表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
大島サイクル営業中 2017年度  作者: 京丁椎
10月
93/200

見かけと違う1台と1人

リトルカブの登録の為に、市役所へ行った。

毎度の事ながら御役所仕事にはイライラする。


白ナンバーで登録。すぐに廃車。排気量変更の手続き

そして、やっと原動機付き自転車1種から原動機付き自転車2種登録。

ナンバー1枚が無駄ではないかと思うが一向に改善されない。


受け取ったナンバーは取り付ける前にクリヤー塗装をしておく。

何年間置いてあったか解らないナンバープレートは

日光に当たると急激に劣化して粉を吹く。その予防だ。


リトルカブは完成した。

緑のボデーと白いレッグシールドはいつものカブと同じだが、

小ぶりなキャリアや全体に少し丸い車体は何とも愛らしかった。

だが、大島の表情は冴えない。


「あのセクシーな磯部さんには似合わないのではないか?

でも、本人の好みをどうこう言うのは商売人として如何なものか?」


葛藤していた。


     ◆      ◆     ◆

送信先:大島 中

本文:リトルカブが完成しました。


大島から送られてきたシンプルなメールをニヤニヤしながら読むリツコ。

幸いここは保健室。どんな顔をしてメールを見ていようが誰もいない。


「帰りに寄ります。ちょっと遅くなりますけど良いですか?」

・・・送信。


すぐに返信が帰ってきた。

「お待ちしています。店が閉まっていたら携帯を鳴らしてください。」


帰りに寄ろう。幸い、今日の仕事は少ない。


退勤時間となり、リツコはいつもより少しだけ早足で駐輪場へ向かった。


いそいそと帰るリツコ。愛車ゼファーに跨り、イグニッションをONにする、

ある者はタイトミニのスカートから伸びる足に見惚れ

ある者は『男が出来たのではないか?』と勘繰る。

高嶋高校に居る男子全ての視線を一身に浴びるクールビューティー。


しかし、その中身は

「大島サイクルへレッツGo!かっ飛べゼファーちゃん♡頑張れ~!」

生徒と大差のないバイク女子だった。


違うのは自制心が在る所だろう。

大型バイクに乗っていてもスピードを出し過ぎない。

免許を汚すような乗り方は決してしない。


厳つい見かけだが、ゼファーではスピードを出すバイクでは無い気がする。

出せと言われれば時速200㎞くらい出そうな気はするが

目くじら立ててスロットルを捻るより排気量からくるゆとりを

楽しむ方が良い・・・そうリツコは思っている。


国道161号線をひた走り、すっかり暗くなった中、大島サイクルの到着した。

スーパーカブやモンキーが停めてある店に

ゼファーが並んでいるのを見ると大きなバイクだと思う。


乗っている時は全く重さなんか感じないのだが。


「こんばんは。リトルちゃんを見に来ました~。」

リツコが店に入ると


「おじさんはトイレに行ってますよ。ちょっと待ってですって。」

ココアを飲みながら葛城が出迎えた。


年甲斐もなくはしゃいでいるのを見られてしまった・・・。

前回は泣いている所、今回ははしゃぐ自分。

神は何故私の恥ずかしいところを彼に見せる?

大人の女としてこれ以上彼に醜態をさらすことは出来ない。

リツコは気を引き締めた。


「リトルカブ。可愛いですね~。」


「そうね。普段乗りに欲しかったから。丁度良かったわ。」


「私もカブなんですよ。普段のバイクが大きいから

小さくてかわいいのが良くて。」


リツコは今まで色々な男に言い寄られてきた。

男達のギラギラとした獲物を狙う猛獣の様な眼が怖くて

ずっと冷たくあしらってきた(そのおかげで独身である)が

この青年にはそれが無い。


「ゼファーは大好きだけど、お買い物やちょっとしたお出かけには重くて。

それに、そろそろ大事にしてあげないといけない時期ですから。」


「おじさんが作ったカブは良いですよ。長距離でもOKです。」


「そう。」

長距離を走れることを利用してツーリングのお誘いか・・・

やっぱり、この人も男なんだなぁ。でもこの人ならいいかな?


そんな事を思い始めた時、大島が店の奥から現れた。


「じゃあ、私はこれで。また何処かでお会いしましょうね。」

葛城は店を後にした。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ