セレブリティバイカーズTatani
セレブリティ―バイカーズTataniではセレブなお客様のみをお待ちしております。
※この作品はフィクションであり、登場する人物・地名・施設・団体等は架空の存在です。
実在する人物・地名・施設・団体等とは一切関係ありません
滋賀県の田舎町高嶋市。最も栄える今都町に有るバイク店。
セレブリティ―バイカーズTatani代表の他谷は
売り上げを見て頭を抱えていた。予想外に儲からない。
最初は上手く儲かっていた。
安く買い叩いた事故車や水没車を磨き輝かせて売った。
ターゲットは大昔にバイク免許を取った連中だ。
田舎暮らしと一戸建てに憧れて越してきた自称セレブ。
口八丁で上手く売った。
バイクの好不調、程度の善し悪しなんか解る連中じゃない。
値段が高ければ高いほど面白いように売れた。
所詮買っても乗らない連中だ。飽きた頃に安く買い叩いて
再び中古として売れば何度も儲かる。
悪い評判が出たところで年寄りだからそのうち死ぬ。
新しい小金を持った年寄りなんぞいくらでも入れ替わる。
バイクは永遠に儲かる利益の永久機関
・・・そう思っていた。
ところが自然の厳しいクソ田舎。冬の路面には凍結防止剤の塩カル。
高級住宅地は元々沼地だった。埋め立て方法が不味かったのか
至る所で地下水が湧き、湿気が凄かった。
売ったバイクは湿度と凍結防止剤の相乗効果で錆の塊と化した。
それでも乗ろうとする馬鹿者は居た。だが、整備なんて出来ない。
仕方がないので町工場に整備を出したら年寄りの整備工が倒れた。
夜10時に出して朝8時引き取り。時間は充分くれてやったのに。
整備が出来ないグズどもだった。
今も工場を閉めてやがる。おかげで修理が滞っている。
近所にバイク通学可能な高校があったのでミニバイクも扱ってやった。
ところが所詮貧乏人。調子が悪くなっても買い替えやがらねぇ。
整備工場が閉まっていて外注できないので暴走族上がりの
暇だった奴を修理担当で雇ってやった。
調子が悪くなったらカスタム部品を売らせた。
修理で純正部品を使うと原価が高くて儲からない。
安いコピー部品で修理させたが直せない。
文句を言って来た馬鹿な客は出入り禁止にしてやった。
ホンダ製の本物は仕入れ値が高価だ。
仕方が無いので書類無しのモンキーに打刻をやり直して売った。
フレーム番号がおかしい・盗難品ではないかとクレームが来た。
「お前の頭がおかしい!」と追い返してやった。
コピーバイクだと高値を付けられない。
ホンダの形式がZ50なのでZ5Oと打刻して
何台か売った。これはまだバレていないようだ。
『モンキーのマニアは惜しげもなく金をつぎ込む。』
100万円使うマニアが居ると聞いて仕入れたのに期待外れだ。
今も在庫が残っている。目障りなので早く処分して金にしたい。
カモを引っ掻けようとバイクに乗った学生に声をかけた。
通学に使うバイクのカスタムが流行れば儲かるはずだ。
何人かに声をかけたが引っ掛からない。
終いには不審者と思われて変態メールで流されてしまった。
「間にあってま~す!」かっ飛んでいったミニバイク。
クソガキの癖に追いつけないほどスピードを出しやがる。
こっちはメーターを振り切っているのに・・・・。
「こんな店、処分してやる!」と不動産屋へ駆け込んだら
とっくの昔に夜逃げしていた。
今都は市役所庁舎が建てば市の中心地となるはずだったのに
結局、市役所は建っていない。土地の価値も上がらない。
「クソッ!面白く無えっ!」
イライラしながら他谷はタバコをふかした。
やはり儲かる大型車を売るのが手っ取り早い。
ふと、良いアイデアが思いついた。
(大型バイクに車検無しで乗れたら売れるんじゃないか?)
試しにハーレーを原付として申請してみた。
車体は確認しない。エンジンも確認しない。
あっさりナンバーが交付された。
(これは儲かるぞ・・・)
世にも珍しい原付ハーレー誕生の瞬間だった。
一方、今都から10キロほど離れた安曇河町
大島サイクルでは理恵が何やら言っている。
「おっちゃん。私のゴリラって何キロ出せるん?」
「原付2種の法定速度は60km/h。だから60km/h。」
「じゃあ質問変える。アクセル全開で何キロ出てしまう?」
「頑張って70km/h出たら御の字や。」
「メーター振り切って訳わからん所を指してたで。」
「元々30km/h辺りしか使わんメーターや
それ以上で使うと誤差が大きいはずや。ハッピーメーターって奴やな。」
「実際のスピードより速く走れた気分でハッピーってか。
正確な方が良いわ。この雑誌のメーターは付くん?」
「140km/h表示のメーター?半分しか使えへんぞ。
デジタルの方が良いんと違うか?」
「でも高価い~もっと安いのが良い~。」
「じゃあ、もう少し安い何かを探しとこか?」
「中古でお願い♡」
「速人とお揃いで揃えてあ・げ・る♡」
全身全霊で可愛く対応した大島であった。
嵐の前の静けさである事を誰も気付かなかった。
Tataniの広告を見ながら
理恵「私や速人はセレブじゃないからお待ちしていない・・・ってか?」
大島「商売のやり方は沢山あるからね。」
実際に大型自動2輪を原付登録出来る訳が在りません。
実際に出来たら大事件です。どんな名前の違反か、
どんな罰則があるのか想像がつきません。
あくまで空想のお話です。




