緊急生徒集会
先日の国道161号線の事故で無くなったのは高嶋高校の生徒だったそうです。
事態を重く見た学校は緊急の生徒集会を行う事にしました。
フィクションです。登場する人物・団体・地名・施設等は全て架空の存在です。
実在する人物・団体・地名・施設等とは一切無関係です。
国道161号線でバイク事故が起きた翌日、
新聞には『高校生がバイク事故』『無資格運転の疑い』
の見出しと共に事故の様子が載っていた。
高嶋高校では緊急集会が行われた。
『帰りに速人と一緒に店に寄ります。』と
理恵からメールが来ていた。
昼過ぎに2人が店に来た。
「ふぅ。暑かった。おっちゃん。何か冷たいもん無い?」
「倒れるかと思いました。」
2人は汗を拭きながら店に入ってきた。
この暑い時期にマスコミ関係をシャットアウトするために
体育館の窓を閉めた状態で集会が行われたそうだ。
「いったい何が在ったんや?燃えてしもてるし
乗ってた子は死んでしもたらしいがな。」
扇風機に当たりながら
「ちょっとアレな子だったんだよね。」
「お金持ちの家の子でしたけど。」
答える2人。何となく歯切れが悪い。
「大型のバイクに乗ってたらしいんです。でも
原付のナンバーが付いていたんですって。」
と説明しようとする速人を
「言うたらアカンって言われてるやん。止めとき。」
と理恵が止めにかかる。
おおよその予想は付いた。Tatani絡みだろう。
「おっさんの所にな、『宅の息子が免許を取ったざます』
『時速100㎞出て転ばないバイクをくれ』ってお金持ちが来てな。
そんな速いバイクは取り扱って無いって断った。」
氷を入れたグラスにサイダーを注ぎながら話す。
「で、どうなるんや?バイク通学禁止になるんか?」
何か隠しているのだろうが仕方ない。
口止めされている事が有るのだろう。
グラスの氷がカランと音を立てる。
「来週にバイクをチェックするって。」
「警察立会いの検査をするんですって。」
それなら安心だ。2人とも違反になる改造はしていない。
ウチに出入りしているバイクなら問題は無いはずだ。
◆ ◆ ◆
まさかバイクの検査に販売店が呼ばれるとは思っていなかった。
わが母校、高嶋高校だ。卒業以来初めて来る。
バイクを通学に使いたい生徒は申請書に販売店を記入するらしく
学校側からチェックに参加する様にと連絡が来た。
生徒のバイクは販売店ごとにまとめられて停まっている。
警察官とバイク店の立会いの下で違法な改造がされていないか
1台ずつチェックしていく。非常に面倒だ。
(速人のモンキーはどうなるのかな?買ったのはTataniだよな)
幸い速人のモンキーは大島サイクルの販売したバイクとして
登録されている様だ。以前作った両手ブレーキのゴリラや
理恵の友人に売った2万円のスクーターも有る。
「マフラーはJMCAですね。申請書によると排気量は75㏄ですが、
シリンダーの刻印は72㏄ですね。」
「はい。シリンダーボーリングで大きいサイズのピストンです。」
「一応、音量測定をしますね。」
JMCA認証の音量規制適合のマフラーだが、メーカーは50㏄で
認証を取っている。75㏄くらいなら大丈夫だと思うが
死亡事故が起こっているからだろう。今回のチェックは厳しい。
合格車両のナンバー裏に目印のシールを張る。
これはわざと目立たないようにしているそうだ。
そんな感じでチェックは進んで行く。
殆どの生徒のバイクは何も問題は無い。
もしも違反したりしたら普通自動車免許を
取るときに影響するからだ。
台数はそれなりに在ったがウチのお客さんのバイクは
妙な改造は無しで全車合格だった。
販売店不明のバイクもあるが、これはオークションで買った物だろう。
あまり程度は良くなさそう。プロが整備したバイクとは思えない。
他の店のバイクも問題無いものが多い。
暫くすると時間を持て余したバイク店で交流会のようになった。
高嶋・安曇河・朽樹・蒔野の各店も
今回の事故について思う事がある様だ。
事故を起こしたのはTataniの客なのは皆知っていた。
その他にもTataniの客は市内のあちこちでトラブルや
事故を起こしているようで、どのバイク店からも
評判は良くない。
どの街のバイク店もTatani絡みのバイクは
修理依頼を断っているそうだ。
誰かが
「今日はTataniは来てないの?」
と言うが、皆が横に首を振る。
「あんなバイクを売ってたら顔を出せんだろう。」
「そうやな。あれはアカンやろう。」
どんな生徒が乗っているのか知らないがコピーバイクが有る。
通販でも買えるが、受け取りは運送会社の営業所か
フォークリフトが無いと出来ない筈だから一般的ではない。
恐らくTataniが売ったバイクだろう。
教師数人と警官数人が何かを話し合っている。
生徒指導の教師だろうか。
「こちらにTataniの方はいらっしゃいませんか?」
と聞いてきた。
居ないと答えると戻っていった。
「この点検て、意味が有るんかな。」
誰かが呟く。その通りかもしれない。
(ここに来てないバイクの方がやばいんじゃないかな。)
訪れたバイク店はほぼ全員その様に思っていた。
高嶋高校はバイクの事をしっかり教えたうえで乗らせる方針です。
同じ市内に在る安曇河高校は厄介な事は全て禁止するスタイルです。
・・・・といった設定。




