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大島サイクル営業中 2017年度  作者: 京丁椎
2018年 3月
194/200

今津兄妹・高嶋へ引っ越してきました

フィクションです。登場する人物・団体・地名・施設等は全て架空の存在です。

実在する人物・団体・地名・施設等とは一切無関係です。

貸家となったリツコの実家へ新しい住民が越してきた。


「防犯上の事が在るし、(うらら)は2階の部屋が良いやろ?」

「うん」


就職の為に大津から引っ越してきた今津兄妹にとって高嶋市は良いイメージが無い。

克己にとって高嶋市のイメージと言えば何か勘違いして自分の事を『神』『セレブ』と

思っている連中だったのだが、どうやら違うらしい。


合格発表を見に行った妹が言うにはそんな連中が不合格になって大騒ぎしていたとか。

バイクに乗りたいと高嶋高校を受験した妹が心配だったが、どうやら要らぬ心配だった様だ。


「さてと、ご近所に挨拶はしたし…ちょっと買い物がてらブラブラしよっか?」

「うん。晩御飯のお買い物をしなきゃだね」


「じゃ、行くか」

「うん。でもさ、何でお兄ちゃんは毎回トラックを買うの?」


「バイクが積めるからや」

仲良し兄妹はハイラックスに乗って安曇河町へ向かった。


     ◆     ◆     ◆


「田舎だけど買い物するには困んないね」

「そうやな。野菜・米を買うには困らんし、本屋もスーパーも一通りあるな…」


大津と比べると田畑が多く、いかにも田舎といった感じではあるが、生活に必要な店は一通り揃っている事に2人は安堵した。と言うのも、克己は行きつけのバイク店で高嶋のバイク乗りは電球一個・オイルの交換でも呼んでくると店主に言われていたからだ。見た感じだとバイク取り扱い店は数軒あるし、電球やオイルを売っているホームセンターも何店かある。


「ここまで来たんやし、オーナーさんの店に行ってみようか」

「大島サイクルさんだっけ?小さいバイクのお店だったよね?」


「麗が免許を取ったらお世話になるかもな」

「その前に免許とバイク通学の申請が通るかが問題だけどね」


     ◆     ◆     ◆


「…で、羽織袴で自分の名前まで旗にしてきた連中が不合格やったんか」

「うん。理恵はアホかもしれんけど、こいつ等はその上を行くね」

「理恵ちゃんよりアホです~」

「理恵ちゃんはアホじゃないよ。成績はそこそこだもん」


「速人は私をよく見てるよね。うん、偉い偉い」

「理恵ちゃんは『間が抜けているだけ』です」


今日も大島サイクルは高校生たちが訪れて賑やかな話し声が聞こえていた。


「今都中から受けた子が落ちたみたいですよ」

「ほら、画像取っといた。凄いでしょ」

理恵がスマホで画像を見せてくれた。揃いの白い羽織袴に名前入りの旗そして…


「ご丁寧に『燃えろ!今都中魂!』か…」


こんな事になるとは思わなかっただろうな。今はどうか知らないけど、俺たちの時代は高嶋高校は大津方面からは滑り止め。倍率は丁度か微妙に上回る程度。実際は私立を合格した連中は受けに来ないから名前さえ書けたら合格したくらいだ。


「ところで、お前等は何で来たんや?オイルはまだまだ時期じゃない。茶をしに来たんか?今日は暇してるから構わんけれど、おっさんかて春になると忙しいんやぞ?」


理恵がニヤニヤしている。綾ちゃんは眼を輝かせている。2人とも何か有るに違いない。


「おじさん。ご婚約おめでとうございます」

「リツコ先生から聞いたよ。抱きしめて『一緒になろう』って言ったんでしょ?」


そんな事は言っていない。でも健全な少年少女には話せない。


「ちょっと待て、そんなドラマみたいな事はしてないぞ」


困っていたら店先にトラックが停まった。配達じゃない。


「こんにちは。バイクを見せてもらいたいんですけど…」

「お?今津さん…やったな?いらっしゃい」


「こ…こんにちは」

妹さんがお兄ちゃんにくっついて離れないのには訳がある。

ウチの常連たちが『いまづ』と言う名前に反応して睨んでいるのだ。

せっかく来てくれたのに怖がらせてはいけないので注意しておく。


「言っとくけど、名前は『いまづ』やけど大津から来た人やから。おっさんが普通に話してる時点で今都の人間と違うからな。お前等の後輩になる子やぞ、仲良くしてやってくれ」


誤解は解けたらしく、妹さんは理恵達に囲まれて話をし始めた。


「僕もバイクに乗ってるんですけど、ここは小さなバイクのお店みたいですね」

「ええ、小さい店なんで扱えるバイクも小さいバイクです」


その通り。うちは125㏄までのミニバイクのお店だ。


「三矢社長から聞いてますよ。バイクに乗りたくてお兄ちゃんに付いて来たんですって?」

「後ろに乗っけてたらバイクに乗りたくなったみたいで」


妹さんはアニメでは無くてお兄さんの影響でバイク好きになったらしい。


「仲が良いんやねぇ」

「年が離れているので可愛くって」


「通学に使うバイクを得意にしていますんで御贔屓に」

「その時はお願いします」


     ◆     ◆     ◆


今日も暖かい部屋とご飯が待っている。誰かと暮らすって良いな。


「へ~あの兄妹が来たんだ」

「うん。仲良し兄妹」


私は一人っ子…じゃなかった。妹が居るんだった。会ったことが無いけど。

父を早くに亡くしたからか、長女だからかは解らないけど年上の男の人に

甘えたりするのには憧れていた。これからは中さんに甘えるけどね。


「ところでな、結婚式の式場なんやけど」

「一度抱いたぐらいで彼氏面しないで」


フフン♪いい女の言いそうなこの台詞を一度言ってみたかったんだ♪


「分かった。そういう事なら婚約は無かった事に…」

「ごめんなさい…1回言ってみたかったの…ずっと…その…だったから…」


いきなりピンチ!冗談のつもりだったのに…

私の物になれとは言ったものの、主導権は完全に中さんだ。敵わない。


「お仕置きは後でするとして、寿光苑は9月まで予約が埋まってるって」

「大津ではどう?ホテルとか無かったっけ?」


「う~ん…友達とかを呼ぶとなるとなぁ…それに…」

「それに?」


「やっぱり余所で式を挙げると今後がなぁ…」


付き合いとか商店街の関係とかで余所で式をするのは今後に影響するみたい。

地元で商売を続けるうえでのしがらみがあるんだって。


「私も同僚とかを呼ぶのはこっちの方が都合は良いけど、9月か…」

「9月な…」


「「まだ暑いよね」」


意見が揃った。それに、9月はお店が忙しいシーズンだ。


「先になるけど10月でどうかな?」

「賛成」


結婚式を10月にするなら、出会った日の辺りが良いなぁ…


「ところで…さっきのお仕置きをせんとアカンなぁ…」


お風呂の後、パジャマに着替えた私はお姫様抱っこで布団に運ばれて…


「痛いっ!痛~い!乱暴にしないでぇ!許して~!」


足首を掴まれて…力強くグイグイと…涙が出るほどに…






足つぼマッサージをされた。痛かった。


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