オイル交換(葛城・カブ70改)
安曇河⇔今都は国道161号線を使うと片道約10㎞
湖周道路で約13㎞くらいです。
※この作品はフィクションであり、登場する人物・地名・施設・団体等は架空の存在です。
実在する人物・地名・施設・団体等とは一切関係ありません
時速30㎞規制と二段階右折の呪縛から逃れた葛城のスーパーカブ。
通勤と甘味巡りの寄り道で走行距離が伸びるようになった。
あっという間に100㎞走ってしまったのでオイル交換に行く事にした。
大島サイクルに来ると話し声が聞こえる。大島が電話対応をしているようだ。
店に入ると大島が片手を拝むように動かす。
(すんません。ちょっと待ってください。)
葛城もジェスチャーで
(OK。大丈夫。)と返す。
「はい。はぁ。そうですね。頭のおかしい奴が診たバイクなんか乗れませんな。
はい。買った店へどうぞ。」大島は電話を切った。
「はぁ・・・すいません。お待たせしまして。」
グッタリとした大島が対応する。
「な・・・何だか大変そうですね。何かあったんですか?」
「まぁ・・・いろいろな人が居るみたいで。」
ドレンボルトを開けてエンジンオイルを抜く。
出てくるオイルは汚れが殆どない様に見える。
「キレイに見えますけど何故換えるんですか?」
「組んで直ぐはどうしても加工で出た金属粉が混じるんです。
今は部品が良くなったんで殆ど何も出ませんけど
社外ミッションを組んでる4段の90だけは
用心してしっかり見てるんです。」
何回かキックをするとオイルが出てくる。思ったより残っている物だ。
「さっきの電話は何かあったんですか?大島さん疲れたみたいですけど。」
「今都まで取りに来いって言われまして。ウチは引取りはやってないんで
断ったら『頭がおかしい』と言われましてな。恥ずかしい所をお見せしました。」
オイルを入れ、量をチェックしながら大島は答えた。
「ここって引取りはやってないですね。1人だからですか?」
「いや。前はやっていたんですけどね。いろいろ在りまして止めました。」
プルルルー♪電話が鳴った。番号を見て大島はため息をついた。
手を洗い、電話は無視して給湯場へ向かう。
「まぁココアでもどうぞ。」
「出ないんですか?」
「さっきの人ですわ。自称『今都の白金台』に住んでるセレブだそうで。
セレブがウチみたいな小さな店を使わんでも良さそうな物ですけどな。」
「私のカブに突っ込んできたのもあの団地の人ですよ。」
「引取りをしないなら今都の人を相手せずに済みますのでね。
特にあの団地の連中は相手すると疲れます。」
今都で昔から在るバイク店が休業してから変な客が多くなったとか、
売るだけの店が在るとか高嶋市のバイク事情は色々あるみたいだ。
とあるホームセンター
速人は老人を相手に困っていた。無線で担当者を呼ぶが
全く反応が無い。
「おい。チャリンコをよこせ。」
「はい。どちらにしましょう?」
「漕がずに走るチャリンコをよこせ。」
「担当者を呼びますので少々お待ちを・・・」
自転車売場担当者を呼ぼうとした速人に衝撃が走った
「頭がおかしいんかオドレは~!!」
怒鳴り声と共に鼻へ拳が入った。鼻血を出す速人へ蹴りが入る。
数分後、パトカーが現れ老人は連れて行かれた。
翌日、ホームセンターの本部へ苦情のFAXが入った。
「待たされて腹が立って殴ったら警察に連行された事への抗議だそうです。
本部も私も君が悪くないのは解っているので辞めないでほしい。」
(今都は怖い街だ。こんな町でバイトなんて無理だ)
店長は頭を下げたが速人は店を辞めることにした。
客に暴力を振るわれた事のある他の店員も数人辞めた。
暫くして今都唯一のホームセンターは閉店した。
経営が苦しいのではなく店員の確保が出来ないための閉店だった。
今都で自転車の取扱店が無くなった瞬間であった。
以前ホームセンターで見かけた爺さんをモデルにしたお話です。
漕がずに走る自転車って自転車に付ける補助エンジンの事でしょうか?
葛城のカブ70改のミッションは海外製のギヤを使っています。
大島のゴリラでも使っています。
ホンダ純正品とはギヤ比が少し違うらしい。




