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【十一】恐怖の時間と事務所


___そこにはさっき校内を歩き回っていた



私の写真が入っていた___。





なにこれ…。






封筒の中には3枚のの写真と手紙が入っていた。

その写真には廊下を歩いていた私を真横から撮った写真。

彼方を探しに教室に向かった私を真後ろから撮った写真。

そして最後の1枚それは今は疲れていない旧校舎で真正面から撮られた写真だった。




旧校舎は劣化が酷くなり備品などを管理する為だけに残されたほとんど使われていない校舎で出入りする人など滅諦に居ない。現に私が旧校舎に居た時も誰一人とすれ違うことは無かった。







え?どうして?ただ疑問でしかない。



あの場で人の気配なんて私は感じなかった。

私は恐怖にのまれながらも入っていた手紙に手をかけた。

見ない事には話がわからない。

そう思い手紙を開こうとした時、教室のドアが勢いよくガラガラっと開いた。そこには英語教師の山本先生が立っていた。タイミングがいいのか悪いのか。手紙と写真を見られては困る。そう思い慌てて写真と手紙を封筒に戻して机の横にかけてある通学カバンに押し込んだ。



あの写真段々と私に近づいてきてるような気がした。気味が悪い。こんな悪趣味な人がいるなんて。






午後の授業が終われば彼方の様子次第で話そうと思っていたがこのままではダメだ。私にはどうにも出来ないし何かあった時少しでも話を知っている人がいた方がいいと思った。やっぱり彼方に話すべきだ。



そして放課後になりもう一度彼方の教室へ向かうことにした。もしかするとタイミングが合わなくて入れ違いになっていただけかもしれない。教室を除くがやはり彼方の姿はなかった。

んー、もう帰ったのか?そもそも来てない?体調不良?なんて考えててもキリがないのでドアの近くにいた女の子に聞くと、どうやら彼方は午前中で帰ったみたいだ。




体調でも悪くなったのだろうか。

でも、この話はできれば早くに話しておきたいと思う。昨日から予定していた狐の子の様子も気になるのでもし彼方が体調不良ではなかったら話そう。そう思いおじ様のいる喫茶店へ向かうことに。





学校から喫茶店へは今の怪我をした私の足で30分かからない程の距離がある。いつなら大丈夫だけれど写真の件があるので1人で居ると怖くて仕方がない。




早く着きたい。1人は嫌だ。そんな思いだ段々段々大きくなっていき、痛む足にムチを打ちながら恐怖でからだが強ばった私は肩をギュッと上げて下を向き早歩きで前へ前へと歩く。人はちらほら居るがその人たちですらもしかしたらその中に犯人がいるのではと思うと怖くて仕方がない。






私はまた歩くスピードをあげる。


















後ろから腕をグッと掴まれて引っ張られた__







恐怖で声にならない叫び声を上げて振り返り目を見開いた。







そこには焦ったような顔で額に汗のかいた彼方の姿があった





「おい!舞梨!死にたいのか!!」








言葉の意味が分からなく固まっていると私のすぐ後ろでトラックのの通る音がした。

振り返ってみるとそこは商店街の手前にある大通りで横断歩道でこちらの信号は赤色だった。





そうか、私。

“怖い”その一心で顔を上げるのさえ怖くて前を見ずに下を見て歩いていたから…。





「彼方ごめんなさい。」




「俺も大きい声出してごめん。

後ろなら何度も名前呼んでたが聞こえてなかったみたいだから。でも事故に合わなくてよかった」





「なぁ。なんでそんなにちじこまって歩いてたんだ

なんかあったのか?」





「うん。ちょっと話聞いて欲しい」



彼方は静かに頷いた。


「人が居ないところの方がいいだろ。

父さんのところで話聞く」




「わかった。ありがとう。」









いつもは歩幅を合わせてくれてほんの少しだけ前を歩く彼方だが今日はピッタリくっつく程の距離で歩幅を合わせて歩いてくれる。それくらい心配かけてしまったんだと思った。彼方と出会ってから迷惑しかかけてないなと改めて反省する。


彼方が今横にいるからさっきまでの恐怖はだんだんと薄れていく。








喫茶店に着いて中に入るとお客さんは居ない。

不思議に思って周りをキョロキョロしていると彼方が口を開いた。






「お客さん居ないだろ。水曜日と金曜日の午後は喫茶店じゃなくて“事務所”になるんだ」




「え?事務所?」





「そう、事務所。父さんと俺は見える人だから

俺たちを頼って普通のものには理解し難い現象を“相談”をしにこの曜日の午後はいろんな人(妖)がやってくるんだ。」





私はそれを聞いて驚くことは無かった。

そういった場所がある事は知っていた。

現に私の祖母がそういった依頼を受けて仕事をしていた人だったから。祖母は鈴を使って浄霊、除霊をしていた。






その鈴ひとつで人の怨念呪い幽霊から妖の問題まで幅の広い依頼を引き受けていたのだ。






でも身近な彼方がそうだったことには少し驚いた。







「そうだったんだ。私の祖母がそういった仕事をしていた人なの。祖母は鈴での術を得意としていたわ」






「鈴を使ってたのか。めずらしい。

鈴は昔から魔除として使われていたけどそれを術として心得るのは難しい。それに浄霊除霊として使えるのは日本で3人しか居ないって昔父さんが話していた。凄い人だな」









「ええ、 ホントに凄い人だった。

小さい頃から霊につかれやすい体質の私は体に収まりきらなくなった力で良く熱を出してたの。その時“自分の身は自分で守りなさい”って簡単な鈴の術を教えてもらったけど今でもちゃんと使いこなすのが難しいくらいなの」



「舞梨ちゃんなら大丈夫だ。必ず使える」





「ありがとう。彼方はなにか術を使えるの?」




顔を上げて問いかけた。





「俺は護符だ。護符で結界を作るのが主にだが。護符を使ってその用途に応じた術が使える。」





「彼方護符が使えるの?祖母から聞いたわ護符も心得るのが難しいと。凄いね彼方」





「小さい頃祖父に厳しく教えられた。そのおかげで使える。」







こんな現実味のない話を他の人が聞くとただの変人、厨二病扱いだ。だから見えることも言わない。見えるこの世界のことはなにも。今でもこれは夢なんじゃないかなんて思うけどやっぱりこれは現実で。




でもこの世界ではこのような会話は日常茶飯事だった。



一旦席から離れた彼方は両手にエメラルドグリーンに金色の装飾がされたティーカップを2つ持って現れた。




「すごくいい香り。これは紅茶?」



目の前に置かれたティーカップを覗き込む。




「その紅茶カモミールティーっていって神経を落ち着かせてくれる作用がある。だからこれ飲んで落ち着いてから話してくれ。」





出会って3日しか経ってないが彼の性格がよく分かる。

ぶっきらぼうに見えて意外と細かいところにまで気を利かせてくれる人だ。





一口飲むとカモミールの香りが私を包み込むようにして温めてくれた。




「うん。1口飲むだけでも落ち着く味ね。

鼻から抜ける香りが最高。」






「そりゃよかった。」




机にひじをついて絡めだ指の上に顔を置きじーっと見つめてくる。

こんな時にでもやっぱり美形ね。




「大丈夫か?顔色悪いぞ。」




そういいティーカップを持ち口に近づける彼方。



それから数回会話をした。



「そろそろ話すね今日あった出来事。」






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