不正登録②
正確な排気量で正しい登録をしましょう。
フィクションです。登場する人物・団体・地名・施設等は全て架空の存在です。
実在する人物・団体・地名・施設等とは一切無関係です。
「だ~か~ら~!原付じゃないって言ってんだろ!」
怒鳴る老人に呆れる白バイ隊員。
「では、大型バイクを原付登録しているのですね?」
大島サイクルの常連、葛城である。
「税金を払うのがもったいないから原付にしてるんだよ!
その位わからんのかボケ~!頭がおかしい奴めっ!」
「では、原付でしたら速度超過70㎞/h。免許取り消しになりますね。」
「だから、原付じゃないって言ってんだろ若造が!俺様はセレブ様だぞ!」
興奮した老人が暴れ出したので葛城は応援を呼んだ。
◆ ◆ ◆
「おじさ~ん。パンクしちゃった~。」
近所の奥さんが自転車を押してきた。
「暑いし影に入り~。すぐ直すわ~。」
タイヤに刺さった金属片を見つけ、チューブを引っ張り出す。
サンドペーパーでチューブを擦り、パッチを当てて穴を塞いだ。
水に浸けて空気漏れが無い事を確認して組み直す。
「おじさん。今日はイケメンさん来ないの?」
※イケメン=葛城さんの事である
「ボチボチ来るころやと思いますけどね。」
(本人が聞いたら泣くで。女の子やのにイケメンて。)
何処からかサイレンの音が聞こえる。
鐘の音は鳴っていないので消防車じゃない。
「イケメンは見るだけで心の潤いになるのよ♡」
(アンタが見てるのは女の子やで。)
心の中でつぶやきつつ
「ここにもイケメンは居るがな。」
と冗談を言って笑いながらパンク修理終了。
ついでにチェーンの張りも調整しておく。
チェーンルブを一吹き。これで当分安心だ。
世間話を少しして奥さんは帰っていった。
夏はパンク修理が多い様に思う。子供が休みだからだろう。
やたらとサイレンが聞こえる。大取り物でもあったのだろうか。
◆ ◆ ◆
「遅いけど良いですか?」
閉店間際に葛城さんが来た。
「はいどうぞ。オイル交換ですか?」
「ん~オイル交換も有るけど、少し話を聞きたいなと・・・。」
何かが有るらしい。
「店を閉めてゆっくり話しますか?」
「そうですね。」
ご近所の奥様方には申し訳ないが、今日のイケメンは非公開だ。
「まずオイル交換・・・と。何か悩みですか?」
「例えばですけどね。大型自動二輪を原付き登録とかできますか?」
いきなり難しい事を言い出す人だな。
「私と知り合いで250のバイクを原付2種で登録した事が有りますよ。」
「簡単に出来るものですか?」
「いや、エンジンを載せ換える時点で一苦労でした。
登録する時も陸運局に問い合わせたり役所で揉めたり
一苦労やったらしいです。」
「エンジン載せ替え?」
「そう。エンジンが無い車体やったからカブのエンジンを載せて。」
「書類は?」
「その辺りは高村ボデーさんがやったから解りませんけど
登録は出来たんでしょうね。」
「そのバイクって見る事出来ますか?」
「聞いてみよか。」
高村社長に電話すると「すぐ観に来い。」とのことでだった。
「どうや兄ちゃん。面白いやろう。」
胸を張る高村社長。
部品取りだったとは思えない美しい車体だ。
「エンジンはカブですね。」
「そうや。大島君に頼んで積んでもろた。元のマウントに
ボルトオンのアダプターを付けてな。配線もしっかりして
灯火類は全部点く。」
「これだったら原付2種登録でOKでしょうね。」
「そうよ。そこらじゅうに問い合わせて作った力作よ。」
こちらを見てニヤリとする高村社長。
何となく社長の掌の上で踊らされている気がする。
「登録の時ってどんな感じでした?車体確認は有りましたか?」
「いや。車体番号の石刷りやエンジン周りの画像も持って行ったけど
見せんでよかったな。せっかく用意したのに。」
(ここまで改造した車体でも確認しないのか。)
一通り車体を見た後、葛城さんは帰っていった。
仮に、普通・大型バイクを小型や原付で登録した場合。
道路交通法違反や車両運送法違反以外に脱税まで絡むそうです。
そこに事故まで起こせば任意保険も使えなくなるそうです。




