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大島サイクル営業中 2017年度  作者: 京丁椎
2018年 3月
197/200

スクーターが売れました

フィクションです。登場する人物・団体・地名・施設等は全て架空の存在です。

実在する人物・団体・地名・施設等とは一切無関係です。

近所の若奥様から預かっていたスクーターを処分することになった。走らせるだけなら1万円、出来ればもう少し手を入れた方が良いと言っていたが、開けてみると、思っていたより整備が必要な個所が多かったのだ。


それなら整備できている格安スクーターを買えば安心と旦那さんに言われたそうで、

結局、修理はせずに買い替えとなった。5万円のしっかりと整備したスクーターだ。


「5万円でしっかりした物が買えるんですね」

「まぁ、人件費が安いんで」


人を雇わないから出来る値段設定だけど、今後は少し改める必要があるかもしれない。

今年の秋には結婚もする事だし、今までと同じでは生活できないかもしれない。


「それで、登録?ナンバーなんですけど…」

「税金でしょ?10日かそこいらで1年分納めるのは割に合わんよね」


今登録すると1年分の税金がかかるから月が変わってから登録することになった。


「じゃあ、このバイクは売約済みっと」


奥様が買ってくれたのはホンダのトゥディ。ちょっと古めのスクーターだ。

これはノーマルで傷んでいた部品だけを変えた車。登録は50㏄の原付一種。


4ストロークエンジンで静か。排気ガス規制の緩い時代の車体なので走りもまあまあ。

生産は中国だったかな?海外生産にシフトされかけていた時代のスクーターだ。


細かなリコールや改善命令が多く、正直なところ品質に対する疑念の声が多々あった。

今は改良された部品が在るから問題は無いけれど、一度ついたレッテルはなかなか剥がせない。


(それでも売れたんやから、ある意味名車…いや、迷車か?)


スーパーカブも日本での生産に戻った。やはり何か問題が有ったのかもしれない。


「さてと、今年もボチボチ売れて来たな…」


古いスクーターの方は一旦倉庫で保管しておく。

部品取りになるか、現状で売ることになるか、それは解らない。

ごく稀に自分で直して弟や妹、娘や息子にプレゼントする人も居る。

直して売るのは商売として成り立たなくてもそういう人に需要は有る。


高嶋市は娯楽が少ない。


数年前まで流行っていたRCカーも模型店が閉店、

それでも頑張っていたマニアも大津・長浜のサーキットが閉鎖して行き場が無くなった。


そんなRCマニア崩れが目を向けたのがミニバイク。モンキー・ゴリラの4miniと呼ばれるホンダのレジャーバイクだけでなく、少し古めのスクーターを修理したりして遊んでいる。


リツコさんの親父さんもマニアだったみたいだけど、RCカーは小さいのに値段が高い。

ウチで扱うスクーターより高価な物もある。カーボン・チタン・アルミ削り出し・ジュラルミン…何処のスーパースポーツだ?


あくまでも個人的な見解だけど、俺は同じ額の金を使うなら、RCカーよりバイクの方が良い。

風を感じ、季節を感じて琵琶湖を見ながらバイクで出かける方が楽しいと思う。


まぁ、今の時期に花粉症の人が季節を感じながら走ると大変な事になるらしいけど。


幸い俺とリツコさんは花粉症ではない。でも、ティッシュの消費量は花粉症並み。

花粉症の人向けのティッシュはリツコさんにも好評だ。とても肌に優しい。


春の息吹が聞こえ始めたとはいえ3月一杯は時折雪が降る。


(桜を見ながら花見酒…にはまだまだかな?)


「おっちゃ~ん!安いバイク無い~?」


お客さんだ。


「有るで。安いのはボロやけどな…予算は?何に使う?条件を聞こうか…」


     ◆     ◆     ◆     ◆


「桜を見ながら花見酒?ああ、あの時ね」


暫く前の『リツコを我が家から嫁に出す事件』をリツコは思い出した。


「あの時はリツコさんが怒って困ったな」

「そうよ。私の気持ちがわからないあなたが悪いのよ」


中を責めている様な口ぶりだが、あの時は大人気おとなげ無かったと反省している。


「で、これが答えな訳や」

「イワシの生姜醤油煮?何でこれが答えなの」


イワシを醤油で煮込んだこの料理、ポイントは生姜と酒でイワシの臭みを消す事だ。大胆に刻み生姜を使い、隠し味は刻んだ鷹の爪を少々。他の家はどうか知らないが大島家の家庭の味だ。


「リツコさんが酒を呑む限り、俺は酒の肴を作り続ける」

「うん…空きっ腹で呑む酒は体に悪いもんね」


お酒を止める気は無い。流石に赤ちゃんが出来たら呑まないけど…

一生私の為に酒の肴を作り続けるって事…つまり、ずっと一緒に居るって事だね。


「お互いに元気な体で飲み食いを楽しもう」

「うん、ずっと一緒に呑もうね」


リツコがイワシを肴に熱燗を煽る。空いたグラスに中が酒を注ぐ。

差しつ差されつ2人の夜は過ぎていくのだった。


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