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大島サイクル営業中 2017年度  作者: 京丁椎
2017年7月
29/200

理恵の恋③

理恵は変なバイクに追いかけられた事が有ります。

今でも知らないバイクがミラーに映るとちょっと嫌です。


※この作品はフィクションであり、登場する人物・地名・施設・団体等は架空の存在です。

実在する人物・地名・施設・団体等とは一切関係ありません

「おっちゃん。変態や。変態が出た!」

血相を変えた理恵が店に飛び込んできた。


湖周道路で変態に追いかけられたらしい。


「警察に言って防災無線で流してもらうか?」


「どうしようかな?」


「まぁコーヒーでも飲んで落ち着きなさい。」


「ココアにして。」


「了解。」


コーヒーの香りは素晴らしいが、ココアの甘い香りも捨てがたい。

理恵にココアを出して話を聞くことにした。


「あのな、あのゴリラはそれなりに速く作ってある訳や。

普通のカブやったら追いつけんはずや。それにお前さんは

体重が軽い。加速勝負で負ける事は少ないはずやで。」


「でも、追いついて来たもん。」

理恵は口をとがらせながら答えた。


「湖周道路では化け物みたいなカブが出る。悪魔のカブと呼ばれててな。

そのカブはまるで狂おしく身を捩る様に走るという・・・」

もちろん冗談だ。


身を捩る様に走るカブがあるとすればフレームの溶接が剥がれているか

錆びて穴が空いているかのどちらかだろう。フレーム剛性の不足である。


「それは私の考えた小説や・・・。」

そんなやり取りをしていると別のお客さんが来た。

葛城さんだ。


「ほれ、見てみ。変態じゃなくてイケメンの乗ったカブが来たぞ。」


颯爽とカブから降りた葛城さんがいつもの様に店へと・・・?


あれ?入って来ない。


大島が不思議に思い外へ出ると、

葛城は理恵のゴリラを熱心に見ていた。

「可愛い~♡」と言いながら・・・・。


「葛城さん。あんた、何をしたはりますんや?」


「あ、すいません。可愛いバイクが在ったので、つい・・・。」

葛城さんが振り向くと、後ろにいた理恵が


「あ・・・白バイのお兄さん。」と言った。


大島は2人を店に入れ、ココアを入れ直した。


「可愛いバイクを見つけて、話が出来たらな~と思ったら

振り切られてしまいました。白バイ隊員なのに駄目ですね。」


「いや、何キロ出ているか解らんようなメーターを

何もせん方が悪いんですわ。スピード違反する前に

キチンとしたメーターに換えんとアカンな・・・ってオイ。」


下向いて椅子のクッションを穿(ほじく)り回す理恵を注意する。


「この前は間違えて停めてゴメンね。」

葛城さんが微笑む。うむ。イケメンの無駄撃ちだな。


椅子のクッションを穿り回しながら理恵は

「|△(三角)を付けなかった私も悪かったし・・・。」

と真っ赤になって答える。


だから、クッションを穿り回すのを止めなさい・・・

ああ~スポンジの下の木まで(むし)るのは止めて。


「葛城さんも趣味用にモンキーかゴリラでもどうですか?」


「私が乗ると可愛くないので・・・。この成りですから・・・。」


「大丈夫ですよ。試しに跨ってみたらどうですか?

おい、理恵。ちょっとバイク貸してあげてくれ。」


「うん。」


ゴリラに向かう2人を眺める。

お兄ちゃんと妹みたいで微笑ましい。


(ディズニーの『美女と野獣』ならぬ『美男子と小猿』か・・・)

理恵が聞いたら起こることが間違いない。


2人は仲良く話している。良い事だ。

ゴリラを見て満足したのか戻って来た。


「あ、あの葛城さんはお付き合いしている方って居るんですか?」

真っ赤になった理恵が聞く。


「居ないよ~。私、こんな見てくれだもの。」

笑いながら葛城さんが受け流す。


「じゃ・・じゃあ私とお付き合いして下さいっ!」


(そうか。理恵も恋をする年頃になったか・・・。)

年月の流れを感じた。


葛城さんは少し考えてからスマホを出した。




理恵の背後に立つと殴られます。

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