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大島サイクル営業中 2017年度  作者: 京丁椎
2018年 2月
181/200

かなり暇な大島の一日

フィクションです。登場する人物・団体・地名・施設等は全て架空の存在です。

実在する人物・団体・地名・施設等とは一切無関係です。

雪が降ったり寒かったりでバイクや自転車が動かない今の時期は

時間にゆとりがあるので在庫の整理や足りない部品の注文をしたりする。

ボーリングするシリンダーを業者へ送ったり、社外製部品を調べたりする。


「時間が有るし、何か手の込んだ夕食でも作ろうかな…」


そんなゆとりのある時間を潰しに来るのが目の前に居るババァ…勧誘だ。


「御店主様は信仰についてご興味はありますか?」

「まずお前らが乗ってきた車のアイドリングを止めて来い。話はそれからや」


福祉だ愛護だ宗教だと言う奴に限ってアイドリングストップせずエンジンは動かしっ放し。

この手に奴らを俺は信用しない。


ところで、何でこの手の連中はババァのコンビが多いのかな?

ババァが車に戻ってる間に私用のメールをする。まぁちょっとした事だ。

ぶつくさ文句を言いながらババァが戻って来た。世の中を良くしたいなら

まずは自分の住む地球を労る所からスタートしやがれってんだ。


ぶつくさ文句を言いながらババァコンビが戻って来た。


「…用件を聞こうか」

「御主人様は信仰について興味はありますか?」


ふ…無駄な事を。神や仏が存在するなら何故俺から家族を奪った?

でも、全く神様を信じないって事は無い。少なくとも師匠の大石のオヤジは

整備の神だ。商売の神は居る。大酒を飲む女神(?)も1人ウチに居る。


だが、それより偉大な教祖様はいらっしゃる。


「信仰か…ウチでも信じてる神さんは居るし、他を信じる気は無いな」

「どちらの宗派でございますか?」


来たな?喰い付いてくると思った。


「私どもの教祖様です」

俺は東海方面で長年活躍しているシンガーソングライターにして

ラジオパーソナリティーのCDジャケットを見せた。

伝説のあの歌のCD…金太という青年が街に着く歌は数週間で発売禁止に

お万と言う女性が旅に出る歌は更に短期間で放送禁止とされた

全国にコアなファンの居るあのお方のCDだ。ちなみに記念日は6月9日だ。


お上品ぶっているババァによく知ってもらうために大音量で教祖様の歌を流す。

心に染みる名曲の数々だ。


とくに心に響くのは金太と言う青年がマスカットをナイフで切る辺りだ。

ババァは不機嫌になっているが気にしない。嫌なら帰ればよいのだ。


「じゃあ、つぎはお万…」

「もう結構です。ありがとうございました」


「じゃあ、おばさま方。次はこちらへお願いします」

帰ろうとしたババァに声をかけるイケメン白バイ隊員…葛城さんだ。


ババァが車を停めていたのは駐停車禁止の標識の真下だ。

善良な市民からの知らせで来てくれたのだ。お仕事ご苦労さんです。


ババァ共は『知らなかった』『見えなかった』と言っているが無駄だ。

見えなかったと言ったのを確認されて前方不注意のオマケまでついて大騒ぎしている。


「諸行無常…よく意味は知らんけど」


     ◆     ◆     ◆


「おじさん、あんまり宗教関係者を弄らない方が良いと思うよ?」


今日はやり過ぎたのかもしれない。飯を食べに来た葛城さんに注意されてしまった。


「呪ってやるって言われちゃった」


今日も寒いので暖まる料理だ。白菜・葱・モヤシ・鶏・豚・ホルモンを入れたうどん。

ホルモンを出すとリツコさんがツマミに欲しがるから少し多めに解凍して

塩コショウ・焼き肉のタレ・カレー粉の3種類の味をつけて焼いておく。


今回うどんはキムチ味のスープで辛い味付けにしてみた。


「暇やったから…つい」

「こんなに寒いとバイクどころじゃないよね~」

リツコさんは今日もご機嫌。ホルモン焼きでビールを呑んでいる。


「晶ちゃんはホルモンは駄目な人?」

「味は大丈夫だけど、いつ飲み込むか解らなくって」


ホルモンが苦手な人って8割方の理由がそれだと思う。


「ホルモンはある程度噛んで飲んでしまうんやで」

「そうよ。晶ちゃんは若いから飲んじゃえば胃が消化してくれるって」


「ホルモンはね、コラーゲンたっぷりだからお肌プルプルよ♪」

「私は鳥皮の方が良いかな~」


     ◆     ◆     ◆


今夜も私は中さんの布団に潜り込んだ。


「中さん…抱っこ」

「ん?今夜は甘えん坊さんやな」


私は中さんにギュッとされるのが大好きだ。理由は解らない。


「何かお話して…」

「何の事が良いんかな?バイク?ご飯?」


「もっと別の事が良いな…結婚観とか。どうして結婚しないの?」


中さんは自分の事はあまり話をしてくれない。聞くといつもはぐらかされる。


「甲斐性が無いからやで。男としての甲斐性が無いからや」

「晶ちゃんから聞いた。そんなの気にしない女の子…紹介しよっか?」


『うん』って言って。飛びっきりの美人を紹介するから…料理は下手だけど。


「男の旅はひとり旅…俺の人生は一人乗り」

「そんなの哀しすぎる。人生のナビゲーターは要るでしょ?」


我ながら上手に例える事が出来た。どうだ参ったか。


「残念。ピリオンシートもタンデムステップも付いて無いんや」


結局今夜もはぐらかされた。


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