惨劇
「あいつら散々人の事からかいやがって…。」
ラーメン屋を出た俺は
本屋に行くと言う双子と別れて
帰路についていた。
双子とは同い年で小さい頃から家が近所で、幼稚園から小、中、高と一緒だ。
双子の姉、鈴木 春菜は姉のわりには、妹気質が強く、小さい頃も弟の春輝や俺に よく引っ付いてきてた。小さい頃から俺に懐いてくれている。俺からしても手の掛かる妹みたいな存在で大事な奴。
双子の弟、鈴木 春輝は春菜があんな感じだからか、ぼーっとしてそうで実はしっかりしている。頭も何気に良い奴。俺の唯一の親友。
「クローンに対して感情は無いか…」
ふいにさっきの春輝の言葉を思い出していた。
俺にはクローンが存在しない。
存在しないというか
何故か俺のだけは造れないらしい。
今の世の中でクローンが存在しないのは俺だけらしく、小さい頃から毎週研究施設に行ったり、特例だからとTVに勝手に映されたり…。
もし、俺にクローンができたら俺も感情無しでクローンを見るのか…
「いや、俺にクローンが出来たら嬉しくて絶対に仲良くなるっつーか、感情無しで見るとか無理だわ!」
うんうん、と 自分に言い聞かせるように頭を上下に振って、自宅の近くのコンビニの角を曲がった。
このコンビニの角を曲がれば
俺の家が見える。
「つーか、もう20時か…結構ラーメン屋にいたんだな。やべー… 母さんに夕飯いらねーって連絡してねーや…」
っても、今更連絡しても意味ねーよな…
もう家につくし、ついたら言うか。
ガチャッ
「ただいまー…うっ…なんだよ、この臭い…」
家に入った瞬間、鼻にくる今まで嗅いだ事の無い悪臭が漂っていた。
「母さん!なんだよこの臭い…!」
…………………。
母さんを呼んだが返事がない。
TVの音声らしきものしか聞こえてこない。
靴を確認してみたら、靴は母さんだけじゃなく父さんのもある。
おかしい…。
それにいつもなら聞こえてくる
母さんのお帰りって返答も今日はない。
異様な悪臭が漂いながらも
シーンとした静かな空気に
嫌な予感がして急いで靴を脱ぎ
リビングへと向かった。
「母さん?父さん?いるよな??」
ガチャッ
リビングを開けた俺は 状況を理解するのに 少し時間が掛かった。
な…なんだよこれ…嘘だろ…?
そこには両親らしき面影を残した物体が無残な姿で倒れていた…。
「ーーーっ!!!!母さんっっ!!!父さんっっ!!! 」
駆け寄って上半身を少し抱えて何度も耳元で繰り返し呼んだ。
どう見ても、もう返答なんか返ってきやしない事はわかるはずなのに…。
「ヒッ、なんでだよ…… どうして……」
涙ながらに目に映る光景は
真っ赤に染まったリビングと
真っ赤に染まった両親の亡骸だった。