葛城とスーパーカブ③
大島サイクルでは中古のミニバイクも扱っております。
可能な限り、用途と御予算に応じたミニバイクを提供します。
※この作品はフィクションであり、登場する人物・地名・施設・団体等は架空の存在です。
実在する人物・地名・施設・団体等とは一切関係ありません
葛城さんが事故に会ってから数日が経った。
「こんにちは…」
保険屋との手続が終わり葛城さんが店に顔を出した。
ヘルメットのおかげか怪我はしていない。やはりヘルメットは大事だ。
保険屋にお任せしているので細かな事は解らない。
俺に解るのはカブの状態だ。伝えるのが辛い。
「追突されてフレーム全体が歪んでます。全損です」
いろいろあって相手の過失100%でも古いバイクを直せるほどは
保健が下りないらしい。
「私のカブ・・・」葛城さんの目から涙がこぼれる。
「まぁ座り」と言ってココアを出す。
「うちのお客さんから、突っ込んだのは大きいバイクに乗った
年寄りやったと聞きました。」
「ドコドコと聞こえたなと思ったらドカーンと来ました。」
「葛城さんがバックしてきたみたいな事を言うてたらしいですけどね。
今都の人らしく自分の非を認めませんね。叱られて逆切れ。
典型的な今都気質ですわ。」
「フレーム交換は出来ませんか?」
「出来ない事は無いけど新品のフレームが約4万円位。そこに部品を組んでいくと
中古車以上の金額になります。うちでも1回だけ作業しましたけど
フレームナンバーの再打刻手続きやその辺りを考えると別のカブを買う方が現実的です」
「中古フレームはどうですか?書類付きのやつ」
「オークションで出ていますけどね・・・現物を見ずに買うと、
届いてみたら驚くような物だったり、画像で見えない所が錆びていたりします。
お勧めは出来ませんね。送料もかかるし」
「もうこのカブは廃車ですね」重い空気が流れる。
葛城さんはバイク通勤をしているそうだ。
自動車は持っていない。若者の車離れって進んでいるんだな。
「何か足が無いと不便ですね。1台作りましょうか?」
「え?作るって?」
「こちらへどうぞ」葛城さんを倉庫へ案内する。
遺品整理で引き取ったスーパーカブ70を見せた。
「エンジンは他のバイクに使うので降ろしました。
配線をネズミに齧られていますけど、何とかなるでしょう」
「エンジンはどうするんですか?」
「エンジンは組み直しした物を載せようと思っています。
どのエンジンを載せようか迷うてたんです」
「高嶋市で乗りやすいカブって出来ますか?」
「それは予算次第…条件を聞こうか…」
葛城さんの提示した予算は充分な額だった。
「市内どころか琵琶湖1周出来るカブが出来るで」
葛城カブの製作スタートである。
オークションでフレームと部品取り車を買って修理すると
送料が予想外にかかってしまう事が有ります。
やはり買うならボロでも実動車が良いみたいです。