クローン人間の役割
あの後、ちょうど帰りに会った幼馴染の双子の姉弟、鈴木 春菜&春輝と行き付けのラーメン屋に入る事になり、無事付き合えた事を報告していた。
「え!?佐藤さんと付き合った!?あやくんが!?!?」
「おう」
「へー良かったじゃん。おめでと、あや。」
「あやくん絶対に振られると思ってた〜…」
「ひでぇな…。春輝は相変わらず適当そうだし、お前ら祝う気ねーだろ!」
「なく…なくもない。」
「春菜は複雑なんだもんっ!春菜だってぇー…」
「なんだよ」
「あやくんには春菜がお似合いだと思うもん…!!」
「あー春菜は昔からあやの事好きだもんね。」
「ち、ちっがーう!!ただ春菜のが佐藤さんよりもあやくんと一緒にいた時間長いから…!」
「それ僕には好きって言ってるようにしか聞こえないけど」
「もー!春輝うるさーい!!!///」
「なるほどな。兄貴的な存在の俺に彼女が出来たから、構ってもらえなくなりそうで寂しいんだな!安心しろ!春菜はずっと妹みたいなもんだから!」
俺がそう言うと何故か二人に大きな溜め息をつかれた。
《〜続いては、今日未明、総理大臣のクローンが身代わりとなり殺害された事件についてーーー》
TVから流れこんできたNEWSに反応する。
クローンか…。
「へー、総理大臣も命拾いしたね。ま、僕らにとっても影武者みたいなもんだしね。」
「クローンって本当に助かるよね!今も春菜達の代わりに戦争に行ってくれてるもんね!」
クローン人間。
それは十数年前に第一号が造られて以来、今では人類全員に1人づつクローンが存在している。ただ1人…俺を除いては…。
「でも、クローンって自分と全く同じ外見で全く同じ性格なんだろ?それが死ぬとかちょっと考えつかねーっつーか。」
「あー、あやくんはクローンいないんだもんね」
「そうそう。だから、あやは有名人だしね。赤髪だから尚更目立つし。」
そう、俺には何故かクローンが存在しない。クローンが造れないらしい。遺伝子に珍しい抗体があるんじゃないかと言われているけど、実際に詳しくは俺自身もわかってはいない。
「有名人っつーか…俺は良い見せ物なんだろ。今更気にしてねーけどさー」
「まー、あやには想像つかないかもだけど、感情で考えてないんだよ僕らは。」
「ん?感情で?」
「理論的にしかクローンの事を考えてないって事だよ。クローンがいなければ僕達は戦争に行かなくちゃいけなくなるし、そうなると各地で人口が減るでしょ?家族や友人も悲しむし」
「まー…」
「けど、クローンは僕達が生きてる限りまた造れるし、死んでも誰も悲しまない、困らないし、政府からしても人口は減らないから支持率にも影響無いしね。だから皆わりきって考えてるわけ。」
「んー、俺には難しい話だわ…。」
「まーあやくんは特例だもんね!」
「特例ねー…」
「あ、噂をすれば。 ほら、あやが出てるよ」
あぁ…またいつものあれか…。
《〜♪今日の綾斗様特集〜!今日の綾斗様は…》
「いつも思うんだが… 俺取材とか全部断ってんのに、いつの間に映像とか撮ってるんだ…?」
『隠し撮りだろうね〜』
「そこの双子! 息ピッタリにハモらせて怖い事言うんじゃねーよ!!!」
この時の俺達はあと十数時間後に
この平穏な日々が終わりを告げるなんて
夢にも思っていなかった。