理恵・挑戦を受ける
フィクションです。実在する人物・団体等とは関係ありません。
作品中に速度違反の表現が有ります。作者はスピード違反は推奨しません。
公道では適切なスピードで安全運転を。作者からのお願いです。
放課後、理恵たち4人と他の同級生が駐輪場に集まっていると
案の定、大村が声をかけてきた。
「おい!『湖岸のお猿』俺と勝負しろ!」
何とも工夫が無い・・・皆が呆れていた。
「良いですよ~大村先輩♡ギャラリーをたくさんお願いしますね♡」
愛らしく理恵が答えるのを見て皆、吐き気を催した。
「国道161号線。最高速重視で勝負しましょう♡」
よりによって最高速勝負?大村のDAXは車高短の族仕様。
カーブの多い道なら勝機があるのに。
「日は指定する。首を洗って待っとけよ!」
大村は一言吠えて去って行った。
「ショック~私って『湖岸のお猿』?酷いよね~。」
呑気に言う理恵を3人は不思議そうに見ている。
「お前・・・俺が言った事を忘れたんか?」
亮二は怒りに震えながら言った。
「法定速度内で走るのが気持ちいい・・・だよね。
忘れてないよ~馬鹿じゃないもん。実はね・・・」
理恵から作戦を聞いた3人は驚愕した。
「だから、ギャラリーが多い方が良いの。」
(((お・・・恐ろしい娘っ!)))
ニコニコと微笑む理恵を見て3人は思うのだった。
◆ ◆ ◆
理恵と速人には「競走なんかするな」的な事を言ったが、
大島自身は競走は好きだった。
ただし、それはサーキット内でのこと。
『競争はサーキットでする』が信条の大島にとって
公道でのレースは周囲に危険をまき散らすだけの愚行としか思えない。
レース用にカリカリのチューニングをした事はある。
しかし、それによりエンジンの寿命は確実に縮む。
もう古いスーパーカブのエンジンは製造されていない。
モンキーのエンジンだってキャブレター時代のエンジンは
タマ数は減っている。
キャブレター時代の昔ながらのシンプルなエンジンが
生産中止となった時、
「レースで得た技術で壊れにくいエンジンにしよう。」
心に決めた。
学生にとってバイクは大事な足代わりであり
決して安い買い物ではない。
小遣いやお年玉を長年貯めて買ったバイクがすぐ壊れては
気の毒だ。
必死にバイトをして買ったバイクを壊して泣く者も見てきた。
だから、せめて自分の所へ来たカブたちは壊れない様に組む。
「刺激が無い」「寝惚けたようなパワー」と言われる事はある。
でも気にしない。パワーやスピードだけがバイクの魅力じゃないのだから。
◆ ◆ ◆
次の日、大村は対決の日を指定してきた。
「はぁい♡ギャラリーも一杯お願いしますね~♡」
普段と全く違う理恵に3人を除く周囲の同級生は驚いた。
理恵はスマホで何やらやっている。
「フンフ~ン♪葛城さ~ん♪」
機嫌は良さ気だが眼が笑っていないのを3人は見逃さなかった。
理恵のゴリラの足周りはフロントのインナーフォークとリヤサスを換えてあります。
法定最高速度+α位までなら普通に走ることは出来ます。
それ以上のスピードだと危なっかしくて走れない筈です。
大島の手によってスピードを出し過ぎると敢えて『怖い』と感じる様に、
自然とスピードを出し過ぎない様にセッティングされています。
競争には向きません。
そんなゴリラで何をするのやら?




