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大島サイクル営業中 2017年度  作者: 京丁椎
9月
79/200

全部盛りのカブ

フィクションです。登場する人物・団体等は架空のものです。

実在する人物・団体等とは無関係です。

カフェカブin京都というスーパーカブのイベントがある。

雑誌で知ったのだが今年(2017年)は大津の湖岸であったらしい。


普段使っている会場が工事資材置き場になった為、仕方なくだったそうだが

景色が良かったとか、飯を食う所が近くて良かった

浜風が涼しかった等、案外好評だったらしい。

滋賀県に住む者としては嬉しい話だ。


そんなカフェカブ京都の様子がバイク誌で出ていた。

誌面に載っている色々なカスタムカブ見ていたら創作意欲が湧いてきた。


あまりお金は掛けたくないから在庫部品で何か作ってみよう。


そんな風に思って新品フレームを引っ張り出してきたわけだが・・・・。


「で、こんなもんが出来た訳か。」

呆れた安井さんの視線の先にはカブがある。誰がどう見てもカブだ。


「新品フレームにカブ100改107㏄のエンジン。二次遠心クラッチの4速。

カスタムのアンチリフトフォークでヘッドライトは丸目。

4ℓモンキーのフィンランドテール・・・セルも有るんか?

シフトインジケータにタコメーター。タイヤもハイグリップな奴やな。

マフラーはR社でリヤサスはT社。スイングアームはアルミのC社製・・・。」


我ながら贅沢なカブを作ってしまったと思う。


「で、ナンボで売りたいんや。ざっと見ても20万円はもらわんと損やろ?」


うう・・・安井さん・・・鋭い所を突く。


「25万円・・・。」


「アホか!型遅れのカブに25万も出せるか!」


まぁええわ。売れんかったら自分で乗るもん。

やりすぎたかな。うん、やり過ぎやな。


「まぁ、知り合いに声をかけとくわ。興味がある奴が居るかもしれんし。」

ぶつくさ言いながら安井さんが帰っていく。


よろしく~。はぁ。我ながら馬鹿なことをした。

触ってるうちに楽しくなって気が付けば全部盛り。

やはりカスタムは自分のバイクでやるもんだ。販売車でやるもんじゃない。

明日からは気を引き締めて商売しよう。


何人かのお客さんが話のタネにカブを見に来たが、購入には至らなかった。


高額な部品を外して普通のカブにして売り出すかと思い始めた時、

現われたのだ。25万円も払ってカブを買おうとするお客さんが。

しかも知った顔だ。


「安井さんも大島さんのところのお客さんなんですか?」

ひょっこり現れたのは対岸のバイク屋さんの整備主任、中村さんだ。


「ええ、昔から世話になってまして。頭が上がらんのです。」


「それはともかく。カブを見せてください。」


同業者に自分の仕事を見られるのは緊張する。

「フレームの程度が良いですね。」

フレームは新品だと伝えると驚いていた。

「キッチリ整備が出来ているのが分かります。」


しばらく各所を点検していた中村さんは

「よし。これで通勤したら楽しそうや。買います!」

即金で買ってくれた。


さかのぼること数日前。

ツーリングをしていた安井さんに中村さんが声をかけたらしい。

意気投合してお互いの連絡先を交換。


「モンキーを買おうとしたら新車の抽選は外れて、中古でも値上がり。

ボロでいいから安くで売ってる店は無いですかね?」


「カブやったら知り合いの店に面白いのがあるけどな。」


みたいな会話からウチの店の話になったそうな。


中村さんはプロ。慣らし運転中のオイル交換は自分でやるとの事だったので

その分、少しだけ値引きした。登録も自分でやってくれるから非常に楽だ。

保証もいらないと言われたけれど、それに関しては辞退した。

自分の仕事に対する責任と言うか・・・そんな訳だ。


軽トラックにラダー持参で来てくれたので積み込みも楽だった。


「飽きたら買取しますよ(笑)」

「飽きませんよ(笑)」

そんな会話をして中村さんは帰っていった。


      ◆      ◆      ◆

「なんだかすごいカブですねぇ」

「うん。キャブレター時代のカブの集大成やな。」

中村の勤めるバイク店でカブをみた整備士たちが驚いていた。


ギヤを操作すればきびきび動くがズボラな操作でも低回転から粘り普通に走る。

フロントフォークが50カスタム用のアンチリフトになっているので

カブ特有のブレーキング時のフロントが上がる動きが無い。

スーパーカブの安楽さにスポーツ性を足したツアラーなのだ。


「同じ高嶋市のバイク屋でもTataniと大違いっすね。」

若い整備士の感想を中村は否定しなかった。


「ホンマになぁ。Tataniは酷い店やなぁ。」






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