【十二】犯人からのメッセージ~前編~
私は彼方に時系列通り説明をした。
今日の朝家の前に何も書かれていない真っ白の封筒が落ちていてその中には彼方の顔が塗りつぶされた写真が入っていた事。
犯人を絞り出せたらという思いでお昼休みに校舎を歩き回って正体を暴こうとした事。
そしてその後教室に戻ると自分の机に朝と同じ封筒が入っていてその中身は私がお昼休みに校舎を歩いていた時の写真が3枚そして手紙が入っていたことを伝えた。
6枚の写真と折りたたまれた1枚の手紙を机に広げた。
彼方はその写真を手に取ってじっと見ながら眉間にシワを寄せた。
少しの沈黙が続いた。静かなBGMが微かに流れている喫茶店内。
「なんだこれ。」
彼方が今朝見つけた写真を2枚取り上のシャンデリアにかざした。
「やっぱり。これ写真1枚じゃないぞ。」
「え?どういうこと?」
「店内が暗くて分かりずらかったけど写真の角が二重になってる。それに他の写真に比べて分厚い。」
「ホントだ写真に写ってることばっかりに気が取られて気づかなかった。」
彼方がゆっくりゆっくり重なった角から引っ付いてる写真を2つとも剥がした。
そこには写真同士を引っ付けられていて先程まで隠れていた写真に2人で目をやる。
こそに映っていたのは。
彼方とは出会うもっと前、高校の入学式の私の写真が貼られていた。もう1枚には元彼とのツーショットだった。
「なにこれいつから私撮られてたの。」
「入学式か、かなり前の写真だな。
この写ってる男は?知り合いか?」
彼方は持っていたその写真をペラりとこちらに向けた。
「そこに写ってるのは前付き合ってた元彼」
「なんでこの写真2枚をわざわざ他の写真に引っつける必要があったんだ。」
「前からストーカーされてたとかは?記憶にないか?」
「まったくないと思う。」
「でもこの写真を見るからに柚江高校の誰かとしかわからないな。」
「そういえばこの間の校門のカメラを持ったおじさんはどうなったんだろう。」
「あぁあれかあれは雑誌の記者だったらしい。
今日職員室の前を通ったら記者が謝罪していた。
前話した高校生を襲う事件の犯人の事でうちの学校から1人被害者が出たから、その記事に使う写真にと校舎を撮ってたらしい」
「そうだったんだ。
早く解決してよかった。それにしても勝手に撮るなんて。」
「まぁ仕方がないな。それにしても証拠が少なすぎる。うちの高校は生徒が多いから、何も証拠がなく1から探すとなると骨の折れる作業になりそうだ。」
顎に手を置き考え込む彼方。
「これだけじゃ分からないな。
手紙は読んだか?」
私は首を横に振る。
「怖くて読めてない。彼方よんでくれる?」
「わかった」
そう言い彼方は手紙に手をかけた。
手紙はちゃんとした便箋ではなく、
何か藁半紙の様な薄汚れた紙に書いてある。
読み終わった彼方は机の上に肘を置き右手で顔を覆った。
「この問題一筋縄では簡単に解決しそうにないな。
面倒なことになりそうだ。」
私はそう言い放った彼方の瞳は今までとは違いどこか人間離れした艶っぽい瞳に飲み込まれそうになった。
「ね、ねぇ。その手紙にはなんて書いてあった?」
「いっていいのか?」
「うん。彼方の口からなら聞けると思う。」
再度彼方は手紙を持った。
「僕は君の騎士だ__
僕たちの行く先に邪魔する敵がいれば
容赦なく切り捨てよう。
そして__僕のこの身が尽きるそのときは、
愛する君と一緒に最終回を迎える。
そう約束したのだから__。」
「だ、そうだ。犯人はまさに自分が主人公という名の騎士で、そしてヒロインの舞梨ちゃんとの物語を描いたであろう内容だ。相当なロマンチストだろう。」
「私がヒロインで、犯人が騎士。
それに最後の文の“この身が尽きる時最終回を迎える”、“約束したのだから”このふたつの意味がよくわからない。」
「この最終回は多分“死”もしくは“自分が犯人とバレた時”のことじゃないかな。“約束”と言うのはどう言う意味なのかだ。なにか誰かと約束したとかは?」
「全く身に覚えがない。私高校に入ってからは友人も居なくてずっと独りだったから」




