イベントへ向けて
フィクションです。登場する人物・団体・地名・施設等は架空の存在です。
実在する人物・団体・地名・施設等とは一切無関係です。
今都にあるセレブリティ―バイカーズTatani
原形をとどめないほどカスタムされたモンキーバイク。
ホンダではない海外メーカーが作ったキットバイクだ。
セレブリティ―バイカーズTataniの不良在庫である。
(何とか捌く手段は無い物か・・・。)
代表の他谷は雑誌を見て閃いた。
(イベントでウチの宣伝をすれば在庫が捌けるじゃないか。)
幸い、トランスポーターを手配せず自走で行けそうなイベントが有る。
整備員に言ってイベント参加の申し込みをさせた。
イベントでパワ-チェックをやるそうだ。
「パワーが有るバイクは売れる!」
他谷はパワーこそ全てと思っている。
コーナリング?フィーリング?金に繋がらない物は要らない。
客は解りやすい所が立派なら金を落とす。
パワーこそ勝者の証し。パワーで全てが解決。
それに年寄り連中はカタログスペックに弱い。
最強・最新・自動・国内初・世界初・・・
これらのワードを並べてあると買ってしまうのだ。
幸い、うちの整備員は暴走族上がりだ。
馬力を出すぐらい簡単にできるだろう。
(パワーチェックで良い結果ならうちの名と在庫が売れる。)
「日曜のイベントで宣伝をするぞ!パワーチェックで勝て!」
「へぇ~い。」
整備員がやる気無く答えた。
一方、安曇河の大島サイクルでは
「パワーチェックが2人しか申し込めなかったんです・・・。」
申し訳なさそうに話す葛城の姿が在った。
「仕事中にわざわざおおきに。それにしても良く似合ってはりますね。」
制服姿の葛城をみた大島は感心して言った。
「男女同じデザインなんです。間違えられても仕方ないですね。
これは理恵ちゃんの分です。では、仕事に戻ります。」
「はい。確かに御預かりしました。御仕事、ご苦労さんです。」
敬礼して葛城さんは仕事へ戻っていった。
「白バイが停まってたけど何かあったんやろか?」
と覗きに来た奥様方の前で白バイが停まる。
挨拶でもしたのだろう。黄色い歓声が沸き、葛城さんと白バイは去っていった。
(またイケメンの無駄撃ちをしたな・・・)
「インカムを付けるから帰りに寄ってください。
メーターも入りました。1こ2500円。速人の分も有るよ。」
「メール送信っと。これで良し。」
若干老眼が入り始めたのか、細かな文字が見えにくい。
♪~♪
電話だ。番号から察するに今都町だろう。
「はい。大島サイクルです。」
「修理の事で伺いたいのですが・・・。」
またか・・・。
「ウチは引取りをやっていませんよ。」
「いや、〇〇農機なんですけど、原付の修理の事で聞きたいのですが・・・」
最近の今都は自転車店・バイク店が減ったのだろうか。
専門外の機械を扱う店で修理をしているらしい。
「ナンバーは原付なんですけど偉く大きなバイクで・・・」
相当困っている様だが大きな原付とは何だろう。
「申し訳ないのですが、ウチはミニバイクしか解りませんで・・・。」
丁重に断り、電話を切った。
大きな原付とは何だったのか。
「Jazzかマグナ50だったのかな?ジャイロも大きいと言えば大きいな。」
大島は首をかしげた。




