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大島サイクル営業中 2017年度  作者: 京丁椎
9月
70/200

亮二・ゴリラに乗る

※この物語はフィクションです。実在する人物・団体とは関係ありません。

「ヤンチャ?誰が?」

葛城さんが眉を顰める。


「ウチのお客さんの理恵ですわ。競走を仕掛けられたそうで。」

葛城さんの目つきが怖い。仕事モードになったかな?


「よーいドンで加速中に相手が故障して終了したそうで。」


「・・・若いですね。」


「そうですね。」


「相手はどんなバイクですか?」


「DAXやそうで。猿と相性が悪い名前ですな。」


「解りました。見かけたら注意しておきます。」


「理恵にはお仕置きをしておきましたんで、もうしない筈ですけどね。」

拳骨の中指を立ててグリグリのポーズを見せる。


「漫画でありましたね。幼稚園児の・・・」


また来ますと言って葛城さんは帰っていった。


恐らく、Tataniに関しては警察が動くだろう。

どうなるかは解らないが我々は見ている事しか出来ない.


◆      ◆      ◆


放課後の高嶋高校。図書室にはいつものメンツが揃っている。


「・・・と、いう訳で大村先輩は無視しろってさ。」

珍しく神妙な面持ちで理恵が言う。速人も青い顔をして頷く。


「グリグリって昭和の時代じゃあるまいし・・・。」

呆れる亮二に速人が

「この世の物と思えないほど痛い。」

と答える。


何を思ったのだろう。ふと、亮二が

「ところでさ、お前のゴリラに一回乗らせてくれない?

前から思ってたんだけどさ、普通に走ってるよな。」

と理恵に聞きだした。


「ん?いいけど何で?」


「理恵と速人のモンキーは妙に安定して走ってるんだよな。

普通はもっと不安定だと思うんだ。」


「どうしよっかな?」

悩む理恵。

(亮二のエイプは足が着かないんだよね。クラッチも有るし。)


「じゃあ、亮二は私のゴリラに乗って、速人は亮二のエイプに乗ってよ。

私は速人のモンキーに乗る。それで帰らない?」


速人は理恵に微笑んで言った。

「僕は足が着くからエイプでOK!」


「・・・・・。」

(くそ~完全に読まれてる。)


◆      ◆      ◆

(やっぱり(ちい)せぇな。)

見た目が小さなゴリラは乗っても小さい。

身長167センチの亮二がシートに跨ると踵が浮かない。

踵はべったり地面に着き、膝に余裕があるくらいだ。

装備は必要最小限。セルも無い。


「小さい割に窮屈じゃないんだよな。」

何となく口に出たひと言。


ホンダはモンキーをキャンプやレジャーの場へ持って行くバイクと

して開発したが、ゴリラはレジャーの場へ乗っていくというコンセプトで

出来たバイク。9ℓも入るガソリンタンクと乗り心地の良い

厚めのシート。そして自然なポジションとなるハンドル。


亮二はホンダの思惑通りの感想を述べた。


理恵にとってシートポジションだけならモンキーの方が良い。

だが、小猿の様に活発な理恵でも女の子なのだ。

分厚いシートでふんわりと移動したい時は毎月ある。

『そのうち大きくなるかもしれないから。』と

大島に言われて買ったゴリラ。今では感謝している。


キックペダルを踏み、エンジンを始動させる。

チョークを引こうか迷ったが、暑い時期だ。

かからなければ引いてもう一度キックするかと思ったが

スポンと気の抜けた音を立ててエンジンはかかった。


スポンッ・ポンポンポンポン


カブのエンジンだから当然だが、カブと同じエンジン音がする。


「じゃぁ俺、先行するわ。」

ギヤを1速に入れ走り出す。クラッチが無いのが妙だ。


高校から湖岸道路へ走り出す。

街中では3速までしか使わない。4速は巡航ギヤか。

3速で走っていると信号で止まる。

ニュートラルに戻すのが面倒だがよく考えれば

遠心クラッチだ。ニュートラルにしなくても1速に

入れておけばよい。


「ちょっと先に行くぞ。」と3人に言い、スロットルを

ワイドオープンにする。3速で60㎞/hまで引っ張り

4速へ入れる。急に加速は弱りジワジワと車速が伸びる。


(70㎞/hは出ないか・・・)

スロットルを緩め遅めのスピードで流し3人が追い付くのを待つ。

メーターは50km/hを指している。景色を楽しみながら走る。


(エイプ100も悪くは無いけどな・・・ゴリラもなかなか・・・。)


「どうだった~?」理恵が聞いてくるが


「速人ん()に着いたら言う!」としか言わない。


(何やろうな。この妙な安心感は)


湖岸道路を降りて速人の家に着いた。

「私のゴリラはどう?速い?」理恵が無邪気に聞いてくる。


「普通やな。これ以上ないくらいに普通。」


「亮二、普通に乗ってたもんね。」

夏休み中、一緒に走り回っていた綾が言うのだから間違いない。


「法定速度内で走るのが気持ち良いかな~て感じやね。

競走するとか争うように走るバイクじゃないよ、これ。」


「じゃあ、おっちゃんが言ってたのは正解?」


「うん。馬鹿は放っておけば良い。競走なんか無意味。」


交換していたバイクを乗り直し、解散となった。




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