんで私の腕を持ってこう言った。




「これは僕との契約の証だ」




そういい私の腕を持ち上げて




「ガリッ」





「いっ……!」



掘り投げられた左手首には思いっきり噛み付いた跡から血が流れていてその傷跡からは何故か赤黒い光のような物が噛み跡から一瞬覗いた。





「これで悪さは出来ない」





そういい暗闇えと消えてしまった。





蹴られて痛むお腹。その場で蹲りながら意識が朦朧とする私にそう告げた彼の言葉はどういう意味なのか






「それにしても痛すぎる…」







地面がザラザラで硬い路地裏の道に体を強打して更にお腹を蹴られるなんてついてないなホントにそれに腕もジンジンと痛む。






助けを呼ばないと…。

私の意識がいつ途切れるか分からない。






痛い地面に膝が擦れながらも這いつくばりスマホまで手を伸ばす。もう膝は血まみれだ。






やっとの思いでスマホまで辿り着き手に取ると





地面に落とした衝撃でバキバキになったスマホはもう電源もつかない約立たずだった。






「本当についてない……」








そう呟いた私はそこで意識を失った。





















ーその頃同時刻の彼方はー






「いらっしゃいませ。ご注文はお決まりでしょうか?」






俺はいつもの様に父の店の喫茶店で接客をしていた。






うちの商店街で小さなイベントが数日に渡り行われていてうちの喫茶店も今大繁盛。いつもは学校から駅までの通学路にある商店街のお客さんたちもこちらに来ていて見かけない顔が多い。




この様子じゃ舞梨ちゃんが通る時間帯の商店街には人気が少なそうで心配だ。





俺は今日舞梨ちゃんを1人で返したことが気がかりで

本音を言えば接客なんてまともに出来る状態じゃない。



この忙しさの中父さんは相談の1件で手をおわれていたが俺の様子を見かねて途中で切り上げて戻って来てくれた。




「舞梨ちゃんに何あっては不安だろう。

今日はもういい僕も舞梨ちゃんが心配だからもう上がって電話してあげなさい。」




いつになく真剣な父さんにびっくりしたがお言葉に甘えてあがらせてもらおう。




「ありがとう。ちょっと電話してくる。」





店から出て裏口でスマホを見るが連絡はない。

なにもなく無事で帰れているのだろうか、それとも何かあって連絡が来てないのか。




少し震える手を押さえ込み電話帳を開き

“舞梨ちゃん”とかかれた画面をタップする。





プルルルルルッ…プルルルルッ…





コールはなるが繋がらない。



「くそ!やっぱり1人で返すんじゃなかった」





来ていたジャケットを脱ぎ捨てて店を出る。

とりあえず駅まで向かうか。







そう思い走り出した時ポケットに入れてあったスマホがなった。






画面を見なくてもわかる。







恐る恐る手にとり目をやるとそこには







『舞梨ちゃん』







ディスプレイに書かれていた。







急いで電話に出ると向こうから大きな音がきこえる。







「ガシャン…!!!」






「おい!!舞梨!!!」




なにも返答がなくただただ雑音がきこえる。

ん?なにか声が聞こえる…







通話の音量を最大にして耳を澄ますと砂嵐のような音に紛れて






『んんっ!!!んー!!』








かすかに聞こえる舞梨ちゃんの声。








「おい!!舞梨!!!返事しろ!!!!!」





どんなに大きな声でスマホに叫んでも向こうから返事はない。





助けに行くのも警察を呼ぼうと思ってもどこにいるのかすら分からない。なにか…なにか手がかりはないのか…!







必死に耳を澄ませて微かな音すら聞き落とさないように…







そのとき電話の向こうから







「~♪……~~~♪」








何か音が聞こえる…。







ガヤガヤした雰囲気からして、商店街か…?

いや、それにしては少しうるさい気もするが…





「あぁ!そうか!このBGM!」








微かに聞こえるBGMはここから少し離れた商店街の居酒屋のものだ!

いそいで喫茶店へと戻り裏口を開ける。

すぐ横に立ってた父さんが飛び上がる。






「父さん!警察と救急車に電話して!

場所は駅前の商店街の一番端の居酒屋!」







「ああ!任せろ!」









急いで商店街へ向かう。



その間も耳元にスマホを当てて、走った。








そのときバタッ何かが倒れる音と男の声が…





「お仕置だ!お仕置だ!!!」





電話越しからきこえる男のヒステリックな叫び声と共にボコッボコッと鈍い音が何度も何度も聞こえる。





くそっ!なんで俺一緒に帰らなかったんだ!

すぐ助けることが出来ない歯がゆさと自分の情けなさに嫌気がさす。









『僕……君の騎士だ……

………いう者がいながら僕の………………なんて

ホントに昔か………悪い子だ……

邪魔を………………はこの手で消し去………よ』










所々砂嵐で聞こえなかったがそう聞き取れた。

このセリフやっぱりあの手紙の男か








俺は急いで商店街へと走る











頼む!無事でいてくれ!!










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