心を鬼にする
フレームからバイクを組み立てるより
不動車でも部品が揃った物を買う方が安上がりです。
書無しバイクを買ってきて社外フレームを組むと言った
方法もありますが・・・。
理恵の同級生のモンキー(?)を預かって2日後の大島サイクル。
中は2人を呼んで相談することにした。
そう言えば名前を聞いていなかった。名前を尋ねると
「速人です。本田速人です。」と答えた。
「じゃあ速人。今から厳しい事を言うぞ。」
心を鬼にして自分の考えを言った。
「部品代・工賃込みで15万円。うちも商売や。損することは出来ん。
正直、中古のまともな奴を買った方が早くて安上がりやと思う。」
2人の表情が曇る。それでも言わなければならないことはある。
「まともな部品はフレームだけ。エンジンのガスケットは
ホンダ純正と穴位置が違うから流用不可能。
ノーマル部品があるなら元の戻すのは早いけど持ってるか?」
速人は首を横に振った。
恐らくノーマル部品は下取りして売りさばかれたのだろう。
「邪魔になるだろうから処分しておくって言われて・・・」
うつむいて泣き出してしまった。
「おっちゃん何とかして・・・。街の皆が大島なら何とかするって言ってるもん。
何とかしてぇな・・・」理恵まで泣き出してしまった。
続ける。
「おっさんも仕事やからな。金を稼がんと喰って行けん。」
そう言えば俺はもともと客だったなぁ。なんで店を継いだんだっけ?
先代の顔が脳裏に浮かぶ。
ああ、エンジンを壊してから入り浸る様になったんや。
「わからん所は教えたる。工具も貸す。自分でやるか?」
二人は何か言いたそうだがを無視して続ける。
「素人がバイクを分解して組み立てるなんて無理と思うかもしれん。
でもプロだって最初は素人なんや。そもそも人間が組み立てた物が
人間に直せん訳は無い。幸い自分のバイクやし失敗しても叱られる事はない。」
・・・と立派な風に聞こえるが先代の受け売りである。
「・・・やってみます。」速人はか細い声で答えた。
※この作品はフィクションであり、登場する人物・地名・施設・団体等は架空の存在です。
実在する人物・地名・施設・団体等とは一切関係ありません