CBR250入庫
「原動機付き自転車2種以上の大きなバイクは修理出来ない。」
と言っている大島ですが、珍しく250㏄のバイクを触っているようです。
少し古めのホンダCBR250.如何にも速そうです。
フィクションです。登場する人物・団体・地名・施設等は全て架空の存在です。
実在する人物・団体・地名・施設等とは一切無関係です。
「売り上げ自体は変わってね~んだよな。」
Tatani代表の他谷は帳簿を見て呟いた。
Tataniの自称『選ばれたセレブ』はプライドの高い連中だ。
自分が店選びで失敗した事など決して他人に言わない。
もしも店の悪い評判を流せば名誉棄損と営業妨害で訴えてやれば
示談金や手打ち金で銭になる。
店を離れなかった連中は修理で入庫してきた。
これはこれで金になった
少し持ち上げて「高級車ですから・・・」と言えば
修理代に陸送代を足して更に上積みした代金を請求しても
文句も言わず金を払った。
「宅のバイクはクラシックバイクだから修理にお金がかかるざます。」
と自慢しているババァには感謝感激雨霰だ。
結果としてTataniの杜撰な整備や適当な改造の噂は広まらず、
店の評判は落ちることなく売り上げも落ちていない。
幸い、書類の無い大型・普通の自動二輪を原付登録する仕事も順調だ。
旧車会?そんな輩の400㏄のバイクを車検の無い原付2種として
代行登録する仕事もちょくちょく入っている。
(バイクは馬鹿しか乗らん。やはり馬鹿相手の商売はボロイ。)
※ ※ ※
一方、大島サイクルでは珍しく少し大きなバイクが入っていた。
(寸法は原付2種の規定で収まるな・・・。)
車輪の会の店が
古いCBRの修理を引き受けた事から話は始まる。
ある店の客がスペアエンジンを単体で買うより
車体ごと買った方が割安と部品取り車を仕入れた。
転倒歴ある程度の悪い車体で外装は傷だらけ。
処分を待つエンジンが無い車体。
それを見つけた高村ボデーの社長が、
「これに原付のエンジンを載せたら原付になるんか?」
と言い出したのだ。
「どうせなら車体と一番かけ離れたエンジンにしよう。」
と世界で最もありふれたバイクのエンジンを積むことにした。
カブのエンジンである。
「寸法取りに捨てるようなカブのエンジンを持って来てくれ。」
と高村ボデーからの電話を受け、使うあての無かったコピーエンジンを
高村社長に渡した。それから数日後。
CBRにカブのエンジンを取り付けるための
高村社長手作りのエンジンマウントが出来ていた。
「エンジンを積んでかけられる様にしたら戻してくれ。
エンジンはお前に任せる。」
・・・で、今の状況である。
(車体が大きいから90のエンジン。セル付きで行こうか。)
元々水冷250㏄エンジンが載っていた広いスペースだ。
エンジンは御手製マウントのおかげで難なく収まった。
カブの配線とCBRの配線を配線図と照らし合わせ結線する。
同じメーカーなので共通した色が多いので比較的楽だった。
大島サイクルの在庫部品で何とも出来なかったのが駆動系。
まったく違う前後のスプロケットはカブのエンジンに合せた。
リヤスプロケットに工業用の物を加工して取り付けた。
スプロケットの加工は鉄工所の旋盤でお願いした。
カブのウインカーやライト関係を仮付けして灯火類をチェック。
仮のマフラーを付けてエンジンを始動してみた。
キュルキュル・・・トトトトト・・・
レーサー然とした高剛性のフレームに不似合いな
長閑なカブのエンジン音が響く。
指示された作業が無事に片付いたので大島の仕事はここまで。
「あ、ボデーさん。作業終わりました。はい。はい。じゃあよろしく。」
高村ボデーに電話。夕方に高村ボデーの若い衆が取りに来てくれた。
カブやモンキーの車体に排気量アップしたエンジンを
積むことはいつもやっているが、逆に大きな車体に
小さなエンジンを積むのは初めてだ。
「これは仕事で引き受けたんかな?それとも社長の遊び?」
と引き取りに来た若い衆に聞いた。
「新人の練習台っす。外装は新人が仕上げます。」
「完成したら売るんかな?」
「社長は何か考えているみたいですよ。」
そのうち車輪の会で披露されるのだろう。
楽しみだ。
大昔のモトチャンプでスズキのGSX-R(だったかな?)に
ビジネスバイクの空冷単気筒90㏄のエンジンを載せていた
のを思い出して出来たお話です。
Tataniの原付ハーレーと違い、こちらはエンジンを90㏄に載せ替えたので
問題は無いはず。実際にやったらどうなんでしょう?登録できるのかな?




