大島が張り切っているようです。
在庫のリトルカブが売れた。しかも妙齢の美女に。
大島も男である。美女には弱い。
妥協が必要と言ったが張り切ってしまう。
割れたレッグシールドや消耗品は交換。
エンジンは社外ミッションで4速化したカブ90用HA02。
今回はセル付きエンジンを積む。
キャブレターはカブ90の物を使うが、マフラーは社外品。
カブ90のノーマルマフラーが無かったから仕方が無い。
中古の物だ。オークションで売っても二束三文だろう。
メーターもカブ90用に交換した。リトルカブ用は60㎞までしか
表示しない。しかも30㎞/hを超えると誤差が大きい気がする。
フロントにキャリアを付けておく。カゴはどうしよう。
まぁ相談して、必要ならサービスで付けようか・・・。
「中ちゃん。ご機嫌やねぇ。何か良い事でもあったんか?」
近所の婆ちゃんたちが聞いてくる。
「バイクが売れたんや~儲かるで~。」
「この前来てたベッピンさんか?」
婆さん・・・鋭いな。
「あんなべっぴんさんには彼氏が居るに決まってるがな。
目の保養でしかないで。眼福や。眼福。」
「あの娘には彼氏が居らんと見た。婆には見える。
中ちゃん。最後のチャンスやで。」
「最後も何もあったもんやないで。僕はバイクが女房。店が家。
仕事と趣味に生きるんやから。」
婆ちゃんが押す老人車の車軸にシリコンスプレーを吹き付ける。
軋んだ音を立てていた車輪が軽く回るようになった。
大島がご機嫌だったその頃、高嶋高校の図書館。
「♪~♪~♪~。」
「リツコ先生がご機嫌だ~。どうしたん?彼氏が出来た?」
遠慮もへったくれもない事を聞くのは理恵だ。
「バイクを買うの。まぁ、ある意味彼氏みたいなものね。」
「とうとう恋愛を諦めたのですね。」
亮二が真剣な顔をして冗談を言うが、
「恋愛は別で・・・素敵な人の出会いが在ったし・・。」
リツコは真っ赤になってうつむいた。
「白バイ隊員に声をかけられたの・・・素敵な・・・。」
「で、バイクは何を買うの?あのでっかいバイク売るの?」
「ううん。ゼファーはツーリング用にしてリトルカブを買うの。
バイク屋さんでチューニングしてもらってるのよ。」
「へ~リトルカブ。可愛らしいですね。」
貸し出し手続きを終えた速人が戻って来た。
「白バイさんが行くバイク屋さんなら間違い無いかな~って。
お店の人もお兄ちゃんみたいで安心だし。」
リツコは何度かバイク店で口説かれそうになった事が有る。
ゼファーを買った店では無いが、他の店では嫌な思いをした。
「良いわね。大島サイクル。実家にいるみたいで。」
「大島サイクル?私のDioもそこで買ったんですよ。
亮二以外は大島サイクルで買いました。」
「あなた達も?」
「ええ。理恵ちゃんの紹介です。」
「大島のおっちゃんは良い人やで。禿げてるけど。」
「そうですね。カレーも美味しいし、ジャム作ったりで家庭的ですね。」
「でも、禿げてるけどな。」
「本人曰く『俺は禿げてない。禿げかけているだけや』らしいけど」
酷い言われ様である。
「先生は何で大島のおっちゃんの店に?」
「湖周道路でナンパされたのよ。白バイ隊員に。
あなた達、知り合い?知り合いなら紹介してくれない?」
「お友達になりたいんですか?」
「あのねぇ。私、もう30よ。三十路よ。そろそろ結婚とかいろいろ
考えなきゃいけないでしょ?せっかく出会えたんだからこの機会に
・・・って何笑ってるのよ?」
このあと、1時間近く「いつまでも若いわけじゃない」とか
「一人酒は辛い」「いつまで乙女で居ればよいのか?」
などと愚痴を聞かされた4人は疲労困憊して家路につくことになった。
4人とも磯部に何か大切な事を言い忘れていた気がするのだが・・・
気にしない事にした。




