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大島サイクル営業中 2017年度  作者: 京丁椎
9月
71/200

プライベーター大村

※この物語はフィクションです。実在の人物・団体・地名等とは関係ありません。

大村(だいむら)公民館長さんのおかげで市のバスを格安で

借りる事が出来ました。今回の旅行はレンタカー代が

浮いた分、呑みましょう!かんぱ~い!」


窓から空になったワンカップ日本酒の瓶や缶ビールの

空き缶が投げ捨てられライダーやランナー、そしてサイクリストにぶつかる。

割れた瓶で怪我をする者、パンクする自転車・・・。


バスに書かれた『高嶋市』の文字を見た誰かが呟いた

「税金で観光バスを動かしてるんか・・・酷いね・・・。」


高嶋市では市役所のバスを市民活動・研修・福祉の

目的で無料(・・)で貸し出している。


本来は旅行などには使えないが、公民館主催ならば市民活動と称して

公務として借りる事は容易だ。借りればこちらの物。

活動自体に監査も確認も無い。


車内では飲食禁止・飲酒禁止だが関係ない。

文句を言う運転手は市役所に苦情を入れて辞めさせてやれば良い。

行き先は一応申請するが関係ない。


ポチ袋に2~3千円入れて運転手に渡せば何処にでも行く。

過去には受け取らずに「申請に無い所へは行けません。」

なんて正義感の強い運転手がいたが市役所に言って辞めさせた。


クビになるより賄賂を貰って仕事を続ける方が良いのだろう。


何せ我々は栄光の今都町民なのだ。

高貴な者へ下賤なものが物申すなどもっての外だ。


宴会やグルメツアーは親睦会・交流会・食育教育。

グラウンドゴルフ・山歩きなら体育事業推進か健康福祉事業。

老人会の旅行なら福祉事業。風俗店は青少年の健全教育・・・


特に福祉事業の場合はやり放題だ。認知症の老人なら何をしても許される。

福祉の御旗のもとにおいては何者も文句をいう事は出来ないのだ。


使う側のメリットは多い。昨今のレンタカー代値上がりに対し

市のバスを借りるのに必要なのは公民館長へのお礼のみ・・・

レンタカーを借りるのと比べれば約3分の1だ。


金銭的なお礼は公民館長のちょっとした役得・・・


手間もかからず元手も要らず。申請書を書く時間は1枚5分かからない。


1回あたり2~3万円。月当たり40万円近い臨時収入だ。


(今都は金持ちで一番税金を納めている。市の財産は今都市民が使って当然。)


息子のバイク資金の為、公民館長の大村(だいむら)は今日も

副業と化したレンタカー業務にいそしんでいた。


◆      ◆      ◆

「お届け物で~す。」

大村(だいむら)家に注文していたエンジンが届いた。


「これで高嶋高校最速だ~!ギャハハハハ~!」

大村(だいむら)家に笑い声が響く。


幸い海外製とはいえ日本の出品者から購入した事も有って

配線は無事に繋ぐ事が出来た。

エンジンオイルは入っていないと説明書に有ったので

レーシングタイプと書いてあるオイルを入れておいた。


エンジンを始動するためにキックペダルを踏み込むと

今までのエンジンよりも排気量が大きくなっているからだろう。

非常に踏みごたえがある。


キャブレターやマフラーはパワーが出る様に有名なブランドで揃えた。


ズドン!ボンボンボンボン・・・


豪快な音を立ててエンジンはアイドリングした。

「勝てる!これで『湖岸のお猿』に勝てる!」


栄光の今都(いまづ)市民の顔に泥を塗った安曇河(びんぼうまち)の奴は許さない。

復習に燃える大村(だいむら)は夜空に向かって高笑いを響かせた。


近所の家から苦情が来た。


◆       ◆       ◆

次の日、登校した大村(だいむら)は注目されて有頂天だった。


皆が見る前で

「1年の白藤理恵、『湖岸のお猿』を撃墜するぜ~!」と

高らかに宣言する。


「理恵ちゃん。あんなこと言ってるけど、相手にしたらアカンで。」

「あんな奴放っておけ!」

「無視、無視。負けるよりグリグリ回避。」

綾・亮二・速人に言われるが、理恵は携帯の画面を見ている。


「ん~。挑戦くらい、いくらでも受けるよ~。」

ニコニコと微笑む理恵。

「挑戦は受けるけど、グリグリは受けたくないな~。」


何か考えがある様だ。この時3人には理恵が何を企んでいるのか解らなかった。

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