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大島サイクル営業中 2017年度  作者: 京丁椎
2017年7月
37/200

Tataniの誤算

フィクションです。登場する人物・団体・地名・施設・その他等は架空の存在です。

実在する人物・団体・地名・施設その他とは一切無関係です。

予想外の酷い結果だったTataniのパワーチェック。


代表の他谷(たたに)は予想外の結果に怒り狂っていた。


4台のうち計測できたのは1台のみ。

残りの2台は破壊音と共に黒煙を吐いてエンジン停止。

最後の1台は壊れそうな音がして計測を止められた。


無事に計測が出来たバイクはカブよりパワーが無かった。

「お前は頭がおかしい。こんなバイク作りやがって!クビじゃボケ~!」

整備員を怒鳴りつけたが気分は晴れない。


客は怒り狂っていた。

直せと言っている。

「あなたたちの普段の手入れが悪いんです!」

と言っても全く退かない。終いには


「二度とお前みたいな頭がおかしい奴の店で買うかボケ~!」

とバイクを置いて電車で帰ってしまった。


「お前等みたいな頭が逝かれた客、要らんわボケ~!」

どうせ二度と来ない客だから言い返してやった。


引き上げる段取りを整備員に言ったが


「オレ、今クビになったんで。自分でやれや。」

なだめて引き上げだけでもさせてやろうとしたが、

「オレ、頭がおかしいからワカンネ~。」

と言って帰ってしまった。


仕方が無いので、残されたバイクは琵琶湖に捨てて帰ってきた。


客は怒る。宣伝にはならない。バイクは壊れる。

面白く無い。実に不愉快だ。


次の日、店に来ると途中で居なくなった連中が騒いでいた。

動かなくなった・部品が取れた・警察に停められた

反則金がどうのこうの・・・。


「解りました。修理は手配しますから!また連絡しますから!」

とは言ったものの、近所の修理屋は閉まっている。


「余所で修理するわボケ!このキ〇〇〇!」

数人が怒鳴りながら帰っていく。


数人は何とかなだめて返した。

(仕方が無い。他の店で修理させるか。)


電話帳を開き、バイク修理店を探す。

「一番近い店で安曇川か・・・取りに来させるか・・・。」

他谷(たたに)は電話を手に取った。


しかし、掛けても掛けても電話は繋がらない。

やっと繋がったと思えば

「ただ今電話に出る事が出来ません。ピーと言う発信音の後に・・・・」


(まったく・・・どうなっているんだ。)

次の店に電話をするが繋がらない。


Tataniが電話をしていたその頃。


車輪の会(ホイラーズクラブ)の各店では店主・従業員は

電話の傍に貼られた番号とナンバーディスプレイを

照らし合わせていた。張り紙には


「以下の番号よりの電話、要注意。□□□□-〇〇-▽△▽△」


と印刷してあった。Tataniの番号である。

張り紙の番号と同じであることを確認した後はひたすら放置する。

何回か呼び出し音が鳴っていたが、そのうちに止まった。


Tataniを通さず直接問い合わせてくる客は居たが

「ウチの様な田舎の工場ではちょっと・・・」

「ウチは安いバイクしか扱っていませんので・・・」

と言って断っていた。


「どこで直せばよいんだよ!」と怒る客は居た。

流石さすがに気の毒だと思い、各メーカーの

専門店の連絡先は教えていた。


琵琶湖の反対側に有る店だが・・・。


大島の店へも問い合わせは有った。問い合わせか疑問ではあるが。

受話器を耳に当てようとした途端に


「バイクを修理させてやるから取りに来い!」

と怒鳴り声が聞こえて驚いた。


一応、応対はした。

「どんなバイクですか?ウチはミニバイクくらいしか修理出来ませんが?」


「ああ?バイクやバイク!解らんのか?お前、頭おかしいやろ

さっさと取りに来いや。俺様はセレブやぞ!」


「セレブ様のバイクでしたら大きい立派なバイクでございましょうな。」


「外国製の高級車や!貧乏人のバイクと違うぞ!俺はセレブやからな!」


「ウチは小さな店やから大きいバイクは無理ですわ。」

受話器の向こうから喚き声が聞こえる気がしたが通話を切った。

(頭がおかしい奴に整備をさせるのもどうかと思うけどな。)


・・・と、まぁ多少の違いは有ったが車輪の会(ホイラーズクラブ)

のTataniの客に対する対応は似た様な感じだった。


他の町の業者へ修理の電話をした者が居たそうだが、

他店の売った素性のわからないバイクなので断られたらしい。


大島サイクルに電話をかけて来た客は正規ディーラーで

軽くあしらわれたと噂で聞いた。

所詮、中古の高級車に乗って田舎で威張っているだけの連中。

新車を現金一括で買う本物の金持ちを扱い慣れた店からすれば

丁寧に対応する程の客ではなかったのだろう。


結局、Tataniからかけた電話は市内のバイク店には繋がらなかった。

Tataniからの修理は業者に依頼したトラックで

湖の向こうの専門店へと運ぶ事になった。


「上手く儲からないな・・・。」

Tatani代表は帳簿を見てため息をついた。


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