後悔と涙
あの惨劇から一夜が明けた。
俺は警察に詳しく事情を聞かれたり
母さんや父さんの最後の姿を思い浮かべたりして、一睡も出来ずに、警察からの事情聴取が終わった後に近くの公園のベンチに項垂れたように座っている。
一体誰が何の為に…
いや、どんな理由があろうとも
絶対に許す事は出来ない。
許せる訳がない。
「あやくん…大丈夫…?」
心配して春輝と一緒に駆け付けてくれた、春菜がそう俺に聞いてくる。
「………あぁ。」
全然大丈夫なんかじゃねーよ。
「とりあえず…あやくんの事情聴取は終わったんだよね?」
「………あぁ。」
「じゃあ、はるな達のお家においでよ!で、少し休もう??」
「いや、いい… 大丈夫だから…」
「僕も休んだ方が良いと思うけど。 頭の中を整理する為にもね。」
休めるわけがないじゃないか…
「だから大丈夫だから」
「僕には全く大丈夫なようには見えないけど?」
「ーーーっ、大丈夫だって言ってるだろ!?!?」
声を荒げながら そう言った俺に対して春菜がビクッとしてて、春輝は少し呆れたように「少し頭冷やしなよ」とだけ言い残し、春菜を連れてその場を後にした。
ハハッ…ただの八つ当たりじゃねーか…
「情けねーな俺…」
いつも当たり前にいた
少し口煩くて怒るとおっかないけど
明るくて元気な母さん
いつも母さんの尻にひかれてて
普段穏やかだけど
ここぞって時には男気のあった父さん
もういないんだな…
「クソッッッ………なんでだよっ!!!なんで母さんと父さんなんだ…なんでっ……」
もっと親孝行しときゃ良かったとか
もっと一緒にいれば良かったとか
昨日も俺がもっと早く帰っていればとか
今更叶いもしない事ばかりが頭をよぎる。
「綾斗くん…??」
そう聞き覚えのある声で呼ばれ振り返ると、そこには美月がいた。
俺が言葉を発する前に
駆け寄ってきて力いっぱい俺を抱きしめてくる。
「大丈夫…じゃないよね?辛いよね…。 何も出来ないかもしれないけど… でも、綾斗くんを抱き締める事なら… 気が済むまで泣かせてあげる事くらいは… わたしにさせて?」
まるで泣きじゃくる子供をあやすかのような優しい口調と声は、 俺の心にすんなり入ってくる。
「ーーーッ… ご、ごめん…情けねーよな………けど…今だけ………今だけだから…」
春輝や春菜がいた時は出なかった
涙が美月の温かい腕の中で込み上げてくる。
あーそっか… 俺泣くの堪えてたんだな…。
何も言わずに力いっぱい優しく抱き締めてくれてる美月を俺も抱き締め返して、ただひたすら泣き続けた。