大島サイクル名物
米の価格を維持するために生産量を抑える減反政策。
大島の両親が遺した田圃は転作で無花果畑になっています。
9月に入り、急に暑さが和らいだ。
この時期、大島サイクルにはバイク以外の名物が有る。
大島お手製の無花果ジャムである。
大島の家には先祖代々の田畑が有るのだが、国の減反政策の一端で
一部の田んぼを転作して無花果造りを行っている。
とは言っても大した面積でもない。トラクターやコンバインなんて
買って作業すれば確実に赤字なので、近所の農家に貸し出して
賃料を貰わない代わりに何かが出来た時のおすそ分けを貰っている。
それが無花果なのだ。
熟した無花果はお尻の部分が割れる。美味いのだが
割れ目から害虫のハチが卵を産みに入るので出荷が出来ない。
味が良いが出荷が出来ない物を大島は山の様に貰ってくる。
作り方は簡単だ。
皮を剥いて冷凍しておいた無花果を同量の砂糖と一緒に煮詰めるだけ。
ヘラで潰しながら焦げ付かない様、かき混ぜながらひたすら煮る。
無花果は酸味が無く味が締まらない。
仕上げにレモンの搾り汁を混ぜてやると味が引き締まる。
煮詰め続けると、とろみが出てきてジャムらしくなる。
更に煮詰めていくと苺ジャムとは違った淡いピンクのジャムが出来上がる。
冷凍しておけば半年は保存できるはずだが、実際はどうか知らない。
1か月くらいで無くなってしまうからだ。
煮沸消毒したビンに詰めると見た目も美しい。
大島サイクル周辺の奥様方には好評だが、大島は満足していない。
「やっぱり母ちゃんの味は出せないか・・・。」
亡くなった母を思い出して呟いてしまう。
「中ちゃ~ん。今年もジャム出来た~?」
「おう。下手の横好きやけどな。出来たわ。」
瓶に詰めたジャムを渡す。
「下手に家事が出来るからお嫁さんを貰わないのよね~。」
「バイク以外に妙な女子力が有るのよね~。」
もう何とでも言ってくださいな。40男のささやかな趣味でございます。
俺は安曇河の自転車屋。でも、今日はジャム作りのおじさん。
旬の無花果を使って作った大島お手製無花果ジャム。
葛城も虜になったらしい。
フィクションです。登場する人物・団体・地名・施設等は全て架空の存在です。
実在する人物・団体・地名・施設等とは一切無関係です




