バイク通学規定変更
轟のオイル交換についてきた理恵。何やら1枚のプリントを出してきました。
バイク通学の規則が変更になったようです。
高嶋高校では1枚のプリントがホームルームで配られたそうな。
「え~っとねぇ・・・おっちゃん。読むで。」
『オートバイ通学規定変更について』
1・原動機付自転車及び小型自動二輪免許(以下バイクと記す)
の取得は成績・素行を審査し、問題無い者のみ許可をする。
※平成29年11月以降の免許取得許可申請者から適用
2・原動機付自転車1種及び2種での通学は
学校より半径1.5㎞以上の通学距離の者のみ許可する。
※現在通学許可が出ている者は使用可能
平成29年11月以降のバイク通学申請者から適用
3・許可無く免許を取得及び通学に原動機付自転車で通学をした者は
停学及び退学処分とする。
『小型特殊免許の取得について』
小型特殊免許の取得に関しては自由とする。
ただし、通学での使用は許可しない。
以上
「・・・だって。美紀ちゃんの言ってた通りだったねぇ。」
プリントを読み上げながら呑気に大判焼きを頬張る理恵。
今日は轟さんのカブのオイル交換について来た。
1.5㎞か。自転車なら楽勝の距離だな。今都に自転車屋は無いけど。
「来年度は今都中から高嶋高へ入る子は減るんじゃない?
バイクに乗るために高嶋高校へ入学した子もいるしな。」
ドレンから落ちるオイルを眺めながら轟さんは続ける。
「それより、小型特殊ってなんやねん。」
通学に使うやつは居ないと思うが、規定にあることは仕方が無い。
今都は何をするか解らない『修羅の街』だからだ。
「小型特殊はトラクターとかコンバインの免許や。
今都の生徒に配慮したんやないか?田畑と自衛隊しか
無い町やしな。」
轟さんのカブはオーバーホールはしていない。鉄粉は無いけど
オイルの色は濃い。タールが溶けだしたか・・・そのうち
クラッチに溜まったスラッジだけでも取りたいところだ。
「それは知ってます。でも、わざわざ決める事?」
「決めんとアカン事情でもあったんやないか? おっさんは知らんけど。」
オイル交換を終えて一息つく。
ココアを入れて二人に渡す・・・って、理恵。大判焼き何個喰った!?
「理恵は食いしん坊やね~。」
轟さん・・・それで済ますのか? 男が引くくらい食ってるぞ。
「磯部先生なんか『生徒と同じ目線で』ってリトルカブに
乗り換えてしもたし。格好良かったのに。」
理恵はカバンから鯛焼きの詰まった箱を出した。
どれだけ喰うんだよ・・・。
「格好良かったのにね、リツコ先生。リトルカブ変えてから
スカートも長くなって男どもはガッカリしてる。」
それは残念だ・・・誠に遺憾に思う。
「|れもふぁ、ふふぃっほはふふぁいふふぁーふぉふぁふぁら
(でもさ、スリットが深いスカートだから)・・むぅ!」
言わんこっちゃない。鯛焼きを喉に詰めたな!
喰いながら話すからだ。お行儀が悪い。
「よしよし。飲み物で流そうね~。」
轟さんは妹の面倒を見るお姉ちゃんみたいだ。
「死ぬかと思った。」理恵はぜぃぜぃと息をしている。
「遅くなるから帰ろっか?」
「うん。おっちゃんご馳走さま。」
もしかすると、二人はウチの店の事が心配で来てくれたのかもしれない。
高嶋高校がバイク通学禁止になったら商売にならない。
バイクの販売台数が減った今では死活問題だ。
一部地域だけバイク通学は出来なくなったが仕方ない。
今都の学生が何に乗って学校に通うかはどうでも良い。
2人を見送りながら思うのだった。
理恵たちの通う高校は第2次ベビーブームの頃に駐輪場が整備され
生徒が減った今では小型バイクくらいなら余裕で収容できます。
トラクターを停めるほどのスペースはありません。
フィクションです。実在する人物・団体等とは無関係です。




