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大島サイクル営業中 2017年度  作者: 京丁椎
8月
53/200

いざ高嶋へ

中村の住む街は高嶋市の対岸。琵琶湖の周りを南回りで走っても

北回りで走ってもどちらで行っても時間・距離とも

殆ど変わらない・・・


フィクションです。登場する人物・団体・地名・施設等は全て架空の存在です。

実在する人物・団体・地名・施設等とは一切無関係です。

本日は雨。晴れならバイクでツーリングするのも悪くないが

雨の日にわざわざバイクに乗る必要もないだろう。

「高嶋市なら高速を使わず2時間少々で行けそうだな。」


ナビでTataniと大島サイクルの場所を調べた中村は

愛車である軽バンのキーを捻った。


左手に琵琶湖を見ながら木之本方面へ向かう。

通称『北ルート』琵琶湖を反時計回りに周るルートだ。


途中の道の駅で昼食を取り、高嶋へとひた走る。


数個のトンネルを抜けて高嶋市蒔野町へ滑り込む。

田園地帯が広がる田舎町だ。のどかな風景が広がる。


(長閑な町やなぁ)


少し遠回りをして蒔野名物のメタセコイヤ並木を観に行く。

冬なら数年前に流行った韓国ドラマのような風景になるが

夏は夏で木陰の続く良い道だ。


(晴れなら良い写真が撮れそうだな)


蒔野から今都へ入るが風景は変わらない。

ただ、観光客が観るところが無くなったくらいか。

自衛隊からの補助金に頼った街造りをしていた今都には

観光名所や特産が全く無い。

減反政策で始めた蕎麦造りも特産となる事は無く、

毎年大赤字を産み出す高嶋市の悩みの種となっている。


(この街にTataniが在るのか・・・)


「もうすぐ目的地周辺です」


(お?あれがTataniか。派手な店やね。)

Tataniの駐車場へ愛車を停めようとした中村に

小柄なスーツ姿の男が近付いた。


男は無言で店の看板を指さす。

『セレブリティ―バイカーズTatani』


「こんにちは。私・」

挨拶をしようと車を降りかけた中村はいきなり

驚く事となった。


「部品屋は裏に周れっ!貧乏くさい車を表に停めるなっ!」

怒鳴り出すスーツ姿の男性・・・代表の他谷(たたに)だ。


「いや・・バイクを見に来たんですけど・・・。」

と言う中村に関係なく他谷(たたに)は怒鳴り続ける。


「とにかく裏へ回せ。店の品位が下がるっ!」


「・・・・・」

中村は店舗裏に在る草まみれの空地へ愛車を停める事にした。


◆     ◆     ◆


「で、何が見たいの?見ても良いけど、その汚い手で

触らないでよ。き・た・な・い・手ではな。」


駐車場に別の客が来た。少し古めの高級車だ。

「は~い。いらっしゃいませ~。」

中村は放りっ放しにされたので一人で店内を見て回る事にした。


「息子に大きなバイクを買いたいんだけど、学校には小さなバイクしか

乗って行けないのよ。何とかなんない?」


「それでしたら、登録を原付にすれば車検不要です。通学に使えますよ。」


「それじゃあよろしくお願いするザます。」


近頃すっかり馴染んだTataniでのやり取りだが

もちろん、やってはならない事である。


「あの・・・こんな大きなバイクを原付登録できるのですか?」


「ああ、サービスでしてやるよ。買えるならな。買・え・る・な・ら。

まぁウチみたいな高級店に軽で乗り付ける奴なんざお断りだがね。」

ゲラゲラと笑い出した他谷(たたに)に怒る気力も湧かず、

中村はTataniを後にした。


(予感が当たった。何と言う事だ。)

ガッカリしたのか疲れたのか気力が湧かない。

もう1軒の大島サイクルにも寄るか、このまま帰るか

道の駅あどがわに車を停めて中村は迷っていた。


(全部が全部、あんな店じゃないよな。行くか。)


整備士で独身と既婚の見分け方は仕事した後の手です。

奥さんを汚い手で触るわけに行かない時も有るんです。

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