葛城とスーパーカブ⑤納車
エンジンオーバーホール後100㎞走行したらオイル交換をお勧めします。
※この作品はフィクションであり、登場する人物・地名・施設・団体等は架空の存在です。
実在する人物・地名・施設・団体等とは一切関係ありません
試運転の翌日、葛城さんがやって来た。
連絡を入れようと思っていたのだが、待ちきれなかった様だ。
「外見はそれほど変わらないですね」その通り。
「前のカブと似た年式やからね。排気量とギヤが増えただけやから
買い替えたことも解らんかもしれませんね」
「やっぱりライトが丸い方が可愛い♡」
「だんだん数が減ってクラシックバイク的な人気が出てきましたね。」
(気に入ってくれてよかったけど、葛城さんってオネエっぽい時が在る…)
一通り説明をした後に、近所を一回りしてもらう事にした。
「では、行ってきます」
「回転は抑え気味でよろしく」
バルンッ!…トントントントン…ガチャコン…ポロロロロ…
姿勢が良い。葛城さんの運転する姿は何となく癖がある。
上手にバイクを操る人だ。それは間違いない。
暫くすると葛城さんは戻って来た。結果は表情を見れば解る。
立ち話も難なので店内で何か飲みながら感想を聞くことにする。
「変わりましたね。余裕で60km/h巡航できますね!」
「変わったでしょ?コーヒーとココアどっちが良いですか?」
排気量が49㏄から89㏄になったのだから当然だ。
「ココアで。これだけ走る様になるとブレーキも変えたくなりますね」
鋭い指摘だ。だが、カブのフロントブレーキは難しい。
「強化シューを入れておいたけどまだ当たりが付いてないからでしょう。
もう少し馴染むとええ感じに効く様になります。
容量を大きくするなら後期型に在った大きいサイズのブレーキを着ける
更にプレスカブのリヤブレーキを合わせるのも手段ですね」
「大きなブレーキで強化シューにすれば完璧ですか?」
カブマニアが誰しも考える事だろう。
「ところが大きいサイズ用の強化シューは見当たらんのです。
それにカブはフロント(ブレーキ)の効きを良くすると変な動き
が出るもんでね」
「前が持ち上がる動きですね」
「その動きを抑えるのがカスタム50のアンチリフト機構。
組めば前が持ち上がる動きは無くなるけれど標準サイズの
ブレーキしか使えなくなってしまうんです。」
「あちらを立てればこちらが立たずですね」
まぁ、そういう事だ。
「フロントブレーキが焼けるような走り方は辞めとけって
事でしょうな。パワーは荷物を運んで流れに乗って走る為でしょう」
「高嶋市で乗るなら十分以上ですね」
そう思ってもらえるなら幸いです。
代金を貰い領収書を書く。
「高くつきましたけどそれだけの価値は在りますよ」
収入印紙を貼った領収書を渡すのは久しぶりだ。
「思ってたより安いくらいです。エンジンってお給料1か月分くらいと
思ってましたもん。カスタム車って縁が無いと思ってました」
「うちで作るカブはカスタムよりも特装車って感じかな?
外見は普通やけど用途に応じて装備を変えたみたいな」
「事故の前に今都にあるバイクショップを覗いたんですけどね、
モンキーバイクが60万円って。ビックリしました」
「モンキーは何処までも改造できるしな~。何処の店?」
「団地の近くにある・・・セレブのTatani?」
(またあの店か・・・)
暫く話をして葛城さんは帰った。
大島サイクルを後にした葛城はご機嫌だった。
(大島サイクルさんで頼んで良かった)
新しい相棒のカブに乗って思うのであった。
葛城「ところで、このカブって時速何キロまで出せるんですか?」
大島「時速60キロ。」
葛城「もっと出るでしょ?」
大島「原付2種の法定最高速は時速60キロ。」
廃車した葛城のカブ50からはハーネス以外に使える部品は全部外しました。
その分値引きしてあります。
葛城のカブに追突したのがセレブリティ―バイカーズTataniの客
上手い事言われて大型バイクを買わされたリターンライダーです。
大型自動2輪免許を持っているが若い頃乗っていたのは250㏄。
大昔に二輪免許を取ったお金持ち・・・・と言う設定。