部品待ちでお喋り
大島サイクルでは一般に言うカスタムは受け付けていません。
※この作品はフィクションであり、登場する人物・地名・施設・団体等は架空の存在です。
実在する人物・地名・施設・団体等とは一切関係ありません
「バイクが欲しくて市の北側から廻っていたら声をかけられて、
新車は買えないって言ったら連れて行かれて・・・。」
速人がポツポツと語り始めた。
「まぁ理恵みたいな気の強い奴なら断れても
速人みたいなおとなしいと付け入られるかもな。」
「しばらくは動いていたんですけど調子が悪くなって
修理に行くたびに変になって。」
完全にカモにされたか・・・
「そのうち保障外ですとか言われてボラれるようになった。違うか?」
速人はうなずいた。
「で、これを付けなきゃダメといわれて、結局あれこれ付けて
ゴチャゴチャになった。どうにもならなくなった途端に
金の切れ目が縁の切れ目とばかりに怒鳴られて追い返された・・・。
店の名前は何たらショップTatani・・・どうや?正解やろ?」
「速人がバイクを買ったのってあの店?最悪・・・。」
理恵も酷い接客を受けたからな。要らん金を使わんかっただけお前はマシだ。
速人はすっかりうなだれている。
怖いけど大事な話もしておくか。
「あの手の店は詐欺まがいの事をして金稼ぎ。文句を言えば営業妨害で、
他所で店の評判を言えば名誉棄損で訴えて示談で儲けるはずや。
だからお前等は何も言うな。絶対負ける。世の中そんなもんや。」
「そこで・・・だ。速人のバイクは直す前と全く違う形にしようと思う。
Tataniのモンキーは雑誌に出てる派手なカスタムや。実にわかりやすい。
逆にうちのカスタムは外見が殆ど変わらん。知らんもんが見たらノーマルや。」
2人ともよく解らんみたいな顔をしているが説明を続ける。
「いかにも金をかけてカスタムした速そうなバイクを
普通のモンキーなりゴリラが追い抜いたら・・・・。」
速人が「スピード違反で捕まる。」
「なんでやねんっ!」理恵が突っ込む。
あのなぁ。二人とも、ええ歳したオッサンが熱く語ってるんやから聞けよ。
ボケとツッコミは良かったけど、今はそうじゃない。
「店の評判は落ちるし、何と言っても・・・面白いやろ?」
不服そうに理恵が話し出した。
「でも、どんな事するん?おっちゃん『うちの店は90ccまで』って
言ってたやん。あの店のエンジンって大きいんとちゃうん?」
「降ろしたエンジンは使い物にならないんですよね?」
と、速人が続く。
「うちの店は90㏄まで。それ以上は需要が無いのと作るのが面倒だから。
商売にならないけど趣味で作ったエンジンはある。これが97㏄。」
といって木箱を取り出す。
「カブ100EXの廃車が出た時に取っておいたエンジンを分解して
セル無しのクランクケースを組み込んだスペシャルや。」
大島はノーマルのモンキー・ゴリラのスタイルが好きです。
90㏄のエンジンはヘッドカバーのフィンを削って載せています。
ノーマルのフェンダーを使いたいからです。