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虚ろの獣使い  作者: 松風ヤキ
第一章
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第一章/chapter4 第6班:波乱の夏の始まり

「んぅ……ん?」


浮上し始めた意識が最初に感じたのは、少し固めの医療用ベッドの感覚。目蓋を開くと、白い天井に蛍光灯、そして、


「あ、やっほー。やっと起きたねー」


「----------」


瞬間、女神を見た気がした。

 琥珀に限りなく近い艶を湛える栗色の髪に、恐らくだが、進次が齢18の人生で初めて見る、完璧と言って過言ではない黄金比の端麗な顔立ち。

女神と言うにはややカジュアルだが、フリルの利いた赤基調のキャミソールワンピースからは、体型を目立たせない一繋(ワンピース)ぎからでも分かるほどに、「女性」を感じさせる凹凸(プロポーション)が見てとれた。

 そんな女性が自分の目覚めを待っていたなんて。しかも、初対面なのに微笑みかけるだなんて。


「ぇ…ぁ……う」


真に尊いモノを前にすると人間は語彙力を失う、などと最近は特に言われるが。進次は今、相当に間抜けな面構えをしているに違いないことを自覚しながら、少しずつ混乱する脳内を整理し始める。


 確か、ミトス隊入隊式に出席していたはずだ。そして、[ミトス武装]授与で、父親の、譲の蓮剣を授けられ、



「し…ん…じ………■■■」



「…っ!」


フラッシュバックする、譲の血に染まる視界。それは、進次自身の記憶さえ甦らせ、脳髄に張り付く。


「あわわ、大丈夫?水飲む?」


その声に意識を繋ぎ止められ、いつの間にか目頭を押さえていた右手を降ろす。

起き上がり、女神から一杯の水を受け取り、一息に飲み込む。どうやらここは医務室らしいことを、やっと把握する。だが白衣を着ていないことから、この女性が医務室の主ではないことは推察できた。


「ありがとうございます。あの、あなたは?」


呼吸を整えながら、ようやくその疑問を口にする。女性はまだ心配そうに微笑みながら、その素性を明かす。


「アタシ、ナターシャ。ナターシャ・スプリングフィールド。あなたの配属された、澤館ミトス隊[第6班]のメンバーだよ」



 腕章を着けた左腕で、重厚な壁盾型(タワーシールド)の[ミトス武装]を軽々と運ぶナターシャに先導されながら、[塔機関]澤館支部の通路を往く。事のあらましは、ナターシャから道すがら聞いた。

 進次の[ミトス武装]との接続は、紙一重で成功。ただし、精神に、肉体に、[魂]にかかった負荷が、[塔機関]の想定より重く、進次はその場で崩折れたらしい。

 その後、進次は二時間ほど気を失い、その間、[第6班]班長のクリウスに命じられたナターシャが、進次の付き添いをし、現在に至るのだとか。


(しかし、クリウス先生の班に入るだなんてな…そんな偶然あるかな?)


「あ、ちなみに、[第6班]は主に風見区1丁目から5丁目までの範囲を管轄にしてる、というかその辺りに住んでるミトスの班なんだよ。だから、意外と知り合いばっかりでやりやすいかもね」


進次の疑問は、ナターシャの補足で合点がいった。


「じゃあ、焔も?」


「え、ほむほむと知り合いだったんだ?じゃあ、なおさら気心知れてていいねぇ」


ナターシャが能天気に宣いながら、一室の前に止まる。扉には「澤館ミトス隊[第6班] 顔合わせ会 会場」の張り紙が張られている。


「みんなー、進次くん起きたよー」


ナターシャが扉を開き、進次を迎え入れようと---。


「---え?」


ナターシャが硬直し、見るからに血の気が引く。何が起きたのかと進次が部屋を覗く。


「あなたは…!」


そこにいたのは、焔とクリウスの、厳しく固唾を飲む寸前の顔と---。

 浅黒い肌に流し目の黒髪、力強い筋肉(せいめい)を感じさせる長身痩躯のVネックシャツに金のネックレスが輝く、触れれば切れそうな鋭い気迫を放つ男性。

 そして彼と睨み合う、銀の(ピアス)の巨漢。

ふと、鎖の男が進次たちの立つ入り口に余所見する。


「お前は…!」


その驚愕の顔は、今朝方進次とエントランスで睨みあった、ディビッド・M・ホーキンズの顔で、間違いなかった。



「---つまり?トーマくんとナターシャさんは、地元のヨーロッパでディビッドくんと一悶着あり、天野くんは今朝方、[塔機関(ここ)]でディビッドくんと一悶着あった、と?」


クリウスが全員を着席させ、頭を痛めたように眉間にしわを寄せながら、状況を確認する。

進次は返す言葉もない様子で小さく返事をし、褐色肌の青年、トーマ・L(ランスロット)・ベンウィックとナターシャは気まずそうにディビッドから目を逸らし、ディビッドは苦虫を噛み潰したような顔で、深く溜め息を吐く。


「言っとくがな、俺はこんな辺鄙な街にコイツらが移り住んでたなんざ、知らなかったからな。それに、だ」


言葉を切り、ディビッドがナターシャを一瞥、ナターシャもまたディビッドを横目に見る。視線は交差したが、ナターシャが怯えたように視線を逸らし、それを捉えたディビッドが舌打ちをし、再び口を開く。


「昔のことなんだよ。次詮索したら、班長だろうがぶん殴るぞ。分かったか」


ディビッドが左腕の籠手(ガントレット)の[ミトス武装]を握り締め振りかざすジェスチャーをし、全員を見渡す。

クリウスは両手を上げるジェスチャーでそれに返しながら、


「OK。それじゃあその言葉を以て、俺達は遺恨なく共に戦う仲間だ、という確認としていいかな?」


クリウスが全員の同意を求めるように、全員を順に見渡す。


「まあ、正直俺はちょっと信用ならんけど、本人同士がいいならいいんじゃないか?」


僅かに沈黙した一同の中、最初に副班長の焔が、やや諦めた様子で肩を落としながら承認する。


「すみません…僕は文句言える立場じゃないので……」


進次は自分もディビッドと問題を起こした負い目から反省したように縮こまる。


「アタシは…」


「俺はディビッドを"信用"はできない」


ナターシャが口を開き始めた直後に、トーマが切り捨てるように告げる。ディビッドの眉が、ピクリとその言葉に微動する。


「おや、トーマくんともあろう、いつも他人を尊重してくれる人が、珍しいじゃないか」


クリウスがトーマの切った啖呵に苦言を呈する。クリウスからその評価を勝ち得ているからには、トーマという男性は、穏やかな気質なのだろう。


「班長、話は最後まで聞いてくれ。詳細は伏せさせてもらうが、俺は欧州(あちら)で、ナターシャをこの男から警護する依頼を受けていてな。それは今も同じことだ。

どうしてもこの[第6班]で、澤館で生きていくつもりなら、どうか俺達との間に生じた軋轢を埋め合わせる、"信頼"を築いてくれ」


トーマが話し終わり、ナターシャに全員の視線が集まる。

一体、この3人にどれほどの因縁があるというのか、進次には皆目見当がつかない。いづれにしても、この三角関係がこの班における最大の課題となるであろうことは、他人事ながら重要だと予感していた。

やがてナターシャは観念したように溜め息を吐きながら、


「トーマがそれでいいなら、アタシはトーマを信じるよ。でも、これだけは言っておくね。」


ディビッドから目を逸らしがちだったナターシャが、ディビッドに向き直る。その顔は、先ほど進次に向けた女神を思わせた微笑みと比べると、絶対零度を思わせる冷酷さを湛えた無表情だった。


「アタシ、アンタのことは大嫌いだから」


ナターシャの言葉に、ディビッドが舌打ちをし、再び一同に剣呑とした沈黙が訪れる。


(そんなのわざわざ言わなきゃいいのに…)


焔がナターシャを内心批判しながら、机の下の段ボールを開き、全員の前にペットボトルほうじ茶と焼き印が施された豆大福を配布する。


「わあ!仲岡亭(ナカオカテイ)の豆大福だぁ!」


わざとなのか素面なのか、この局面では定かではないが、ナターシャの切り替えの早さにクリウスが苦笑しながら立ち上がる。いづれにせよ、ナターシャが壊した雰囲気を自分で持ち直してくれたのは助かった。



「さて、では改めて。天野進次くん、ディビッド・M・ホーキンズくん。ようこそ澤館ミトス隊[第6班]へ!班長のクリウス・ブランカーだ」


クリウスが豆大福とほうじ茶を勧めながら、ホワイトボードに文字列を綴っていく。一同が各々のペースで、茶に手を伸ばし、大福を舌鼓を打つ様子を横目に見ながら、クリウスが頬を綻ばせる。


「はい、みんな。食べながらでいいので真面目に聞くように。天野くんはミトス訓練校 2013年度夏期卒業生、つまり本当のニューフェイスとして入隊したわけだな」


「せんせー、この夏は何人志望で、何人残ったんすかぁ?」


焔が挙手し、若干不真面目そうに教師を煽る生徒を装いながら質問する。


「うん、今夏は35人候補生が居たわけなんだが、卒業まで残ったのはたったの7人だ。まあ脱落者が出るのは無理もない。ここにいるミトス諸君は、訓練校の厳しさを、それはそれはよく理解しているはずだ」


進次と焔、そしてナターシャが、クリウスの言葉を噛み締めるように深々と同意する。

座学、戦闘訓練、救出訓練、そしてミトスとなる上で欠かせない、「あの訓練」---。


「一方のディビッドくんは、ロンドンミトス隊からの転属だったな。[ミトス武装]も[塔機関]ロンドン支部製…澤館支部の研究者さん達が喜びそうだ」


ディビッドが一息をつきながら、豆大福を二口で食い尽くす。進次が入隊式のミトス武装授与で、ディビッドだけが立ち上がらなかった理由を合点する。


(転属だったんだ…なるほど)


「入隊間もない二人には慌ただしくて申し訳ないんだが、現在この澤館では、あと2週間を切った[澤館ミトス大会]に向けて訓練が本格化しているんだ」


 [澤館ミトス大会]。[ミトス隊]が、地方自治体における消防団のようなものだ、という話を覚えているだろうか。

[ミトス大会]とは、つまるところ消防救助技術大会に該当する、各自治体、各隊、各班の日頃の訓練の成果を競い合い、学び合う大会のことだ。


「今年の夏期大会では、嬉しいやらこそばゆいやら、俺達[第6班]に[ミトス活動記録生]の記録取材が宛がわれてる」


クリウスの言葉に、焔とナターシャ、そしてディビッドが「げえ」と顔を歪ませる。

 [ミトス活動記録生]とは、この、澤館虚獣大災害に見舞われた澤館固有の伝統で、毎年[塔機関]澤館支部が指定した高校の映像部、或いは新聞部が、塔機関にローテーションで指定される[ミトス隊]の一班の活動を取材・記録・報道する制度だ。

当時、澤館のある高校が、大災害の一部始終、ミトス達の陣中日誌、戦闘記録を撮影し、塔機関と国営放送にその記録を寄贈し、多くの真実を伝えたことが発端のこの行事。


 焔達が顔を歪ませたのも無理はない。プライベートは守られる範囲の取材ではあるが、多感な、そして初対面の高校生が見るなかでの訓練、活動というものは、やりづらいところもあるであろうことは、比較的高校生に年齢の近い進次でも察することができた。

 しかも、それが映像として記録・報道されるとなれば、この情報化の進む社会では、それは大なり小なり波紋を呼ぶことは明白だ。


「マジかよ先生…。それ、辞退しません?」


「アタシもノーメイクではいられないなぁ…。でも厚くしすぎてケバくなっても嫌だしなぁ…」


温度差はあるものの、焔とナターシャが狼狽える。その様子を見ながらクリウスが苦笑し、ホワイトボードに文字列を綴っていく。


「はは、まあ話は最後まで聞いてくれ。取材を受けるのは[ミトス大会]当日だけだよ。その前に、今週末に顔合わせと打ち合わせだけはあるけどな。場所は[市立澤館聖修高校]、その映像部が取材してくれることになってる」


その言葉を聞き、拍子抜けしたように焔とナターシャが安堵する。ディビッドは依然苦々しく舌打ちをしながら、ほうじ茶を飲み干す。


「班長、質問があるんだが」

これまで沈黙を通していたトーマが控えめに挙手する

どうぞ、とクリウスが手をさしのべ、トーマが机の上で両手を組みながら語り始める。


「[ミトス大会]まで、あと12日しかない。その間に天野くんを訓練・育成するのは、並大抵のことではないが、どうするつもりだ?出場させないわけにも行くまい」


「いい質問だね。勿論、可能な限りの育成はさせてもらうつもりだ。『いい師匠』もいることだし、な」


クリウスが含みのある言葉を残し、最後の要項をホワイトボードに記し、それが記されたプリントを配布する。


「では、既存班員は知ってると思うが、これからほぼ毎晩、午後7時より三時間ほど大会に向けた訓練を実施していく。詳細はプリントに書かれているから、各自出来るかぎり参加すること。以上で解散とします。お疲れ様!」



 [塔機関]澤館支部の地下駐車場で、各々がそれぞれの日常に帰っていく。進次が二時間寝込んでいた間に、他の班は顔合わせ会を終わらせたらしく、駐車場に停まる車の数も朝よりはるかに少なかった。

 ディビッドは顔合わせ会が終わるなり、やっと終わったか、と言わんばかりに早足に帰っていった。


「親睦もなにもない最悪の出会い頭とはいえ、ああも無関心なもんかねぇ」


とは焔の談。誰もが今後に不安を覚えたのは、言うに及ばないだろう。

しかし、だからこそ分かり合わなければと、進次は一人、胸に誓う。どうあれ、この身はすでにミトスの仲間入りを果たしたのだ。新しい人間関係、広がった身の回りのコミュニティ、であれば、この手の届く範囲を広げたのだから、その人々の幸せも、守らなければ---。


「それじゃあしんでぃ、ほむほむ、はんちょー、またね!」


 ナターシャが早くも進次をあだ名呼びし、トーマのワンボックスカーに壁盾を積みながら、別れを告げる。その壁盾の横には伴星のようにトーマのミトス武装である、両端が弧を描く流麗な(ロッド)が置かれている。


(さっきはナターシャさんの警護とは言ってたけど、さて、本当にそれだけなのかな…?)


と、忘れ物を思い出したように、トーマが運転席から降り、進次の前にやってくる。


「必要があればここに連絡をくれ。相談料は取らんさ」


そう名刺を手渡し、進次が礼を言い終わるのも聞かずに運転席に踵を返す。親身なのか愛想がないのか、そのどちららとも取れない態度に困惑しながら、名刺を覗き込む。


(へえ、トーマさんって探偵なんだ)


進次が感心している間に、トーマのワンボックスカーのエンジンがかかり、駐車スペースから出ていく。ばいばーい、と窓から天真爛漫な女神が手を振り、その背を見送った。


「さて、天野くん。忘れ物だ。これは、君の命綱である大事なモノだ。肌身離さず持ち歩くように。いいね?」


振り替えると、クリウスが蓮剣の収められたアタッシュケースを進次に突き付けていた。

クリウスが知らないであろうとはいえ、父親のミトス武装を与えられた事実に複雑な感情を抱きながら、それを受け取る。


「不安か?」


アタッシュケースに目を伏せていた進次を心配するように、クリウスが進次の顔を覗き込む。

 不安は、やはりある。この手にある蓮剣の、抱えきれない程の重みも感じている。そして、今は---。


「ほんの、ほんのちょっぴりですけど、怖いです」


それは、叫びだすには程遠い、些細な恐怖。

 本当に、虚獣と戦えるのか。人々を守ることが、救うことができるのか。父の背中に、追いつくことができるのか。

「幸福の護人」に、なれるのだろうか---。

そんな不安に震える本心を、他ならぬ(クリウス)と、親友(ホムラ)の前だからこそさらけ出す。


「うん。その怖さを、よく覚えておくことだ。今は無理でも、いつか、その恐怖を上回る強い何かが、恐怖を飲み込んで糧にする力を与えてくれるはずだよ」


クリウスが進次の両肩を掴み、諭すように語りかける。それは、進次が[心の森]にいた頃に、進次自身に、義兄弟達に語りかけていた時と同じように。


「…なんだか懐かしいですね、先生。有り難うございます」


進次が気恥ずかしそうに微笑み、クリウスはその顔に満足そうに頷き、背を向ける。


「それじゃあ神山くん、天野くん。明日の訓練、遅れずに来るように。またな」


クリウスが甲虫を思わせる車に乗り込み、エンジンをかける。日常に帰る間際、一つクラクションを鳴らしながら車内でシュタッと手をあげ、クリウスの車は走り去って行った。


「さて、じゃあ入隊祝いに牛丼でも奢ってやるか!ほら進次、行くぜ」


エンジン音の余韻が消えやまぬうちに、焔が進次の好物の話を振る。未だこの胸の感情は拭えないが、それでも今は、そんな思いを洗い流そうとしてくれた友に感謝を込めながら、元気よく。


「マジで?じゃあダイストマト牛丼がいいな!皇帝盛(エンペラー)で!」


「おまっ、遠慮ねぇな……。皇帝盛(エンペラー)…まあいいだろう、受けてたつぜ」



 焔のバイクが、炎天を照り返すコンクリートジャングルの樹之幹区を切り裂く風となる。ふと進次が見上げたビルの屋上には、大々的に掲示された広告が見えた。



『あなたも伝説(ミトス)に! [澤館ミトス隊] 秋期隊員募集中』



 [ミトス]とは、元来古代ギリシアにおける、語り継がれてきた伝承・説話・伝説のことを指すミュトスが語源なのだとか。それらは人々が紡いできた、人間は、神々はかくありきと受け継がれてきた、信仰、思念、「想い」に他ならない。

 ミトスとは、これに対を成す人々築き上げてきた理論、真理、「理性」を、[ロゴス]を守るという、一種矛盾にも感じられる構想の上に立つ存在だ。

 しかし、これら「理」も「想」も共に人間に在る以上、どちらともなくこれは補完し合う。それが人間という種の正しきあり方、「理想」なのだ、とは古き時代の哲学者の言葉だが。


(幸福の護人、か)


それはひどく、「想」に寄った歪んだ願いだ。誰かの幸せを守りたい。それはひどく傲慢な、理論に欠如した独り善がりなのかもしれない。だが---。


(僕は、立ち上がらなきゃ。もう二度と---。)


大切な人を、[自分の手で殺めてしまわないように]。



太陽は南天にて煌々と輝く正午少し前。少年は夏の風に身を任せながら、もう見えなくなった広告看板の言葉を思う。

傲慢だが、いつか、この身を伝説へ捧げる、その日が訪れるまで---。


「僕は、戦うよ」








 報告書:観測対象No.37,800

作成日:2013年7月23日火曜日


対象、シークエンスMに突入。今後の■の推移、Mとしての活躍に要注視。秘められたる■■としてのポテンシャルは現在のところCランクと推測。更育成・軌道修正可能な範囲内。


 申請書:特異点947,700の動向


未だに発見に至らず。しかし霊基盤上は現界を確認済み。早急なる捜索・確保のための人員増強を要求する。


---以上。我らが至るべき■象の■■への道筋が開かれんことを----。


作成者:code name.花の女王

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