葛城とスーパーカブ④
分解整備時には御時間をいただく場合があります。
ご了承ください。
フィクションです。登場する人物・団体・地名・施設等は架空の存在です。
実在する人物・団体・地名・施設等とは一切無関係です。
定休日の木曜日。大島は高嶋市役所で手続をしていた。
事故車のカブ50は廃車。
カブ70を登録してすぐに一時抹消手続きをする。
取付けどころかビニール袋から出してもいないナンバーを返す。
排気量を89㏄に、原動機型式をHA02に変更して再登録。
再びナンバーを貰う。
(登録と排気量・原動機形式変更が同時に出来たらな・・・」
無駄が多い様に思うが改善はされない。
ナンバーが1枚無駄になろうが自分の懐は痛まないから気にしない。
無駄になった所で税金だ。これぞお役所体質である。
エンジンを本当に積み替えたかの確認も無い。
(不正しても解らんだろうな。車体の確認くらいした方が良いと思うけどな)
市役所支所を後にした。
シャッターを閉めた店で作業をする。
エンジン載せ替えはすぐに終わった。エンジン自体はボルト2本で付く。
エンジンはストックしておいたカブ90改4速。シリンダー修正済みの89㏄。
吸排気系は全てカブ90の中古品を使用。点火系もカブ90を使う。
ネズミに齧られていたワイヤハーネスは中古に交換。
葛城さんのバイクから外したハーネスだ。部品代が節約できた。
チェーンとスプロケットは新品に交換しておいた。
チェーンカバーに隠れて見えないのが残念だ。
チェーンカバーの掃除が大変だった。藁屑と泥がオイルに混じった汚泥。
レンジの油落としできれいにした。台所洗剤は侮れない。
タンクにガソリンを入れ燃料コックをONにする。
(これで漏れが無ければ走行テストだな)
燃料漏れが無いのを確認して試運転をする。
湖周道路を北上して国道161号線経由で帰るコース。
安曇河の市街地でウォーミングアップと細かなチェックをして
湖周道路を流す。浜風が心地よい。
真旭から国道161号線へ移り安曇河へ向かう。
緩やかに続く登り坂で負荷を掛けて走りをチェック。
1・2・・3・・・とギヤチェンジをして60km/hで4速巡航。
ここから70km/hまで加速・・・・OK
(これなら葛城さんの要望通りだ。問題ない。)
その時サイレンが鳴った。
「そこのスーパーカブ。次の出口で降りなさい。」
(これ位で捕まえるか?仕方ない。降りるか・・・)
「今、何キロ出してた?」白バイが尋ねてきた。
「さぁ。だいたい70km/hくらいかな?」
「まぁ、そんなもんや。ちょっと速いな。どこに行くんや?」
「中古車の試験走行。あとは店に帰るだけ」
「どこの店?」
「安曇河の大島サイクルです」
「良い加速してる。気を付けて帰りや。」
「はい。おおきに」
無罪放免だ。初めから捕まえてどうとかではなかったのだろう。
白バイ隊員にはバイク好きが多い。
興味があったから停めて確認したかったのだろう。
(一晩冷まして油が漏れなければ引き渡しだな)
大島は再びカブを走らせた。
カブ90をシリンダーボーリングして純正オーバーサイズピストンを使うと
排気量は最大で89㏄になります。黄色ナンバー(90㏄未満)に収まる様になっています。
大島の造るカブの最高速は平地で85㎞/h前後です。
「それ以上スピードが出ると危ないから押さえてある。」らしい。