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大島サイクル営業中 2017年度  作者: 京丁椎
9月
76/200

祖母から孫へ

轟さんの家にカブの修理が終わった事を電話した次の日。


「お届け物で~す。」

大島サイクルの店先に配達便のトラックが止められた。


「はい、ハンコ。それと署名と代金ね」

大きな箱が4個トラックから降ろされる。

「今回は大荷物ですね~。バイクの部品ですか?」

流れる汗を拭きながらドライバーが大島に尋ねる。


「フレームや。ホンダ純正の新品のフレーム。」

配達の兄ちゃんに缶コーヒーを手渡しながら答える。


「へ~買えるんですね。フレームって。」


「ややこしい手続きが有るし割に合わんけどな。」

タガネでフレームナンバーを消し、石刷りと注文書類を

メーカーに送って打刻済みの新品フレームを送ってもらう。


口で言うのは簡単だが実際は面倒くさい。フレーム自体が

カブの部品取り車くらいの値段がするし、それに部品代や

工賃を足すと直すかどうか躊躇われる金額だ。


フレームは倉庫に片付けて暇な時に形にすることにした。

商売としては成り立たないが、趣味として組み立てる。

組み立てたら中古車として店に並べるつもりだ。


そんな事を考えているうちに、学校帰りの美紀ちゃんが

カブを引取りに来てくれた。


乗って帰るつもりだったらしく、ヘルメットと自賠責保険の

書類は用意しておいてくれた。


「ニュートラルを確認して、チョークを引いて・・・」

セルを回すと簡単にエンジンがかかった。


アイドリングは安定している。


「お婆ちゃんが亡くなって、何年も放っておいたのに動くんですね。」


感心しているが、2~3年放置してあるカブを直すのはよくあることだ。

今回はまだマシな部類だったと思う。


「轟さんのお婆さんはおとなしい乗り方やったからね。

エンジンオイルも盆と正月に換えてくれてたし。」


代金を貰い領収書を切る。

予算の範囲内だけど、出来る限り点検修理してあるから

安心して乗ってほしい。


「お爺さんと一緒に居る気がするって言って乗ってたんです。」

祖母から孫へ。世代を超えて走り続けるスーパーカブ。


シリーズ累計1億台・・・そのうちの1台が再び走り出した。




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