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大島サイクル営業中 2017年度  作者: 京丁椎
10月
97/200

大島はお出かけ中

フィクションです。登場する人物・団体・地名・施設等は全て架空の存在です。

実在する人物・団体・地名・施設等とは一切無関係です。

「何か面白いバイクは無いかなぁ。儲けが出んと困るけど・・・。」


と、言いつつ大島が観るのは『部品取り車』の欄。どうせバラバラにして直す。

直せなければ部品取りにする。書類さえあれば程度はそれなりで良い。


「お?・・・まとめて3台か。珍しいな。」

引取り限定とは言え安い。廃業するバイク店らしい。

少し遠いとはいえ行けない距離でもない。問題はどうやって持って帰るかだ。

素人では3台まとめて持って帰るのは難しいだろう。


「まぁ落札出来ればラッキーってところやな。」

相場よりはるかに安い金額で入札に加わった。


そんな事が有った数日後。パソコンのメールに

「おめでとうございます。あなたが落札者です」と来ていた。


出品者と連絡を取り、支払いの段取りを相談した。

早期の引取りを望んだ出品者に合せて平日の引取りとなった。


『10月18・19日は店主所用の為休業します。店主』


大島サイクル前でトラックがアイドリングしている。

化粧ステンレスで出来たシートキャリアに灯る『流れ星』

バンパーには『雪乃高嶋』『はぐれ鳥』の行燈が灯っている。


「大島ちゃん。ボチボチ行くか?」

「平井さん。出発進行!」

「おう!」


ザザ~ンと岩に波が当たる様な雰囲気を醸し出して

朝焼けの中、A・Tオートサービスの積載車、流れ星号が走り出した。


高速道路を快走するA・Tオートサービスの流れ星号。

40年ほど前の映画のBGMが流れるキャビンでおっさん2人が会話をしていた。


「頼んだぜ流れ星号。吠えろ4.9ディーゼルターボ!」


「平井さん!抑えて!抑えて!ところで、

 この型のキャンターって4.9ターボって在りましたっけ?」


「積み替えた。ローザから降ろした180馬力や。ミッションも6速」

デコトラで流行のマニ割はしていない。特製のステンレス製蛸足が独特の排気音(ビート)を奏でる。


「さすがA・Tオートサービス・・・何でも弄るなぁ」


「ところで、今回の仕入れやけど、何で50と70なんや?90は?」


「90はエンジンの土台が違うから在庫で修理出来ひんのや」


郵政カブは50・70は普通のカブとエンジンに互換性があるが、

90のみ昔の『ラージケース』と呼ばれる別系統のエンジンが積まれている。

大島の店にある部品では分解整備が出来ない。


「まぁ、カブに関してはお前の方が詳しいからな。1台寄こせよ。修理してからな」


「トラックのレンタル料に1台ね」


トラックは走り続け、ある田舎町のバイク店へ到着した。


その日の午後。いつもの仲良し4人組が張り紙を見ている。


「ありゃぁ?休業だって」

「しかたない。別の所に行こうか」

「マックでも行く?」

「俺、今日は金持って無ぇ」


「あれ?みんな、どうしたの?」

飲み物目当てで来た4人組に、やはりココアを飲みにやって来た葛城が声をかけた。


「あ、葛城さん♡こんにちはぁ♡」

「おじさんのコーヒーでおやつと思って来たんですけど・・・。」

「おじさん、今日はお休みですって。」

「留守らしいんだよな。何処に行ったんだろう?」


自転車屋へコーヒーを飲みに来るとはいかがなものかと思うが

実のところ葛城もおやつの時間の話し相手が欲しくて来た。


この子たちと話をしながら菓子をつまむのも悪くない。

「じゃあ、うちに来る?ちょっと狭いけど。」


「はぁい。お邪魔しまぁす♡」

「じゃあ、僕たちも。」


葛城を先頭に5台のバイクが着いたのは線路沿いのアパートだった。


ちゃぶ台とテレビがある質素な畳敷きの和室。

男性ならともかく20代前半の女性にしても質素な部屋に4人は通された。


「ごめんね~。あまり荷物を置くのが好きじゃないんだ~。」


コーヒーカップを運んできた葛城を見て皆驚いた。

普段はゆったりした男物の服を着ていたり皮ジャンを着ている葛城だが、

部屋着で体のラインが出ると女性らしいのだ。


「葛城さんのカブってマフラー変えました?音が違う様な・・・。」


「わかる?J製のマフラーに交換したの。」


「わかんねぇ。見た目なんか変わって無えし。」


「そこがポイント。見た目が変わらず性能アップ。音は控えめ。

 もう少しと思う所だけど必要にして十分な性能。これが大事。」


「でも、大島のおじさんは純正部品流用で改造するって言ってたのに。」


「最初は磯部さんのカブについてたんだけどね。磯部さんが『パンチが無い』

って別のマフラーにしてる所へタイミング良く行ったの。」


「磯部先生(せんせぇ)には特別サービスだ。おっちゃんも男だねぇ。」

「わたしのDio先生も特別部品だよ?」


「ところで、おっちゃんの所用って何かな?」


「さぁ?」


5人が集まっていた頃、大島と平井の二人はある田舎町の宿で露天風呂に入っていた。


「廃業する店の在庫処分か。ウチは息子(ぼうず)が継ぐから当分大丈夫やけどよ、

お前の所はどうするんや?身を固める気はないんか?」


「さぁ?どうなるんやろうな~」


「大石さんみたいに弟子が次ぐとか無いんか?」


「まぁ、ボチボチとね」


「そうか・・・」



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― 新着の感想 ―
[一言] 『御意見無用』とか、積車で箱はないから鳥居の上に『日本列島』『ひとり旅』『深夜警察』とかのアンドンもほしいところ。
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