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大島サイクル営業中 2017年度  作者: 京丁椎
10月
99/200

郵便カブ①

大島サイクルにバイクが在るのは当たり前の事。

なのに、今日はどうしてギャラリーが多いのか?


(あたる)ちゃん。これ、郵便のバイクやんな?」

「郵便屋さんになるんか?」


赤いバイクを見つけた奥さまたちが聞いてくる。


「趣味で郵便局のバイクに乗るんやって。」

カブの世界は奥が深い。郵便カブならまだライトユーザーだと思う。


「犯罪に使うんと違うやろな?」


それやったらもう少し速いバイクにするだろう。

「犯罪に使わるとアカンから色は塗り替えて乗れって。」


「ほんでバラバラにしてるんか?」


「そうや。このままでコンビニに乗って行ったら、郵便局に苦情が来る。」


「あんたは色々する子やなぁ。」


「主婦ほどやないで。バイクだけやもん。」


バラバラにした郵便カブは高村ボデーに持って行く。


「で、何色に塗るんや?」

高村社長がこう言う時は塗りたい色が在る時だ。


「何色が良いですかね?」


「黄色やな。隠ぺい力が弱い。下地が勝負やな。」


「若い子の練習用ですか?」


「そうや。急ぐか?時間をくれたら安くでする。」


「じゃ、それで。」


幸い、郵政カブのエンジンは丁寧な整備がされており、

積み替える必要の無い物だった。


恐らく、前オーナーは整備をして売るつもりだったのだろう。

車体が塗装されている間は作業中断。


郵便カブを取りに行った2日間は何とも思わなかったが

今日は体が重く感じる。歳をとった気がする。


郵便カブは分解した分は別としてもう2台在る。

(さて、どう弄ろうか・・・。)


在庫にあるモンキーの社外品マフラーを付けようかとか

エンジンを積みかえてツーリング向けにするか等

色々考えるがまとまらない。


疲れているのだろう。幸い明日は定休日だ。

もう半日頑張ればゆっくり休める。


眠くてたまらない。コーヒーを飲んで必死にこらえていたが

いつの間にか眠ってしまった。


「おっちゃん。お~い。おっちゃ~ん。」

目を覚ますと理恵が顔を覗いていた。


「おお、いらっしゃい。コーヒーでも入れるわ。」


「ココアが良い。おっちゃん。どこか行ってたん?」


「おう。そこのバイクを取りに行ってた。珍しいやろ?」


「郵便局のバイクやん。何が珍しいん?古いん?」


「一般販売はしてないんやぞ。カブマニアのある意味頂点のモデルやぞ。」


「ふ~ん。で、お土産は?」

一般には販売していない特殊モデルでも、知らん者からすればこんなものだ。


「それより理恵、お前、勉強はどうなんや?」

土産はあるが、こいつ一人で来た時に出すと全部喰うから出さない。


「普通かな?で、お土産は?」


「みんなの分があるから明日おいで。」


「明日、店は休みやん。良いの?」


「部品整理を手伝ってくれ。欲しいもんが在ったらバイト代に

何個か持って行っても良いから。」


「わかった。みんなに伝えとく。」


ココアを飲みながら理恵が学校の様子を話す。

バイクを買いたい子が居るらしいので明日連れてくるかもしれないそうだ。


理恵を見送った後、シャッターを閉めて、工場の電源を落とした。

明日は部品整理だ。頑張ろう。




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