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【十二】犯人からのメッセージ~後編~



「この最終回は多分“死”もしくは“自分が犯人とバレた時”のことじゃないかな。“約束”と言うのはどう言う意味なのかだ。なにか誰かと約束したとかは?」





「全く身に覚えがない。私高校に入ってからは友人も居なくてずっと独りだったから」







…………………………………






それからただ無言だけが続いた。


先に口を開けたのは彼方だった。




「さっき友達はいないって言ってたけど、うちの高校で舞梨ちゃんと昔同じ学校だった生徒は居ないのか?」





「私中学卒業と共に色々あって引っ越す予定だったから昔同じ学校だった生徒は居ないと思うの。結局引越しは無くなったから家から離れてるしここに知ってる子が通ってればわかると思うんだけど」





「そうか。もし約束をしていたとすれば何か過去に関係のあった人物じゃないのかとも思ったがその線は無さそうだな。」





「でも確かに昔の約束だとすれば、私は覚えていなくて向こうは覚えてるって可能性もあるね。それも昔の同級生に限らないし。少なからずそうなると可能性は同学年ってことね。」





「あぁ、特に同学年には少し気をつけたほうがいいかもしれないな」






なにも解決しないまま可能性ばかり膨れ上がっていってしまった。これからどうしたらいいのか。

私達が今ああだこうだと推測を立てているが

本当に推測にすぎない。必ずしもそうとは限らない。





1つ分かるのはこれからの学校生活だけでなく他の場所でも気を張って過ごさないといけないという事だ。




「あ、もうこんな時間」



沈黙が続く中二人共が考え込んでいた間に時間はあっという間に過ぎて時計の針は7時半を指していた。




「こんなことがあったんだ早く帰った方がいいな。

家まで送ってくから帰る支度しろ。」



机に手を付き立ち上がった彼方がそう告げた。

口調は荒いのに顔を見れば心配そうな顔をしてこちらをのぞき込みながら言葉を放っていた。




「でも平気。私だけじゃなくて彼方にも害が及ぶかもしれない。私も彼方と別れたあとが心配よ。」




「舞梨ちゃんは自分の心配だけしてろ」





「そんなこと言われても…ってえ?ちょっと痛い!」





急に机を挟んで屈んで顔を近づけてきたと思ったら急にデコピンする彼方。完全に油断した。


びっくりしたのもそうだけど綺麗な顔が急にドアップなんて誰でも油断する。本当になんだかしてやられたみたいでむかつくわ。




「本当にいい加減自覚して欲しいわ」




「ん?なにがだ?」




本当にこの男は無意識なのかわざとなのか。




「とりあえず帰るぞ着いてこい」




そう言い放ち店内の通路を挟んだ扉に入っていったかと思えば数分して戻ってきた彼方の手の中にはカラフルな球体のようなものが手のひらいっぱいに掴んでいた。



「なにこれ?」




そう言い近づく




「防犯ブザー」




「なんでこんなに?」




「防犯ブザーなんて何個あってもいいんだ。

カバンよこせ全部つけてやる。」




「いや!さすがに多いよ!1個だけでいい1個で!」




「わがままだな黙って付けられとけ」



そういい私のバックを机に置き付け始めた彼方に説得をしてなんとかバッグにピンク色が1つ手持ちに可愛い女の子の猫のキャラクターが書かれた防犯ブザー1つで許してもらった。流石に多すぎるのも難だ。




私も心配だったので彼方のバッグにもブルーの防犯ブザー1つと手持ちに私と対になる男の子の猫のキャラクターが絵がかれた防犯ブザーを持ってもらうことにした。




お店を出る時彼方のおじ様とすれ違い事情を説明して何かあった時すぐ駆けつけて貰えるように説明して喫茶店を後にした。




「星綺麗ね」



「ホントだな。秋になって空気が澄んできていて星も日頃より綺麗に見えるな」



そんな他愛の無い話もいつまで出来るのだろうか。

日がすぎる事に不安になるだろう。

そんなことを考えながらも道を進んで行く。



道中怪しい人が居ないか周りに意識を集中していたが

だれもおぼしき人物はいなかった。


明日から高校の最寄り駅まで彼方が迎えに来てくれることになった。

彼方は私の自宅前まで来ると言ってくれていたがなにせ遠い。それに彼方に何かあっても怖い。




それに加えて話し合いの結果、お互いの事も考えてこれからなるべく一人で行動するのはやめておこうという結論に至った。






彼方と出会って楽しかった毎日が白い封筒だけで、段々と崩れ落ちていった事がとても悔しい。学校に行っても友人もいない話せる人がいなくて苦痛だった日々も彼方と出会って楽しく過ごせていたのにそれも数日だけだった。






どこにやっていいのか分からない苛立ちと不安がごちゃごちゃと入り交じる。

こんなことをベッドに入りながら頭の中を終わりのない不安と悩みがグルグルと回り始める。こんなことひとりで考えてたって何も解決しないのに。私は考えるのをやめて眠りについた。









ーあれから3日が経ったー





白い封筒が届くようになったあの日から、この3日間白い封筒も届かず私の周りに変な出来事も無く前のような3日間をすごした。





封筒もなければ追いかけられてる様子もない。

一体なんだったのか。





毎日朝は学校の最寄りまで来てくれて、帰りは自宅まで送ってくれていた彼方も家の喫茶店の相談がとても忙しくなり、今日の送り迎えは一時ストップになった。




彼方は最後の最後まで喫茶店のことは父さんに任せて

俺は舞梨ちゃんを家まで送り届けるんだと半分怒って聞かなかったが本当におじ様もてんやわんやで手伝わないという選択ができないくらいになっていて私の説得の末今日だけはと渋々諦めてもらった。




そして今は放課後。

三日ぶりに一人で学校から自宅に帰る日なのだが、





彼方と帰りが一緒じゃない時に限って日直に当たってしまった。なんて着いてないの。そう思いながらも日頃よりもペンを早く走らせる。


もうカレンダーは9月から10月へ移り変わろうとしている。夜もだんだんと暗くなるのが早いのが教室の窓からわかる。




急いで帰ろう。

日誌を書き終わり小走りで靴箱へと向かう。





学校から駅まで約20分。




三日間彼方と話しながら帰っていた通学路は、今は私一人で静かで怖いような寂しいようなよく分からない空間だ。


学校から駅まではあまり大通りはなく、あるのは人気のない昔ながらの商店街だけ。腕時計を見れば6時になろうとしていた。6時にもなればどこも商店街のお店はシャッターが閉まっていて今日の営業が終わっていた。


静かな商店街を途中で曲がり道抜ければ、人3人が並べる位の道幅で駅までずっと続く道がある。その道は所々抜け道がありそれを少し進めば住宅街が広がっているがこの道は街灯は少なく周りは暗闇に包まれていた。






なにか嫌な感じがする。

この嫌な感じは幽霊でも妖でもない人独特の気配。




少し立ち止まり周りを見渡すが、ここら辺で1番の大通りを抜けたのに周りは誰1人歩いていない。






少し先に明るく光る自販機がやけに嫌な気配が漂っている。自販機の少し奥には住宅街に続く1個目の路地がある。その奥の路地から背の高い長身の男であろう人が光の加減で真っ黒の影が浮かび上がっている。

その人影がこちらを覗き込んでいるのがわかる。









私は恐怖にビクッと肩を上げて固まってしまった。

やばい確実にやばい。

私が彼に気づいたと今のでバレてしまったかもしれない。









「このままじゃ…まずい…」









ここよりはまだ人気のある先程の商店街まで戻ろう。


少しずつゆっくりと相手がこちらに来ないかを確認しながら振り返る。

彼方に連絡しなくちゃ。

彼方に電話しようとポケットに入っているスマホを明かりが漏れて相手にバレないようにポケットに手を突っ込み操作する。






まずい影が動いた。走るしかない!





私が走ったその瞬間。





ドッドッドッドッ……!







後ろから後を追いかけてくる足音が段々段々と近くなってくる。




やばい捕まる。





あ!防犯ブザー!




ブチっ!



私はカバンに着けていたピンク色の防犯ブザーを思いっきり引っ張り音を鳴らしながら走り続けた。

どれくらい走っただろうか後ろから聞こえていたはずの足音は少しずつ遠のいていき商店街に着いた頃には聞こえなくなっていた。





商店街の中に入り息を整えながら周りに人が歩いているのを確認して上がった息を整えるために歩きながら彼方に電話を掛けて耳にスマホをあて自転車が何台も私を横切ろうとしていたので邪魔にならないよう商店街の端に立ち止まった時。





私の判断は間違っていた。








耳元から電話の呼び出しがなり始めると同時に私は後ろから強く引っ張られた。









油断した。

予想をしていた嫌な事は本当に起こった。










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