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大島サイクル営業中 2017年度  作者: 京丁椎
8月
52/200

そうだ。高嶋へ行こう

フィクションです。登場する人物・団体・地名・施設等は全て架空の存在です。

実在する人物・団体・地名・施設等とは一切無関係です。

大島サイクルの対岸にある町のバイク店

整備主任の中村は新聞の見出しを見て嫌な予感がしていた。


(もしかするとウチで整備したバイクかもしれない)


「うわ~。派手に燃えてましたね~。」

後からのぞき見した若い整備士(メカ)が驚く。


「死んだ学生は高嶋高校の生徒らしいな。

Tataniさんが売ったバイクやったとか無いよな?」


「だったとしても、ウチは整備するだけやし

関係ないんと違います?」

あっけらかんと言うが、そんな物だろうか?


「社長と相談してみるか。」

中村は新聞を持ち、事務所へ向かった。


◆      ◆      ◆

急遽行われた車両点検のおかげかどうかはわからないが

大島サイクルにはそこそこの客が訪れた。


点検で指摘されたのだろう。タイヤ交換が多い。

スクーターのタイヤ交換はマフラーを外したりで

少し手間が掛かるので時間が無い客には代車を出すところだが、

幸い夏休みで時間が有るお客さんばかりなので

世間話をしながら作業をして

この前の事故で何が在ったのか軽く聞いてみたりする。


今日来てくれたのは、理恵の紹介で、

2万円のスクーターを買ってくれた綾ちゃんだ。

後輪が減っているのを注意されたらしい。


「このバイクってオイル交換は要らないんですか?」


最近のスクーターは排気ガス規制で4ストロークエンジンに移行したが

綾ちゃんのDioは2ストロークエンジンだ。オイル交換は

必要ないが、つぎ足す必要は有る。


ごく普通の女の子に説明するのは難しい。

「ガソリンに混ぜて一緒に燃やしながら潤滑するタイプやで。」

とは言ったものの解ってくれるだろうか。


「それでスタンドで『オイルは有りますか?』って聞かれるんですか?」


「そうやね。走れば走るほど減るし、小まめに見る方が良いで。」


タイヤ以外は悪い所も見当たらない。

しょっちゅう来るお客さんじゃないからしっかり見ておこう。


「この前の事故は酷かったみたいやね。何か知ってる?」

と綾ちゃんに聞くが


「言わないように言われているんです。」

どうやら箝口令を布かれている様だ。


タイヤを交換するついでにエアーバルブも交換する。

ここが切れてエアー漏れしたら新品タイヤが台無しになるからね。

エアーを入れるとポンッと音がしてビードが上がる。

昔と違いスクーターはチューブレスタイヤが多くなった。

パンクに強いのは良い事だ。


タイヤを取り付けた後に、ガスケットを新品にして

マフラーを取り付ける。

毎回新品に換える必要は無いかもしれないが

万全を期しておく。


「2万円でも全然壊れへんのですね。理恵のバイクより

カゴが付いてて便利やし、荷物も積めるし。」

と微笑む綾ちゃん。


どうやら気に入って乗っているらしい。ありがたい事だ。


「一週間くらいはタイヤが馴染んでないから滑り易いしな。

気ぃ付けて乗ってな。」


代金を受け取りながら注意しなければいけない事を伝える。


「は~い。また何か有ったらお願いしま~す。」と

綾ちゃんは帰っていった。


◆      ◆      ◆


「実は良く知らん。一回挨拶くらいは行った方が良いかもしれんな。」


Tataniの事を社長に聞いたが、はっきりしたことが解らない。

ナンバー無しなのは登録は自分達でするかららしいが

電話で修理の問い合わせが有ったから引き受けただけらしい。


「気になるならツーリングがてら行って来たら?

有給が貯まってるやろ?今は工場も空いてるし

中村君が休んでも仕事は回せるで。」


社長が勧めてくれる事だし有給を取って見に行ってみようか。

「じゃあ、2日間休ませて戴いても大丈夫ですか?」

その場で有給届を書いて提出した。


(よし。高嶋市を見に行こう。)







中村(なかむら) 正太(しょうた)

琵琶湖東側の某バイク店整備主任。30代後半

愛車はホンダの軽バン。他にアメリカンの大型バイクも持つ。

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