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大島サイクル営業中 2017年度  作者: 京丁椎
2017年7月
45/200

両手ブレーキ

フィクションです。登場する人物・団体・地名・施設等は全て架空の存在です。

実在する人物・団体・地名・施設等とは一切無関係です。

「右足を使わないバイクらしい形のバイクねぇ。」

バイク雑誌を見ながら大島はため息をついた。


インドから輸入されているNavi110なんてバイクは有るが

大島サイクルには仕入れルートが無い。


両手ブレーキのモンキーは古いしプレミアム価格で

学生が通学で使う代物ではない。


と、なれば造るしかない。

ヘッドライトが明るくタマ数の多い12Vのモンキーを

改造して両手ブレーキにするのが良いだろう。


◆          ◆         ◆


「はぁ?そんなにするの?」

驚く大島に車輪の会(ホイラーズクラブ)の仲間が答える。


「大島ちゃんよ。最近のモンキーは値上がりが酷いぜ?」

どうやら生産終了のアナウンスが流れて以降、中古相場が

値上がりしている様だ。


新車で半額以下のコピーバイクが売れるのも仕方ない。


「モンキーが12万か。ゴリラの方が安いんやな。」


「何かゴリラの方が安いな。似た程度で10万。」


「エンジンは要らん。エンジンだけ引き取らんか?」


「大島ちゃん、エンジンは要らんのか?エンジン+キャブで

¥45000でどうよ?」


「車体が¥55000か。エンジンは俺が降ろすからもう一声。」


「も~仕方ない。もう¥1000引く。これが限界っ!」


「ありがと。じゃあ即金で。今すぐ降ろすわ。工具借りるで。」


「また女の子にバイク造るんか?」


「そうよ。今度はノークラで両手ブレーキやで。」


「また奇妙(けったい)な注文を受けたな。」


「ホンマやで。」


◆          ◆         ◆

「社長~。こんにちは~。」

今度は高村ボデーを訪れた大島。


「なんや?また奇妙(けったい)な物を造るんか?」


「ケーブルを固定する金具を作ってほしいんですよ。

図面はこんな感じで・・・」


図面を見た社長は

「ちょっと待て。」と工作機械の方へ行った。

工場の奥で溶接の火花が光りグラインダーの音する。

暫くすると再びブラケットを持って社長が現れた。


「これでエエんか?」


「おおきに。代金は?」


「この前作ってもろた奴の代わりや。現物支給。」


「ありがとうございます。」


速人の時と違い、今回はノーマルの中古車をベースに作る。

部品を集める手間を省くのと、夏休みに乗れるようにするためだ。

ベース車の値上がりを見込んで予算は15万円と言ったが

今回はしっかり儲けさせてもらうつもりだ。


エンジンは余り物で組んだ72㏄。キャブレターは中古品。

サスペンションやブレーキに手は付けない。


クラッチは無いので、使わなくなったクラッチレバーは

ワイヤーを繋いでリヤブレーキにした。

こうして両手ブレーキのゴリラが完成した。


(多分、お得意さんになる事は無いだろう)

何となくそんな気がした。


完成したと留守番電話のメッセージを入れておいたら

藤谷(ふじたに)さん(母)が店に来た。登録は自分でするとの事で、

ついでに代金も払ってくれた。


「これが14万8千円なら悪くないわね~。」

軽トラックにゴリラを積みながら話す藤谷(母)


「ありがとうございます。100㎞走ったら点検とオイル交換を

サービスでしますんで来てくださいね。」

とは言ったものの、この人はもう来ないと思った。


その後、藤谷さんが大島サイクルを訪れる事は無かった。

自分で作業するプライベーターだから来ないのではない。


理恵は完全に利用されたのだ。


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