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大島サイクル営業中 2017年度  作者: 京丁椎
2018年 2月
182/200

晶・恋をする?

フィクションです。登場する人物・団体・地名・施設等は全て架空の存在です。

実在する人物・団体・地名・施設等とは一切無関係です。

毎度毎度イケメンと間違えられる…というか女性と見られた事の無い晶。


(冗談で…と思ったんだけどなぁ…)


風呂場でリツコを弄っても性的興奮を感じるわけでは無かった。晶の恋愛対象は男性。

にも拘らず晶は目の前に居るパン屋の店員が気になって仕方なかった。


「いらっしゃいませぇ♡いつもありがとうございまぁす♡」


(か…可愛い…)

小柄で華奢。エプロンが良く似合う店員に思わず晶は話しかけてしまった。


「あ…あの…お付き合いをしている方とかっていらっしゃいますか?」

「え?…も~お客さんヤダ~。こんな私とお付き合いする人なんか居ないです~」


(こんな私…どこが?こんなに可愛いのに…可憐なのに…)


「そうかな?凄く魅力的に思えるけど…」

「ありがとうございます…えっと…お会計は580円です」


「はい、じゃ、1000円で」

「お釣りの420円です。お確かめください」


お釣りを受け取り、家に帰る途中でも彼女の声が頭から離れない。

(私…女の子が好きになったのかな…)


      ◆     ◆     ◆

「あのイケメンさんって大島さんの所の御客さんよ。良かったね」


安曇河のパン屋『パン・ゴール』

長年学校給食や様々なパンを作っていた老舗パン屋『マルエム』の娘さんが

独立して開店した主婦や若い女性をターゲットにした店だ。

今では『マルエム』は閉店してしまったが、懐かしいマルエムのパンは

手伝いに来たオヤジさんが焼いて店に出している。懐かしい味も楽しめる

美味しいパンのお店だ。


今月から店員として働き始めた浅井薫(あさいかおる)は戸惑っていた。

とにかく男性から声をかけられる。自分目当てで通ってくれる男性も多い。

ところがそれは嬉しい事ではない、(かおる)の恋愛対象は女性なのだ。


「良くないですっ!私は女の子とお付き合いしたいんですっ!」

膨れっ面で真っ赤になってプンスカ怒っているが迫力が無いのでまたからかわれる。


「いいじゃない。付き合ってみたら?考えが変わるかもよ?」


店主だけではない。店に居る他の店員や女性客にも囃し立てられる。


「そうよ!下手な女に取られる位ならいっその事、晶様は薫ちゃんに!」


好き勝手言っているが言われる本人としてはたまった物ではない。


「私は男ですっ!女の子と結婚して幸せになりたいんですっ!」

とは言うものの、葛城の笑顔が忘れられない薫であった。


「だから、そこがまた『萌え』なのよ~」

「無自覚天然男の()!萌える~!」


(女っぽいのは自覚してるけど、とうとう男の人が好きになったのかなぁ…)


      ◆     ◆     ◆


「ふ~ん。まぁ今の時代やったら気にせんで良いと思うけんど…」


ツキギホッパー125を分解する手を止めて大島は晶の相談を聞いた。

天気は悪いし来客も来ない。暇なのでこのところ手が空くとホッパー125を

整備している。今日は高圧洗浄機で砂や泥を落として乾燥させていた。

そこへやって来た葛城は時間つぶしに丁度良かった。


「リツコちゃんに(運営より警告の恐れあり)して(R18に該当)った時は

 何とも思わなかったのに、女の子にときめくなんて…おじさん、どうしよう?」


どうしよう以前に一緒にお風呂に入った時に(運営より警告の恐れあり)で(R18に該当)

ていた事に大島は驚いた。道理で風呂に入った時、何か変な気持ちになったはずだ。


(人の家の風呂で何やってるねん…)


「でも(運営より警告の恐れあり)とか(R18に該当)ぐらいで変わるんか?」

恋愛対象とか性認識は生まれついての物で直るとか変わるとかの物ではないのでは?


「おじさんどうしよう…中身まで男の人みたいになって来たのかな…」


(You、男の子として生きちゃないなよ☆…なんて言えんわな…)


   ◆    ◆    ◆    ◆


夕食を食べながらリツコさんに葛城さんの事を相談してみた。

お酒が入っているとはいえ普段は生徒の悩みを聞いたりするプロだ。

人付き合いが苦手な俺よりよほど良い解決法を教えてくれるはず。


「…ということで、葛城さんが相談して来たんやけど、何か聞いてる?」

「何も聞いてないわよ。晶ちゃんが恋か…良いんじゃない?」


「相手さえ嫌がらんかったら良いかもしれんね」

「そうよ。もう時代は変わりつつあるんだから」


なるほどな。時代は変わりつつある訳だ。カブも燃料噴射でLEDライトになるくらいだ。

古い考えだけでは駄目なのだろう。若い娘さんの考えは違うな。


「だから、私が(あたる)さんにアタックするのは普通なのよ」

「カレーライスを作れるようになったら考える」


カレーライスは料理の全てが詰まっていると思う。野菜の皮を剥く・具を炒める

ご飯を炊く…作れるようになれば料理の基本は出来ているはずだ。しかも美味い。


「どうしてそんな意地悪言うの?酷い…」

「酷いのはリツコさんの料理の腕と酒癖。酒癖は仕方ないけど料理は

 しっかりできる様にならんと、俺が死んだらリツコさん餓死するで?」


仮にリツコさんみたいな年下の女性と結婚したとしよう。絶対俺の方が

先にあの世へ行く。女性の方が長生きする上に…何考えてるんだ俺は。


「そこは『僕は死にません!あなたの事が好きだから!』じゃ無いの?」

「そんなバブリーなドラマを何で知ってるの?」


再放送で見ていたらしい。学校から帰ると放送してたとか。


茶碗を洗いながら会話が続く。


「晶ちゃんが気になる子ってパン屋さんに居るんだったよね?」

リツコさんが悪戯っ子みたいな顔をしている時は何か考えている時だ。


「中さん…明日の晩御飯はシチューが良いな~」

「パン買って来いって事やろ?」


「バレた」

ニシシと子供みたいな顔で笑うリツコさんは可愛らしいと思う。

この悪戯娘め。


「食パンの在庫が無くなりそうやし買いに行くわ」


明日は食パンとシチューの材料を買いに行かんと…なんて言い訳をしつつ

葛城さんの気になる娘を見に行く事にしよう♪





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