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大島サイクル営業中 2017年度  作者: 京丁椎
9月
74/200

祖父の形見

田畑の多い高嶋市安曇河町。見回りにスーパーカブを使う高齢者を多く見ます。


軽トラの普及でリヤカーを引いて走るスーパーカブは見なくなりました。


・・・という設定。

誰が言ったか知らないが、『バイクはカブに始まりカブに終わる』

という格言だか確言がある。


バイクに不慣れな初心者や体力の落ちた老人を受け入れるスーパーカブ。

祖父や祖母が他界した後、納屋から孫が引っ張り出してくることも多い様で・・・。


「すいません。このカブって直りますか?」

夏休み中に免許を取ったのであろう。大島サイクルを訪れる学生がいた。


「白藤さんから聞いてまっせ。轟さんのお孫さんやな。とりあえず見てみましょ。」

直らないバイクなど無いが、それも予算次第。

予算が折り合わなければ廃車も有りうるが、カブでそれは少ない。

大概がキャブレターの掃除とオイル交換をして新しいガソリンを入れれば

好不調は有れど『動かない』ことはほぼ(・・)無い。


◆      ◆      ◆


「お爺さんと一緒に居るような気になる。」と

祖父が遺したカブに乗り田や畑を見回りしていた祖母は

夏風邪をこじらせて亡くなった。


遺品を整理し、カブも処分される所だった。

だが父親が「爺さんと婆さんの形見でもあるし、そのうち美紀が

通学で乗るかもしれない。」と反対した。


納屋が有ることが幸いしてカブは保存されることになった。

(税金が掛かるのでナンバーは返納した。)


老人にしては長身だった祖父。反対に小柄で丸っこかった祖母。

2人が乗ったカブはその時からナンバーを切られ納屋で眠りについた。


それから3年。中学生だった美紀(みき)はバイク通学可能な

高嶋高校へ通う事になり、夏休みに小型限定だが自動2輪免許を取った。

免許を取ったは良いが、教習所通いで随分お金を使ってしまった。


可愛いバイクが乗りたくてパソコンでいろいろ探すが予算内に収まる物が無い。


「婆さんが乗っていたアレが有るやろ?直して乗れ。」

と父親に言われたのだが、美紀は機械いじりは得意ではない。


さて、免許を取ったからにはバイクで通学したい。

だが金は無い。祖母のバイクは有るが動かない。


「免許取れたから、バイク通学しようと思うんだよね。」

バイク通学をしている同級生に何となく話した。


「バイク買うの?」


「お爺ちゃんとお婆ちゃんが乗ってたバイクが有るけど・・・

お婆ちゃんが死んでから動かしてない。」


「私の行ってる店、紹介しよっか?」


「うん。お願い。」


納屋から出したカブはぼろ布のカバーが掛けてあったが埃で真っ白だった。

汚いままのバイクは触りたくない。ホースで水をかけながら

ブラシで洗うと祖母が乗っていた頃と変わらない姿になった。


タイヤはひび割れてボロボロみたいだがパンクはしていないらしい。

ペシャンコだったタイヤに自転車の空気入れで空気を入れると

押して動かすくらいは出来るようになった。


キーを捻っても全くランプは点かない。

「とりあえず理恵の言ってた店に行くか。」


◆       ◆       ◆


「これは、すぐには直らんねぇ。」

予想通りの答えだ。


「どの位かかります?別のバイクを買う方が良いですか?」


「急ぐなら4万円くらい欲しいけど、待ってくれるなら3万5千円。

その代わり1週間欲しいかな?」


3万5千円で調子良く動くバイクは見つからないだろう。

少し迷ったが美紀は修理を頼むことにした。


(とどろき) 美紀(みき)

理恵・速人の同級生。小学校は違うが中学では同じクラスになった事が有る。

地味な顔つきだがスタイルが良い。化粧で化けるタイプ。

身長165cm。長身と大きな胸がコンプレックス。


運転時の条件:眼鏡などを使用

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