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大島サイクル営業中 2017年度  作者: 京丁椎
8月
49/200

タダで直せ・・・だと?

フィクションです。登場する人物・団体・地名・施設等は全て架空の存在です。

実在する人物・団体・地名・施設等とは一切無関係です。

一般的にはバイクや自動車を修理したり改造したりするのは

整備工場で整備士資格を持つ者がすることが多い。


ところが、カブやモンキーなど小型レジャーバイクは

特殊工具が必要な部分は有るが、ある程度の整備は

ホームセンターで買える工具で出来てしまう。


理恵の様に『私は乗るだけ!」と言う者は多い。

下手に触って壊してしまうより、プロに任せた方が安心でもある。


速人は簡単な作業は自分でするが、エンジンの分解整備や

初めて作業する場所は大島に教えてもらいながらする。


今どきの若者は全てインターネットで調べると思っていたのだが

速人曰く、インターネットで調べてもよく解らない所が有るらしい。


「怪しい情報を100%信じるのは危ないですよ。」

今どきの若者にしては速人は慎重だ。Tataniでの苦い経験が有るからだろう。


最近はネットオークションでバイクを落札して

ネットショップで部品や工具を注文が出来て

下手すれば翌日に欲しい物が届く世になった。


修理や改造を趣味とし、自分で行うプライベーターには

便利な世の中になった。


(いじ)る環境が出来た故に弄り壊す事も多いが。


◆          ◆          ◆


「たまには店に出すのも悪く無いかな~って。」


この手の自称プライベーターは多い。

普段は自分でやっているけど気まぐれに店に出すと言いつつ

実際は自分で対処できずに泣く泣く店に来たといったところか。


素直に『弄っていて訳が解らなくなった。』と言えばよいのに。


客なので話くらいは聞く。


「ボアアップキットを組んだら変になったんです~。」


「具体的にどんな症状が出ます?」


「エンジンが点かないんです~。」


『エンジンを点ける』って言ってる時点で間違っている。

エンジンはかける物。点けるのとは少し違う。


(家電にスイッチを入れる感覚なのかな。)

「ちょっと見させてもらいますね。」


見るとは言ったけど困った。素性が知れない部品が使われている。

何処のメーカーのボアアップキットを使ったのだろう?


ジェネレーターカバーを外してフライホイールを回してみた。

途中で引っ掛かり動かない。何か部品同士が当たっている様だ。


「分解してみないと詳しい事は解りませんが、恐らくピストンとヘッドに

何らかの問題があります。少なくとも腰上は組み直しですね」


「タダで直してよ」


常連でも何でもなく初めて来た客だ。

いきなり何を言い出すのかと大島は我が耳を疑った。


「お客さん、冗談は止めてください。ウチも商売ですんで」


「だって。修理ぐらいで金を払うのもったいないし」

何も悪びれることなく言う青年。


(人を舐めるな。クソガキめ)


ジェネレーターカバーを元に戻す。

修理を仕事とする者に対して『修理ぐらい』とは何て事を言うのだ。。


「そうですか。うちも商売なんで無料では無理ですわ。」

カブを店の外へ出しながら答える。


「あのさ、オッサン。俺は教師、つまり先生。高学歴なんだよ?

高卒じゃ出来ない職業なんだよ?偉い人間なんだよ?わかる?」


どんな理屈だよ・・・。


「高卒でも出来る仕事じゃないんだよ。選ばれた人間だよ?」


『先生』と呼ばれ続けて何か勘違いしている人だな。


「そんな選ばれた方なら修理にお金が掛かることが解りませんか?」


「俺は今都中学教師だ。俺の言う事を聞かないなんて~~~!」


小屋か物置か知らんけど名前は覚えたぞ。市内のバイク店に情報を流す!


自分のむちゃな要求が通らず地団駄を踏む教師。

こんな奴が教師で良いのか?教師ってこんなものなの?


「じゃあ、無料で直してくれるところが有ったら教えてください。

ウチもそこに外注で修理に出しますわ」


こんな奴は相手したらダメだ。御引き取り願おう。


「他にもバイク屋はいくらでも在るわっ!二度と来るかっ!」

捨て台詞を吐いて『教師』は帰っていった。


◆           ◆          ◆

「・・・てな事は有ってな。疲れた。」


「タダで直せはないですよね。」

トップケースを取り付けながら速人が答える。

暑くなってバックパックでは背中が暑いらしい。


「何かな、『お前の仕事には金を払う価値が無い』って

言われたみたいでガッカリしたわ。」


今年の夏は嫌な事が続く。何かの前触れだろうか。


学校の先生って浮世離れした人が多い様に思えます。

自分が言っていることが正義・完璧みたいな人が多いです。

『先生』なんて呼ばれて何か勘違いしているのでしょうね。

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