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大島サイクル営業中 2017年度  作者: 京丁椎
2018年 2月
187/200

大島・バイクシーズンに備える

フィクションです。登場する人物・団体・地名・施設等は全て架空の存在です。

実在する人物・団体・地名・施設等とは一切無関係です。

冬の間、リツコさんは基本的に電車通勤していた。

休日にエンジンをかけてオイルを内部に行き渡らせたりバッテリーのチェックはするけれど、乗らないと言うのはバイクにとって好ましい状況ではない。一番良いのは適度な距離を毎日走らせる事だと思う。冬の高嶋で毎日乗るのは融雪剤で車体が錆びるからお勧めできないが。


バッテリーが上がり気味で走ると電球が切れやすいから充電しておく。


道路脇の雪はほぼ無くなってバイクが走りやすくなった。

そろそろ高校生たちがバイクで通学する。春はもうすぐそこだ。


Tataniが店を閉めて以来、電話がよく鳴る。どうやらTataniで買ったモンキーが

故障している様だ。エンジンがかからない・取りに来いと留守電が入っている。


無論、無視する。


特に急ぎの仕事が無いのでホッパー125の修理を続ける。

外注していたフロントフォークを組みつけたり配線を繋いだりする。

配線はカブのセル付きの物を加工して付けた。ライトは汎用品。

メーターも含めて市販の汎用品を組んでいく。純正部品は有るのだろうか。

探すのも調べるのも面倒だから今回はこれで行く。


キャブを組み付けて整備用のガソリンタンクに繋ぐ。


「キーはOFF…燃料を流す前に空キック…」


プルン…プルン…プルン…プルン…何回かキックしてエンジンにオイルを廻す。


「燃料コックオープン…キーONでチョークを引いて…」


プルン…プルン…パスンッ…ブルルル~ン…タンタンタンタン・・・

何回かのキックの後、エンジンがかかった。アイドリングを調整して

オイル漏れが無いかチェック。エンジンはカブの物だから問題は無い。

吹き上がりも特に問題無し。あとは走らせて悪い所を出して行こう。


プス…プスン…

ガソリンタンクの燃料が無くなった。テストはここまで。

また暇を見つけてメンテナンスを続けることにする。


電話が鳴る。固定電話にかけて来るのは殆どが今都の奴だ。ナンバーディスプレイに写った数字を確認。やはり今都の番号だ。最初は出る事も在ったがここの所出ない様にしている。メッセージで捨て台詞が入る。今都の奴等は捨て台詞が多い。


40歳を超えてから、無理が効かなくなった気がする。時々疲れが取れない。

精が付くものを食べると腹を壊したり、胃もたれする。


リツコさんからバレンタインチョコを貰った。ホワイトデーにはお返しをしなければ…

あれから何度か欲しい物を聞いてみたが教えてくれない。

ヒントは『高価なものではない』『ホワイトデーにちなんだ物』らしい。

ホワイト繋がりでプラチナのアクセサリーかと思ったが違うらしい。


     ◆     ◆     ◆


「リツコさん。何か食べたい物って有る?」

「何でも良いよ…が一番困るんだっけ?いつもの煮込みうどんが良いかな?」


食べたい物を言ってくれると助かる。煮込みうどんならすぐ用意できる。


「中さん、もしかして疲れ気味?」

「うん。頑張り過ぎた」


煮込みうどんは材料を切って鍋に入れて煮込むだけ。楽な料理だ。


「リツコさん。何か欲しい物って有る?」

「今日は焼酎。ホワイトデーは内緒」


リツコさんは今日も何が欲しいのか教えてくれなかった。


     ◆     ◆     ◆


今日も中さんはホワイトデーに何が欲しいか聞いて来た。でも教えない。


一時期より寒さは和らいだけど、今日も私は彼の布団へ潜り込む。

ゴツゴツと節くれ立った手で頭を撫でられると懐かしい気持ちになる。

力強い腕に抱きしめられると幸せな気持ちになる。


「リツコさん…何が欲しいか教えて…」

「教えなぁい♪」


「そんな事…言わんと…」


寝ちゃった。疲れてたのかな?いつも家の事やってくれてるもんね。

私が欲しい物は高価なものじゃない。お金で買える物じゃない。


この世でたった一つの非売品…


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