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大島サイクル営業中 2017年度  作者: 京丁椎
10月
88/200

理恵、キャブレターを欲しがる。

毎朝、遅刻寸前で学校へ滑り込む理恵とゴリラの名コンビ。

もう少し余裕をもって通学するために理恵が考えた策は・・・


フィクションです。登場する人物・団体・地名・施設等は全て架空の存在です。

実在する人物・団体・地名・施設等とは一切無関係です。

「モンキーのパワーアップはビッグキャブから・・・ふ~ん。」


理恵はゴロゴロしながらバイク雑誌を読んでいた。


「ゴリラが速くなったら、通学が楽になるんかな?」

とんでもないことを思いついたようだが、キャブレターの値段を見て

ため息をついている。2万円を超えるキャブレターキットは

理恵の財布からは出そうになかった。


「お小遣いを貯めるしかないなぁ。何か臨時収入は無いかなぁ?」


そんな事を思っていたところへ舞い込んだ大島サイクルの手伝い。

オークションの手伝いで思わぬ臨時収入を得た。

キャブレターを買っておつりがくる金額。


理恵はパワーアップを依頼するために大島サイクルを訪れた。


「おっちゃ~ん。お願いが有るんだけどなぁ♡」


「なんや。これは売らへんぞ。」

これは売らないと決めたからには理恵の頼みでも売らない。

モトコンポを畳みながら答えると予想外の返事が来た。


「ビッグキャブが欲しいんだけどなぁ。」


ホンダのモンキー・ゴリラは比較的小さな|キャブレター(気化器)が付いている。

車体が小さいからパワーを抑える為とかスピードが出ない様に

意図的にしているとか言われている。


メカに興味を持つのは良い事だ。だが、何故換えたいのかを聞かないと

望み通りの改造は出来ない。


インターネットでキャブレターの事を勉強して、理恵の使用目的に

合ったキャブレターが有れば何とでもする。と答えておいた。


『予算で使えるのは3万円』

そう決めて理恵は速人を巻き込んでキャブレター探しを始めた。


「必要かなぁ?」速人は疑問な様だが理恵は引かない。


「私が遅刻しないためにゴリラを速くするの!」


遅刻こそしていないが理恵は毎朝爆走して通学している。

余りの爆走っぷりを見た生徒たちから『湖岸のお猿』なんて呼ばれている。

必死の形相でゴリラにしがみ付いているが、実際はそれほど速くない。

それ故に微笑ましい姿であるのだが・・・。


「もう5分早く起きれば済むんじゃないの?」

速人に正論を突きつけられて、理恵は反撃できなかった。


キャブレターはガソリンを空気と混ぜて混合気を作る部品。

小さすぎればエンジンが求める混合気を作りきれず力が出ない。

大きすぎればエンジンが吸う力の不足で低回転時に気難しくなる。

厄介な部品なのだ。


どうやらケイヒンというメーカーのPCキャブレターが

セッティングが容易で扱いやすいと解った。

理恵のゴリラはボアアップで75㏄。丁度良いらしい。

18と20が有るが大きい方が良いだろうと理恵は思った。


「おっちゃ~ん。決まった!ケイヒンのPC20ってキャブレターにする!」


「?」


「解らんの?PC20ってキャブレター。有名なキャブレターやんな?」


「何でまたPC20や?不調か?」


「だから、速くしたいし、扱いやすいって評判のPC20に決めたの。」


「あのな、おっさんは『また』って言うたやろ?」


「うん。」


「今のキャブレターは扱いやすいやろ?」


「うん?」


「お前のゴリラに付いてるのはケイヒンPC20っていうビッグキャブや。」


『チューニングと言うのはトータルのバランスを取って行うのが大事。』

他のチューナーやプライベーターはどう考えているか知らないが、

大島はそのように考えている。


一か所を良くしただけではバランスが崩れたりセッティングが出しにくかったりする。


理恵のゴリラは扱いやすい少し大き目なキャブレターと、少しだけ大きな排気量。

少し排気ガスの通りが良いマフラーで全体的に手が入れられているのだった。


ノーマルから改造するなら1か所ずつ交換していくのも悪くない。

だが、理恵のゴリラはフレームだけの状態から部品を集めて組んだ。

交換もへったくれもない。交換するべきところは最初から交換してある。


「じゃあ、こっちのD社の静音タイプのスポーツマフラーは?」


「シンナーで拭いたら同じマフラーになるで。」


「このレーシングCDIっていうのは?」


「エイプ100のCDIで可変進角にしてある。エンジンかけやすいやろ?」


理恵は組み込めば速くなると思った部品を挙げていったが全て装着済みだった。

結局、大島が勧めたのはイグニッションコイルの交換。

トルクは太くなって燃費が良くなった。加速も良くなった気はする。


でも、トップスピードは変わらない。

エンジンが無理せずに回り、回り過ぎない絶妙なギヤ比。

これ以上を求めるなら更なるパワーアップをするしかない。


「わ~ん!遅刻する~!」


ポコポコポコポンッポンポンポンポンポンッポポポポポポポ・・・・

『もう5分早く起きなさい』とでも言う様にゴリラが走り出す。


今朝も湖西路に理恵とゴリラの叫び声が響くのだった。




この後、大きな改造をする事無く理恵とゴリラは

『ホンダモンキー生誕60周年』を迎えることになった。

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