ゼファーの女
フィクションです。登場する人物・団体等は架空の存在です。
実在する人物・団体等とは無関係です。
気が付けば三十路。愛車ゼファー共々若くは無い。
老け込むつもりはないけれど250㎏を超える相棒は普段使いには重すぎる。
生徒が乗るモンキー。いくら位するのだろう?
スマホで調べると出てくる出てくる・・・
「げ!何でモンキーがこんな値段するのよ・・・。」
一時期ほどではないが生産終了後のホンダモンキーは高値安定。
最終型500台に45000件以上の応募があった事を
リツコは知らなかった。
「未登録新車が70万円?原付の値段じゃないよ・・・。」
中古でも程度が良ければ20万円近い。どうなっているんだ?
転売屋が値段を釣りあげているのだろうか?
試しに高校の近所にある店でも覗いてみるか。
・・・・で、覗こうとしたのだが・・・。
「こんな国産のポンコツは停めないでくれ!貧乏人はお断り!帰れ!」
と追い返されてしまった。
湖岸にゼファーを停めて琵琶湖を見ていたら景色が滲んできた。
「ポンコツじゃないもん。私の相棒だもん。ずっと一緒だもん。」
涙が止まらない。堪えても流れ出す。
そんなリツコに近付くバイクがいる。
音からすると4気筒。それもかなり大きなバイクだ。
「どうかしましたか?故障ですか?」
白バイ隊員が声をかけてきた。
「へ~ゼファー1100か・・・。厳ついのに乗っていますね。」
「もうライダーもバイクも歳を食ったポンコツなんですけどね。」
八つ当たり半分できつい言葉を返してしまう。
「何かあったんですか?良ければ話を聞きますよ。」
あんたに話す事なんかない。そう言って追い返そうとした目線の先に
・・・少女漫画から出て来たような美しい青年が居た。
ゼファーに乗り始めて約10年経ったこと。大きくて扱い辛い事。
普段乗りに小さなバイクを買おうとしている事。
そして、今都のバイク店でポンコツ呼ばわりされた事。
30女が初対面の(多分)年下相手に何をペラペラ喋っているのか・・・。
自分でも不思議に思っているが止まらない。
リツコは気付いていない・・・目の前の青年に恋をしている事を・・・。
親切な白バイ隊員はリツコが求めているバイクを売る店を紹介してくれた。
白バイ隊員の名前を聞こうとしたが言葉が出ない。
「ありがとう。」この一言で精一杯だった。
◆ ◆ ◆
「ゼファー1100?女の子で乗ってるんですか?凄いねぇ。」
「キレイなお姉さんでしたよ。アニメの何だったかに出てくる
女博士みたいでキリっとした感じのお姉さん。」
今日は葛城さんがご来店。カブのオイル交換をしながら話す。
「ゼファー?でっかいバイク?」
「アニメに出てくる女博士?」
理恵と速人が顔を見合わせている。
・・・そんな事より俺は理恵の腹の中が気になる。
特大どら焼きを8個食べて大判焼きまで食べようとしている。
何処に入るのか不思議だ。
どら焼きが異世界に転移しているのではないかと思えて仕方が無い。
「あれだけ艶っぽい女性になるにはどうすれば良いのやら。」
葛城さんが腕を組んで考え出す。残念。その姿がイケメンだ。
「スカートでも履いてみるとか?」
スカートを履いても『湖岸のお猿』って呼ばれてる理恵が言ってもな。
「保健室の先生に似てますね。泣き黒子は無かったですか?」
速人、お前はこの中で一番普通だ。このまま素直に育てよ。
「ん~在った様な無かった様な・・・」
ともかく、葛城さんの紹介で新しいお客さんが来るみたいだ。
小さなバイクと言えばモンキー・ゴリラ・Daxそしてカブか。
カワサキだったらKSR110とかかな?
そうなると別の店を紹介しないと。
そういえばリトルカブを仕入れたんだった。
試しに見てもらおうかな。
モンキー最終生産車70万円!スゲ~。




