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大島サイクル営業中 2017年度  作者: 京丁椎
10月
92/200

大島が張り切っているようです。

在庫のリトルカブが売れた。しかも妙齢の美女に。


大島も男である。美女には弱い。

妥協が必要と言ったが張り切ってしまう。


割れたレッグシールドや消耗品は交換。

エンジンは社外ミッションで4速化したカブ90用HA02。

今回はセル付きエンジンを積む。


キャブレターはカブ90の物を使うが、マフラーは社外品。

カブ90のノーマルマフラーが無かったから仕方が無い。

中古の物だ。オークションで売っても二束三文だろう。


メーターもカブ90用に交換した。リトルカブ用は60㎞までしか

表示しない。しかも30㎞/hを超えると誤差が大きい気がする。


フロントにキャリアを付けておく。カゴはどうしよう。

まぁ相談して、必要ならサービスで付けようか・・・。


(あたる)ちゃん。ご機嫌やねぇ。何か良い事でもあったんか?」

近所の婆ちゃんたちが聞いてくる。


「バイクが売れたんや~儲かるで~。」


「この前来てたベッピンさんか?」

婆さん・・・鋭いな。

「あんなべっぴんさんには彼氏が居るに決まってるがな。

目の保養でしかないで。眼福や。眼福。」


「あの()には彼氏が()らんと見た。(ばば)には見える。

(あたる)ちゃん。最後のチャンスやで。」


「最後も何もあったもんやないで。僕はバイクが女房。店が家。

仕事と趣味に生きるんやから。」


婆ちゃんが押す老人車の車軸にシリコンスプレーを吹き付ける。

軋んだ音を立てていた車輪が軽く回るようになった。


大島がご機嫌だったその頃、高嶋高校の図書館。


「♪~♪~♪~。」


「リツコ先生がご機嫌だ~。どうしたん?彼氏が出来た?」

遠慮もへったくれもない事を聞くのは理恵だ。


「バイクを買うの。まぁ、ある意味彼氏みたいなものね。」


「とうとう恋愛を諦めたのですね。」

亮二が真剣な顔をして冗談を言うが、


「恋愛は別で・・・素敵な人の出会いが在ったし・・。」

リツコは真っ赤になってうつむいた。


「白バイ隊員に声をかけられたの・・・素敵な・・・。」


「で、バイクは何を買うの?あのでっかいバイク売るの?」


「ううん。ゼファーはツーリング用にしてリトルカブを買うの。

バイク屋さんでチューニングしてもらってるのよ。」


「へ~リトルカブ。可愛らしいですね。」

貸し出し手続きを終えた速人が戻って来た。


「白バイさんが行くバイク屋さんなら間違い無いかな~って。

お店の人もお兄ちゃんみたいで安心だし。」


リツコは何度かバイク店で口説かれそうになった事が有る。

ゼファーを買った店では無いが、他の店では嫌な思いをした。


「良いわね。大島サイクル。実家にいるみたいで。」


「大島サイクル?私のDioもそこで買ったんですよ。

亮二以外は大島サイクルで買いました。」


「あなた達も?」


「ええ。理恵ちゃんの紹介です。」


「大島のおっちゃんは良い人やで。禿げてるけど。」

「そうですね。カレーも美味しいし、ジャム作ったりで家庭的ですね。」

「でも、禿げてるけどな。」

「本人曰く『俺は禿げてない。禿げかけているだけや』らしいけど」


酷い言われ様である。


「先生は何で大島のおっちゃんの店に?」


「湖周道路でナンパされたのよ。白バイ隊員に。

あなた達、知り合い?知り合いなら紹介してくれない?」


「お友達になりたいんですか?」


「あのねぇ。私、もう30よ。三十路よ。そろそろ結婚とかいろいろ

考えなきゃいけないでしょ?せっかく出会えたんだからこの機会に

・・・って何笑ってるのよ?」


このあと、1時間近く「いつまでも若いわけじゃない」とか

「一人酒は辛い」「いつまで乙女で居ればよいのか?」

などと愚痴を聞かされた4人は疲労困憊して家路につくことになった。


4人とも磯部に何か大切な事を言い忘れていた気がするのだが・・・


気にしない事にした。


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